90式戦車とは?

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【90式戦車】(きゅうまるしきせんしゃ)

陸上自衛隊の現行の主力戦車のひとつ。
登場時点でやや時代遅れの感のあった74式戦車の後継として1977年に試作を開始、1990年8月に制式化された。 出現当初は、デザインが良く似ていたことから、一部海外ではレオパルト2のコピーと思われていた。

車体、砲塔共に全溶接構造を取り入れ、複合装甲を車体前面及び砲塔前面に初採用。
試験で自身の発射した120mm徹甲弾数発を受けても問題なく稼動するなど、強固な防御力を示している。
また車体横にサイドスカートが装備されているなど、前2作の戦車に比べても大幅に生存性の向上が図られた。
近年の戦車砲の発達により、余り意味をなさなくなった避弾径始は、製造工程の簡略化という理由もあり、殆ど考慮されていない。 (現代のAPFSDSに対しては80度以上も装甲を傾斜させねばならない)

主砲は西側定番のラインメタル製120mm滑腔砲(ライセンス生産品)、副装備にM212.7mm重機関銃、主砲同軸に74式車載機関銃を装備。
主砲はスタビライザー搭載で自動装填装置付き、発射速度は12発/分で大幅に射撃速度が向上、また装填手が不要となった。
火器管制装置はデジタル化され処理速度が向上。
照準器もレーザーレンジファインダーとパッシブ式の熱線画像装置を装備、昼夜を問わず標的をロックオンする事が可能で、命中率、夜戦能力も向上している。
照準の優先度は車長であるが74式戦車と同じく砲手も照準を行うことが可能である。
また防御装備として対戦車ミサイル等の照準器から、レーザー照射を受けた時に警報を発するレーザー警戒装置を搭載している。

旧軍以来延々と受け継がれてきた「満州には水が無いから空冷エンジン」という呪縛から開放され、エンジンは1500馬力を誇る液冷ディーゼルエンジンを採用。
重量50tの車体を路上最大速度70km/hまで加速することが可能であり、機動性も高い。
懸架装置74式戦車より簡略化され、油圧+トーションバー方式となり、左右の傾きの変更は行えなくなったが前後に±5度、車高は+170mm〜−255mmの範囲で変更可能である。
自動装填機構採用により、乗員は一名減って車長、砲手、操縦手の3名となった。

これら数々の新機軸の搭載により、同世代の戦車と全く遜色のない性能を備え、隊員の練度も相まって極めて高い戦闘力を誇る。
(事実、ヤキマに於ける実弾射撃訓練では行進間射撃にも関わらず3000m先の標的に対して初弾命中させ、米軍関係者を驚愕させている)
だが、その価格がネックとなり(8.9億円/両)、なかなか配備が進んでいない(約300両)。
売りである自動装填装置の搭載による乗員の削減も、隊員の間では「乗員が3名では車両故障等の緊急時に下車した時、周囲警戒が甘くなる」「転輪の交換等に人手が足りない」と言う声も出ている。
2004年現在、90式戦車と同等以上の攻撃力と防御力を持ち、かつ重量を40t台として戦略機動性を向上させた(74式のトランスポーターが使えるため)新戦車の開発がTRDIを中心に進行している。

90式に関して「値段が高い」「重すぎて橋が落ちる」「贅沢にもエアコンがついている」といった批判がよく叫ばれるが、値段自体は他国の同世代戦車と同じか、むしろ安いほどであり、巷で良く言われるような世界一高価な戦車ではない。(チャレンジャー211億3800万円。仏ルクレール 9億7000万円)
また、重すぎて橋が落ちるというのも、90式の重量(50t程度)からいって考えられない話であり、高速道路や一級国道なら問題なく渡れる。
ただ戦車輸送車に乗せると重量が重くなりすぎ、橋げた一つあたり一台しかのらないように注意する必要があるため隊列を組んでは橋を渡る事ができなくなる。
エアコンが搭載されている件についてはNBC対策を施された現代の戦車ではむしろ当然の装備であり、エアコンを冷房装置と混同しているのが原因と思われる。

参考 http://www.jda.go.jp/jgsdf/info/so9.html

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Photo:MASDF


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90式戦車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/12/27 01:18 UTC 版)

