レコード レコードの概要

レコード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 08:48 UTC 版)

シングルレコード盤(ドーナツ盤ともいわれる)。

記録された音を音として聴ける状態にすることを「再生」という。まず、1.記録された「音の振動の振幅」を取り出すことで「音」が復元できる。しかし、狭い場所にコンパクトに記録された振動の変化量はわずかの変化量なので、2.人間にあった音量まで振幅量を大きくする「増幅」をおこなうことが初期の段階から必要であった。

後者の方法の歴史的発展段階で区分し、「針で読み取った振幅の情報」を、機械的に増幅する蓄音機の時代、と、電気信号に変えて増幅するレコードプレーヤーの時代に大まかに分類することができる。

呼称

語源は「記録」という意味の英語"record"である。「記録」の意味と混同されないためや、コンパクトディスクなどデジタルメディアと区別するため「アナログレコード[2]」「アナログディスク(AD)」とも呼ばれる。

このほかにも後述する規格(SPLPEP)、回転数(78回転45回転33回転16回転)、盤のサイズ(7インチ、10インチ、12インチ)などで呼ばれることもある。1950年代以降は塩化ビニールが主な材料となったため、シェラックバイナルヴァイナルビニールの英語的発音)と材料で呼ぶこともあるが[3][4]ボイジャーに搭載されたレコード製)のように、ビニール製以外のレコードも存在する。

音を記録した円盤であるため日本では「音盤」と呼ばれることもある[5]

一般的にレコードは音楽用記録メディア全体を示す言葉としても使われる。俗称ではそれを示す代名詞として、アナログレコードを取り扱っていない販売店でも「レコード店」と呼ぶことがある[6]。また日本の著作権法上は、第2条第5号で「蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音をもっぱら映像とともに再生することを目的とするものを除く。)」としている。

歴史

世界初のレコード(音声記録)システムは、1857年フランスのレオン・スコットが発明した「フォノトグラフ」である。スコットは、振動板にの毛をつけ煤を塗り、音声を紙の上に記録させた。再生装置がなかったため、フォノトグラフは実用にはつながらなかったが、1876年グレアム・ベル電話機を発明したことにより再生の目処がつき、複数の研究者が再生可能なレコードの発明に取り掛かった。

初期のレコード

世界で初めて実際に稼動した、再生可能なレコードは、エジソン1877年12月6日(のちの「音の日」)に発明した「フォノグラフ」である。直径8cmの、箔を貼った真鍮円筒に針で音溝を記録するという、基本原理は後のレコードと同じものである。フォノグラフは、日本では蘇言機、蓄音機と訳された。ただしこの当時はまだ、音楽用途はほとんど想定されておらず、エジソンも盲人を補助するための機器として考案している。

これに対し 1887年には、エミール・ベルリナーが「グラモフォン」を発明した。最大の特徴は水平なターンテーブルに載せて再生する円盤式であることで、発端はエジソンの円筒式レコード特許の回避のためだったが、結果として、円筒式より収納しやすく、原盤を用いた複製も容易になった。中央の部分にレーベルを貼付できることも、円筒式にない特長だった。CDやDVDやBDにつながる円盤型メディアの歴史は、このとき始まったと言える。さらにベルリナーは、記録面に対し針が振動する向きを、従来の垂直から水平に変更した。これにより音溝の深さが一定になり、音質が向上した。

エジソンもこれに対抗し、円筒の素材を蝋でコーティングした蝋管に変更し音質を向上させた。蝋が固まるときに収縮することを利用した、鋳造による複製方法も発明したが、量産性は円盤式には及ばなかった。

当初、アメリカではエジソンが、ヨーロッパではベルリナーが市場を支配した。円盤式は円周から中心に向かって半径が小さくなっていくので、音の情報は円周近くでは長い弧にわたってゆったりと記録されるが、中心近くでは短い弧の中にぎっしりと記録されることになり、音の質が円周近くと中心近くで変化する欠点を持ったものの、円盤式は同一音源の大量複製生産に適していたうえ、両面レコードの発明などもあり、最終的にベルリナーの円盤式レコードが市場を制した。なお、円筒式の記録媒体は音楽レコードとしては姿を消したがテープレコーダーの実用化まで簡易録音機、再生機としては使われ続け、後に、初期のコンピュータの補助記憶装置磁気ドラム。ハードディスクドライブの先祖に当たる)に使われたことがある。

