ネギ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/05 22:17 UTC 版)
生産
日本では全国的に栽培されているが、主産地は千葉県、茨城県、埼玉県、青森県などの東日本の地域である[8]。一年を通じて安定的に供給されているが、夏ねぎは北海道産、秋冬ねぎは群馬県産も多い[8]。輸入品は中国産が大半を占め、1997年までは冷凍主体の輸入であったが、1998年以降は生鮮品の輸入量が急増している[8]。
日本の単位面積当たりの生産高は世界一で、生産高は世界2位である。人口が多く広大な土地を持つ中国における生産高は世界1位である。
他の野菜と比較して塩害に強いとされており、2002年に台風21号が関東地方に上陸後、九十九里浜周辺の畑では塩害によって野菜や街路樹が枯れたのに対し、ネギだけは枯れずに残っていた逸話がある[46]。JA山武郡市ではこれをヒントに海水をかけて栽培した「九十九里 海っ子ねぎ」を販売している[47]。
日本国内の産地が集まる「全国ねぎサミット」が開かれている[48]。
栄養価
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 143 kJ (34 kcal) |
8.3 g | |
食物繊維 | 2.5 g |
0.1 g | |
飽和脂肪酸 | 0.02 g |
多価不飽和 | 0.02 g |
1.4 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(1%) 7 µg(1%) 82 µg |
チアミン (B1) |
(4%) 0.05 mg |
リボフラビン (B2) |
(3%) 0.04 mg |
ナイアシン (B3) |
(3%) 0.4 mg |
パントテン酸 (B5) |
(3%) 0.17 mg |
ビタミンB6 |
(9%) 0.12 mg |
葉酸 (B9) |
(18%) 72 µg |
ビタミンC |
(17%) 14 mg |
ビタミンE |
(1%) 0.2 mg |
ビタミンK |
(8%) 8 µg |
ミネラル | |
カリウム |
(4%) 200 mg |
カルシウム |
(4%) 36 mg |
マグネシウム |
(4%) 13 mg |
リン |
(4%) 27 mg |
鉄分 |
(2%) 0.3 mg |
亜鉛 |
(3%) 0.3 mg |
銅 |
(2%) 0.04 mg |
他の成分 | |
水分 | 89.6 g |
コレステロール | 2 mg |
水溶性食物繊維 | 0.3 g |
不溶性食物繊維 | 2.2 g |
ビオチン(B7) | 1.0 µg |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[50]。別名:長ねぎ
廃棄部位:株元及び緑葉部 | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
ネギの白い部分はビタミンC、青い部分にはカロテン、カルシウム、ビタミンKなどを含んでいる[10]。根深ねぎは淡色野菜、葉ねぎは緑黄色野菜に分類され、栄養的にも大きな差異がある[8]。根深ねぎよりも葉ねぎの方が栄養素量が多く、ミネラル類は根深ねぎの1.5倍から2倍量を含んでおり、ビタミン類も多く、カロテンとビタミンCは葉ねぎのほうが圧倒的に多い[8]。
ネギの辛味と匂いのもとになっているのは硫化アリルで、この成分が胃液の分泌を促して、食欲増進や消化促進、胃腸を健康にする働きがあるといわれている[9]。硫化アリルは体内で分解されることによりアリシンに変化する。アリシンは、豚肉などに多く含まれるビタミンB1の吸収を高めて、疲労回復や睡眠改善に効果が期待されている[9]。
食用
1年を通じて流通するが、食材としての旬は冬場(12月 - 2月)である[9]。野菜としては、白い部分は弾力があって艶があり、緑色と白色の境目がはっきりしていて、青い部分は肉厚でしっかり巻いて固く、葉先から根元まで全体に張りがあるものが良品とされる[9][10]。
日本では古くから冷奴、蕎麦、うどんなどの薬味として用いられるほか、炒め物、ぬた、汁の実、鍋料理に欠かせない食材の一つ[8]。ネギ特有の匂いが強いことから「葷」の一つ「禁葷食」ともされる。料理の脇役として扱われることが一般的だが、葉ネギはねぎ焼き、根深ネギはスープなどで主食材としても扱われる。ネギの先端にみられる「ネギ坊主」も若いものなら、炒め物や天ぷらにすると、タマネギのような甘みがあり食べられる[23]。
生を薬味として使う場合では、小口切りや千切りにしてから水にさらすと辛味を抑えられ、千切りにしたものは特に「白髪ねぎ」とよんで料理の飾りに使われる[20]。ただし、長時間水にさらすと硫化アリルも一緒に流れ出てしまうため、水につける時間はなるべく短時間で済ますのがよい[20]。
料理
日本料理に好んで使われるが、西洋料理でも使われる[8]。サラダ、冷奴、納豆や蕎麦など麺類を食べる際に生のまま食用とする場合がある。また、焼いて(ネギマなど)食べることもあるが、味噌汁やネギマ汁などの鍋料理に入れたり、炒め物に使用したり、カツ丼(タマネギの場合も)や鴨南蛮などで他の食材の具として利用したりするのが一般的である。冬のネギは特有の甘みがあり、肉の脂身ともよく合うため、香味野菜としてすき焼きや鴨鍋などの肉料理に使われる[32]。
味噌を使用し「ねぎみそ」を作り、各種料理や酒肴(ツマミ)とされることもある。ねぎを食用油で揚げ、エキスを抽出したねぎ油も市販されている。
保存