円盤式レコードの発達

初期の円盤式レコードは回転数が製品により多少異なったが(更に再生する側の蓄音機も初期はぜんまい駆動が大勢を占めていたため、ターンテーブル回転速度の均質化が容易でなかった)、定速回転できる電気式蓄音機の発明により、後にSPレコード(SPは、Standard PlayingまたはStandard Playの略)と呼ばれる78回転盤(毎分78回転)がデファクトスタンダードとなった。

また、初期の円盤式レコードは、ゴムエボナイトなどが原料といわれているが、やがてカーボン酸化アルミニウム硫酸バリウムなどの粉末をシェラックカイガラムシの分泌する天然樹脂)で固めた混合物[7]がレコードの主原料となり、シェラック盤と呼ばれた。しかしこの混合物はもろい材質で、そのためSPレコードは摩耗しやすく割れやすかった。落とすとのように割れやすいことから、俗に「瓦盤」と呼ばれたほどである[8]

併用する再生装置のサウンドボックスの重量も相当あり、レコードを摩滅より守るため針の交換に重点が置かれ、レコード一面再生のたびに鋼鉄針を交換する必要があった。音量はサウンドボックスのサイズ、および針のサイズで調節され、大音量確保には盤の摩耗が避けられなかった。レコード盤の磨滅防止と針の経済性を配慮し、鉄針以外の材質を針に使用する実用例も生じた。柱サボテンのトゲを加工した「ソーン針」(thorn needle)が欧米などで流通し、日本では材質の軟らかいを使った「竹針」が広く用いられた(この種の植物性針は、いずれも蓄音機メーカーが供給していた)。植物性の針は絶対的な音量が鋼鉄針に劣るが、刃物で先端を削って尖らせることである程度再利用でき、レコード盤も傷めにくく、繊細な音質が珍重されもした。

これらの蓄音機の問題は、1920年代以降、電気式ピックアップと増幅機構を備えた電気式蓄音機の実用化である程度改善されたものの、第二次世界大戦後におけるピックアップ部分の大幅進歩までは引き続き蓄音機のハンデキャップだった。

また、収録時間が直径10インチ(25cm)で3分、12インチ(30cm)で5分と、サイズの割には短かったために、作品の規模の大きいクラシック音楽などでは、1曲でも多くの枚数が必要となり、レコード再生の途中で幾度となくレコードを取り替えねばならなかった。

特にオペラなどの全曲集では、数十枚組にもなるものまであり、大きな組み物はほとんどの場合ハードカバーで分厚い写真アルバム状のケースに収納され販売していた。今でも3曲以上収録されたディスクやデジタル媒体のことを「アルバム」と呼ぶことがあるのはこれに由来している(普通は1枚の表裏で2曲まで)。また、SPレコードはすべての盤がモノラルであった。

また、ポピュラー曲に関しては、面ごとに違う演奏家によるレコードを複数枚集めたアルバムが作られる場合もあり、これを乗合馬車(ラテン語でomnibus)に見立てて、「オムニバス」と呼ぶようになった。現在「コンピレーション・アルバム」と言われるものがかつては「オムニバス・アルバム」と言われたのはこれが由来である。

長時間再生策として、放送録音用としては通常より径の大きなディスクが用いられることもあったが、これは大きすぎて扱いにくく、業務用としての使用に留まった。また溝を細く詰めることや回転数を落とすことで録音時間を伸ばす試みもあったが、シェラックの荒い粒子状素材のレコード盤材質でそのような特殊措置を採ると、再生による針の摩滅劣化や音溝破損が起きやすいために実用的ではなかった。高忠実度再生には荒い粒子の集合体であるSPレコードは不向きで、長時間の高忠実度記録再生は材質に塩化ビニールを用いるLPレコードが実用化されるまで待たなければならなかった。

第二次世界大戦時の日本において金属供出による代用陶器にレコード針も含まれており、陶磁器製のレコード針も流通した[要出典]

この間、音質面の改善として、1925年より始まる機械式録音から電気式録音への移行がある。これによって、ラジオ放送開始のあおりで急速に低下していた売上が持ち直すことができた。また、大編成オーケストラの録音なども容易になった。

ビニール盤(バイナル)の出現

その後の化学技術の進歩により、ポリ塩化ビニールを用いることによって細密な記録が可能となり、従来の鉄針からダイヤモンドやサファイアの宝石製の(いわゆる)永久針を使用すると共に、カートリッジの軽量化などの進歩により長時間再生・音質向上が実現された。ポリ塩化ビニールで作られたディスクはシェラックなどに比べ弾性があり、割れにくく丈夫で、しかも薄く軽くなり、格段に扱いやすくなった。

これらがLPレコードやEPレコードで、第二次世界大戦後の1940年代後半に実用化、急速に普及し、1950年代後半までに市場の主流となった。これらを総称して、ビニール盤、バイナルなどと呼ぶ。

LPレコードの発売

ハンガリーからアメリカ合衆国に帰化した技術者ピーター・ゴールドマーク(Peter Goldmark, 1906 - 1977)を中心とするCBS研究所のチームが1941年から開発に着手、第二次大戦中の中断を経て1947年に実用化に成功。市販レコードは1948年6月21日にコロムビア社から最初に発売された。直径12インチ(30cm)で収録時間30分。それ以前のレコード同等のサイズで格段に長時間再生できるので、LP(long play)と呼ばれ、在来レコードより音溝(グルーヴ)が細いことから、マイクログルーヴ(microgroove)とも呼ばれた。また、回転数から33回転盤とも呼ばれる(実際には3分100回転、1分33 1/3回転)。これ以降、従来のシェラック製78回転盤は(主に日本で)SP(standard play)と呼ばれるようになった。

シングル・レコードの発売

RCAビクター社が1949年に発売した。直径17cmで収録時間は溝の加工によって違うが、5分から8分程度。回転数から「45回転盤」とも呼ばれる。ジュークボックスのオートチェンジャー機能で1曲ずつ連続演奏する用途が想定された。オートチェンジャー対応を容易とするために保持部となる中心穴の径が大きく、ドーナツを想起させるため、「ドーナツ盤」とも呼ばれる。日本ではシングル盤とも呼ばれた。当時アメリカではRCAビクター製の45回転専用プレーヤーが流通した。のち、同サイズで33回転のものも登場。こちらは中心部の穴が通常サイズだったため、ドーナツ盤とは呼ばれない。

LPとシングル盤の共存

SP盤と比較した場合、LP盤はディスクをかけ替える手間なしに長時間再生が可能でクラシック音楽の全曲収録や短い曲の多数収録が可能、シングル盤はSP盤並の収録力(片面あたりポピュラー音楽1曲程度)のままでディスク小型化・オートチェンジャー適合化を実現している。

LPとシングル盤は初期の一時こそ競合関係にあったが、上記の性格の相違から市場での棲み分けが容易で、基礎技術自体はほとんど同一のためレコード針も共用できたことから、ほどなく双方の陣営が相手方の規格も発売し、双方がスタンダードとなるという形で決着がついた。この際、ビクターで多くのクラシック音楽レコードを録音していた当時の世界的著名指揮者のアルトゥーロ・トスカニーニが、曲を分割せずにすむLPを強く推したことが影響したといわれる。音響機器メーカーからは33回転と45回転(と78回転)の切り替え可能なターンテーブルも発売され、バイナル盤への規格移行が促された。

LPレコードの実用化では、第二次世界大戦中にドイツで実用化され、戦後のLPレコード開発時期と同じくして民生用に用いられ始めたテープレコーダーの普及が一役買った。テープレコーダーは長時間録音を容易としたうえ、それ以前の録音用レコード盤に比べても高音質での録音が可能であり、マスター音源としての総合性能が優秀であったためである。特に長時間の曲が多いクラシック音楽などでミスなく長時間の演奏を行うことは難しく、リテイクと編集を可能にするテープレコーダーが役立てられた。