乾燥を避けて保存するのが基本である。根元を湿らせたキッチンペーパーなどで包んで、時々濡らして乾燥させないように立てておくと、使いかけであっても常温で保存ができる[10]。
泥付きネギは洗ったり、外皮を剥いたりしたネギよりも長期保存がきく[10]。普通は新聞紙に巻いて冷暗所に立てておいて保存するが、鮮度がよい泥付きネギであれば、土に埋めておくとさらに長期保存ができる[10]。
注釈
出典
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium fistulosum L. ネギ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月9日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium fistulosum L. var. giganteum Makino ネギ(狭義)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月9日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium fistulosum L. var. bouddhae Prokh. ネギ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月9日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium bouddhae Debeaux ネギ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 金子美登 2012, p. 132.
- ^ a b >野菜のチカラをもっと知る >とれたて大百科 >ネギ JAグループ(2020年4月25日閲覧)
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- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 講談社編 2013, p. 135.
- ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 164.
- ^ a b c d e f g h 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 41.
- ^ 講談社編 2013, p. 130.
- ^ "Welsh onion". Oxforddictionaries.com.
- ^ a b c 田中孝治 1995, p. 204.
- ^ “葱(ねぎ)”. 丸果石川中央青果. 2022年9月9日閲覧。
- ^ 田中孝治 1995.
- ^ a b c d e f 板木利隆 2020, p. 184.
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- ^ a b 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 114.
- ^ a b c d e f g h i j k l 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 115.
- ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 165.
- ^ a b “野菜ブック”. 農畜産業振興機構. pp. Chapter3 主な野菜の紹介 1.葉茎菜類 (3)ねぎ (2019年3月28日). 2022年6月6日閲覧。 (pdfファイルへの直リンク: 1.葉茎菜類 (3)ねぎ (001162826.pdf))
- ^ a b 講談社編 2013, p. 132.
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- ^ “越谷のねぎ”. 越谷市公式ホームページ. (2018年1月12日) 2020年10月3日閲覧。
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- ^ a b c 金子美登 2012, p. 134.
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- ^ 【アグリフォーカス】ネギハモグリバエB系統 全国で被害拡大『日本農業新聞』2021年11月16日16面
- ^ 藤田智監修 NHK出版編 2019, p. 240.
- ^ 金子美登 2012, p. 242.
- ^ 金子美登 2012, p. 241.
- ^ 千葉県九十九里ビーチエリア観光ガイド「九十九里 海っ子ねぎ」より
- ^ JA山武郡市「九十九里 海っ子ねぎ」より
- ^ 「全国ねぎサミット2019inまつど」を開催しました 千葉県松戸市ホームページ(2020年4月25日閲覧)
- ^ 文部科学省『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』
- ^ 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2015年版) (PDF) 」』
- ^ 飼い主のためのペットフード・ガイドライン 環境省(2020年4月29日閲覧)
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