逆に、LPレコードとテープレコーダーがSPレコード時代の1曲5分未満という制約を取り払い、時に1曲10分を超えるような長時間即興演奏を連続収録したアルバム形式の商業レコード発売を可能としたことで、結果的に音楽ジャンル自体の発展をも促したモダン・ジャズのような事例もある(1954年2月に録音され、同年発売されたアート・ブレイキーの『バードランドの夜 Vol.1』は、長時間の即興演奏をLP盤に収録し、1950年代中期以降の新世代モダン・ジャズであるハード・バップの先駆となった。これにはテープレコーダーの小型化に伴うライブ録音の容易化も大いに寄与した)。

レコード原盤を切り込む装置をカッティングマシンまたはカッティングレースと呼ぶが、溝を切る際マスターテープの再生ヘッドの前にモニタヘッドを取り付けることにより、音量に合わせて予めカッターの送り速度を調整すること(可変ピッチカッティング、variable groove)が可能になり、後年はコンピュータ化されて更に細かいカッターヘッド送りが可能になり、ダイナミックレンジ(録音出来る音の大小の差)の確保と録音時間を両立できるようになった。

メディア媒体としての衰退・転化

45回転盤やLPレコードは、音質や収録時間では大きな進歩を遂げたものの、通常レコード針の機械的な接触によって再生される基本原理はSPレコードと変わらなかった。この方式は盤面上の埃やキズ、周りの振動に影響されやすく、メディア個体の再生回数が多くなると、音溝の磨耗により高域が減衰していく問題があった。また45-45方式のチャネルセパレーション(左右の音の分離)にも限界があった。

1980年代に入ってからは、扱いやすく消耗しにくいコンパクトディスク(CD)の開発・普及により、一般向け市場ではメディア、ソフト、ハードとも著しく衰退。一方で、在来システムの所有者やオリジナル盤への愛着などでアナログレコードを好む層も一定数存在し、アーティスト側もCDと並行してレコード盤を出すこともあった。

また、1970年代以降は「磨耗したレコードを通常の再生とは違った形でターンテーブルに載せ、手動で回転させる」という表現技法が現れ、そこから発達する形でクラブディスクジョッキー (DJ)が演奏に用いるようになる。2000年代に入るとCDでDJプレイが可能になる機器も普及したが、直感的な操作性とレンジの広い音質、特有のスクラッチノイズ、そしてレコードという媒体そのものへの愛着などから根強い人気があり、DJプレイ用に発売されるシングルの主流を占めていた(12インチシングル)。これはアナログレコード再生用ターンテーブル及びカートリッジへの一定の需要を生み出していた。

上記のように主流のメディアでは無くなったが、細々と生産が続けられていた。

レコードの復活

2000年代後半に入ると音楽はデジタル配信(ストリーミング)が主流となり、CDの売り上げは落ち始めた。一方アメリカのインディーズミュージシャンたちがアナログレコードで新譜をリリースするなどの動きが広がり、アメリカのレコードの売り上げは2005年の100万枚で底を打ち、2013年には610万枚にまで増えた。また、若者の間にレコードが格好良いというイメージが広がった結果、世界のアナログレコードの売り上げは2006年の3400万ドルで底を打ち、2013年には2億1800万ドルにまで跳ね上がった[9]

日本でも、1989年にアナログレコードの生産から撤退したソニーが2017年に再参入するなど(生産はソニーグループのプレス部門であるソニーDADCジャパン(現:ソニー・ミュージックソリューションズ)が担当、2010年代に入ってもはやインディーズのレベルではなく大手が参入する商業的なレベルまで市場が拡大している。2021年9月には、タワーレコードがアナログレコードの専門店を新規に出店している[2]

ソニー・ミュージックエンタテインメントは、2018年3月21日、29年ぶりに自社生産したレコードを販売すると発表した[10]。2017年の日本国内におけるアナログレコードの生産枚数は106万枚、販売金額は19億円となり、2001年以来16年ぶりとなる100万枚超えを果たした[11]。2020年には、生産額が2010年との比較で12倍となる21億1700万円となった[2]。国内での生産力が限られている中で需要が増大したことで、生産が追いつかない状況となっている[2]

アメリカでは1986年以来、CDの売り上げがレコードを上回る状態が続いていたが、2020年上半期のアメリカにおけるレコードの売り上げが2億3210万ドル(約246億円)だったのに対し、CDの売り上げは1億2990万ドル(約137億円)となり、30年以上ぶりにレコードの売り上げがCDを上回った[12]。なお同時期のストリーミングの売り上げは48億ドル(約5094億円)であった。

保存状態の良い中古レコードの取引も活発であり、特に日本で保管されていたものは全体的に質が高いことから、中古買い取りに参入する企業も現れている[2]

レコードの生産

レコードは原材料のビニライト板を音溝が刻まれた金型(スタンパ)の間に入れ、熱と圧力を加えてプレスすることで作られる。プレス装置と型さえ数をそろえれば量産が容易である。このプレス型はスタンパと呼ばれ、オリジナルの原版(原盤)から以下の工程を経て複製されたものである[13]

  1. 音を、アルミニウム板にラッカーコーティングした「ラッカー盤ダブ・プレートとも)」にダイヤモンド針やサファイア針のカッティングマシンで刻み付け、原盤「ラッカー」(lacquer)を作る。
  2. 「ラッカー」そのままでは耐久性に乏しいので、表面に銀鏡反応で銀めっきを施し、その上に更に電解ニッケルめっきを、厚く施した上で剥離する。こうして出来た凸型のニッケル盤が「メタルマスタ」(metal master)で、これが保存用のマスターディスクになる。
  3. 「メタルマスタ」に厚い銅メッキを施し、剥がすと凹型の「マザー」(mother)ができる。これは生産用のマスターディスクになる。
  4. 「マザー」にニッケルやクロムで厚いメッキを施し剥がし、凸型の「スタンパ」(stamper)を作る。
  5. 「スタンパ」を用いて上記のプレスを行うことでレコード(凹型の溝)が完成する。スタンパは消耗品で、使い潰したら「マザー」からまた新しいスタンパを作る。ここで4.の工程が行なわれる。
  6. プレスしたそのままではビニライトがはみ出しており円形ではないので周囲を裁断、整形する。

このメタルマスタ作成が音質の要になるという事で、レコード全盛期にはさまざまな試みが行われた。ライブ演奏をそのままダブプレートに刻んで出来たラッカーから直接プレスする「ダイレクトカッティング」(ラッカーの溝はすぐに潰れるので出来るレコードは完全な限定版になる)、高音域をイコライザーで強調して周波数特性を伸ばした盤、通常より重たいディスクを使用した盤、33 1/3の半分のスピードでカッティングした盤がある(ハーフスピードカッティング)。

テルデック社が1982年に開発したダイレクト・メタル・マスタリング(Direct Metal Mastering, DMM)もそうした音質向上技術のひとつ。超音波を当てながらカッティングを施した銅円盤をそのままマザーとして用いる方式で、ノイズ低減や収録時間10%増加などのメリットがある。ただし収録内容によってはダイナミックレンジが狭くなる物もあった。このDMMはCDの急速な普及に押され、登場から数年のみ使用されたが、2000年代以降は海外製復刻盤や新譜でも若干使用される例がある。

2012年末、ユニバーサルミュージックが、染料を全く含まない透明なヴァージンビニライトを使用し、また「マザー」・「スタンパ」の2工程で起き得る“劣化”を可能な限り消すためこれを省いて「メタルマスタ」から直接プレスを行なう「100% PureLP」を新しく発売開始した[14]


注釈

  1. ^ 「音楽では低音が大音量のため高音が雑音に埋もれないよう高いほうを強めている」といった説明がなされることもあるが、一般に低音楽器が大振幅であるのは事実としても、本質的な理由ではない。
  2. ^ 針先の位置変化でコイルを貫く磁界を変化させ、ファラデーの電磁誘導の法則により出力を得る方式。この法則では起電力(電圧)は磁界の変化の割合に比例するので、針先が早く動くほど出力電圧は大きい。
  3. ^ 高い音では振動するものが低い音より速く動いている。レコード溝の振幅が同一であっても、針先の振動は音が高いほど激しい。つまり針先の速度は音が高くなるほど大きくなる。
  4. ^ 物質に加えられた力を電圧に変換する圧電効果を利用している。得られる電圧は力の大きさに依存し、その周波数つまり変化の速さとは基本的に無関係である。
  5. ^ 変換に使用する物質(圧電素子)に加わる力は、針先の変位にほぼ比例する構造となっている。ゆえに出力電圧は溝の振幅の変位に比例し、録音された音の大きさが同じなら、周波数とは殆んど無関係である。なお素子のインピーダンスが容量性で、内部抵抗は周波数と共に小さくなることも与っている。

出典

  1. ^ レコードはどうやって音を出しているの?原理を簡単に解説! |”. www.science-kido.com (2018年1月25日). 2021年11月4日閲覧。
  2. ^ a b c d e 日本放送協会. “アナログレコード “世界的な人気” 生産現場はフル稼働”. NHKニュース. 2021年11月4日閲覧。
  3. ^ DJやレコード通がよく使う言葉「ヴァイナル」ってどんな意味?”. snaccmedia.com (2018年11月10日). 2021年6月14日閲覧。
  4. ^ その儀式性と触れる喜びを侮るなかれ。ヴァイナルはかくしてデジタル時代にも生き続ける”. wired.jp (2019年5月11日). 2021年6月14日閲覧。
  5. ^ 出品10万枚 音楽の宝探し 金沢駅で「秋の音盤祭」:北陸中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2021年11月4日閲覧。
  6. ^ 会えなくても「推し活」、ホテルの部屋でライブ映像鑑賞…ミラーボールで盛り上げ : 経済 : ニュース”. 読売新聞オンライン (2021年10月27日). 2021年11月4日閲覧。
  7. ^ a b ピエール・ジロトー『レコードのできるまで』白水社、1970年9月10日。 
  8. ^ “瓦版”に引っ掛けた洒落。アナログレコードの音楽を手軽にデジタル録音できるプレーヤー - 日経BP セカンドステージ
  9. ^ 2億1800万ドル -なぜ今? アナログレコード大ブームの理由
  10. ^ アナログレコード人気再燃 ソニーが29年ぶり自社生産 2タイトルを21日発売 産経新聞 2018年3月17日
  11. ^ アナログレコード国内生産が16年ぶり100万枚越え。音楽ソフト全体は微減 - CNN
  12. ^ レコードの売り上げ、CDを抜く1980年代以降で初めて - AV Watch
  13. ^ 100% Pure LP ユニバーサルミュージックジャパン
  14. ^ 超高音質LP 「100% PureLP」 12月発売! ユニバーサルミュージック公式リリース 2012年10月2日
  15. ^ A Short History of Twentieth-Century Technology
  16. ^ オーディオ50年史 4章1節
  17. ^ “100kHzまで対応のレコード「HD Vinyl」'19年発売へ。開発社CEOに聞くその可能性”. PHILE WEB. https://www.phileweb.com/news/audio/201804/17/19668.html 2018年4月17日閲覧。 
  18. ^ 菅野沖彦「私のアナログ感覚」季刊analog、17号・18号
  19. ^ CiNii [1]
  20. ^ その15「食べるレコード」、金沢蓄音器館、2010年6月。
  21. ^ 9月20日(木)おもしろ神戸ひょうご楽、三上公也の“G”報アサイチ!、2012年9月20日。
  22. ^ Rake、チョコで作ったレコード“ChocoRake”製作大成功、BARKS音楽ニュース、2012年2月15日 12:19:49。
  23. ^ 「8盤レコード」シリーズを2004年2月中旬に発売、バンダイ、2003年9月1日。
  24. ^ 木村源知「戦時期における金属代用品の多様性と変遷―画鋲に着目した事例研究―」『生活学論叢』Vol. 28, 1 - 15, 2016.3.31
  25. ^ 木村源知「戦時期における代用材料としてのレコード盤―画鋲の実物資料を用いた実証的研究―」『道具学論集』Vol. 24, 14 - 26, 2019.3.31






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