90式戦車
Japanese Type 90 Tank - 1.jpg
性能諸元
全長 9.80m
車体長 7.55m
全幅 3.40m(サイドスカートを含む)
全高 2.30m(標準姿勢)
重量 50.2t
懸架方式 ハイブリッド
(油気圧・トーションバー併用)
速度 70km/h
(加速性能0-200mまで20秒)
行動距離 350km
主砲 44口径120mm滑腔砲Rh120
副武装 74式車載7.62mm機関銃 (主砲同軸)
12.7mm重機関銃M2砲塔上面)
装甲 複合装甲
(砲塔前面 及び 車体前面)
エンジン 三菱10ZG32WT
水冷2ストロークV型10気筒
ターボチャージドディーゼル
1,500ps / 2,400rpm(15分間定格出力)
最大トルク4,410N・m(450kgf・m)
排気量21,500cc
乗員 3名
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90式戦車(きゅうまるしきせんしゃ)は日本戦車である。戦後に日本国内で開発生産された主力戦車としては61式戦車74式戦車に続く三代目にあたり、第3世代主力戦車に分類される。

目次

概要

着上陸侵攻してくるソビエト連邦軍の機甲部隊に対抗する事を開発目標としており、世界の第3世代戦車に並ぶ性能を有すると考えられている。

製造は、車体と砲塔を三菱重工業120mm滑腔砲日本製鋼所が担当し、1990年(平成2年)度から2009年(平成21年)度までに61式戦車の全てと74式戦車の一部を更新するために341輌が調達された。価格は1輌あたり約8億円である。

120mm滑腔砲と高度な射撃統制装置により高い射撃能力を持つ。西側諸国の第3世代主力戦車では初となる自動装填装置を採用しており、乗員は装填手が削減され3名となっている。装甲には複合素材が用いられ、正面防御力は世界最高水準と評価されている。

北海道北部方面隊以外では教育部隊の富士教導団第1機甲教育隊武器学校にしか配備されておらず、本州以南の機甲部隊は74式戦車を主力とする。

平成23年度以降は冷戦の終結、防衛方針の変化や防衛費の削減、東アジアの軍事バランスの変化など、世界、国内の情勢変化を受けて、全国的な配備を目指した後継の10式戦車が配備される。一方で、平成23年度以降に係る防衛計画の大綱で示された動的防衛力の方針から、90式戦車も北海道以外の地域で活動を行えるよう、訓練が実施されるようになっている。

開発

陸上自衛隊広報センターに展示される試作車
砲塔上面
手前側に車長、12.7mm重機関銃M2を挟んだ反対側に砲手が乗車する
試作車のため旧型の74式60mm発煙弾発射機が装備され、自動装填装置上面のブローオフパネルが省略されている
また、車長用照準潜望鏡の形状や設置位置など、量産車と異なる点がある

本車輌の開発は74式戦車が制式化された直後、1977年神奈川県相模原市にある防衛庁技術研究本部第4研究所が、新戦車の各種構成要素の研究試作をスタートさせている[1]。当時は米ソ冷戦下にあり、ソビエト軍及びワルシャワ条約機構軍の質的向上、量的増大による東側陣営の軍事的脅威が高まっていた時期でもある[2]。同時期、ソ連軍は125 mm 滑腔砲を搭載させた戦車の配備を進めている[1]

1979年にシステム設計を開始し[3]1980年には開発要求書がまとめられた[1]1982年度から1983年度までに1次試作(その1)として日本製鋼所ダイキン工業等が主砲、弾薬、自動装填装置の試作を行った[1]。120 mm 滑腔砲向けの自動装填装置の開発は世界初となったが、当初から主砲に関してはドイツラインメタル社製44口径120mm滑腔砲Rh120ライセンス生産することが決定していた[1]。テスト用として、オリジナルのラインメタル社製120 mm 滑腔砲と弾薬も輸入されている[1]

1983年から1985年にかけて三菱重工業が参画し、試作1号車と弾薬の試作が1次試作(その2)として、1次試作(その3)として試作2号車と弾薬の試作が行われた[1]。この1次試作、2次試作で合計6輌(1次試作:2輌、2次試作:4輌)の試作車が製造され、各種試験に投入された[4]

1次試作の試作車による技術試験は1983年10月から1986年10月までに、機動性能、火力性能、防護性能等の試験が実施された[4]

試験中に1次試作の2輌は合計約11,000kmの走行試験、合計約1,220発の射撃試験を実施、また、1985年7月に実施された装備審査会議調整部会の決定により2次試作ではラインメタル社製120mm滑腔砲を採用することを決定した[5]

1987年9月から1988年12月までに行われた2次試作の試作車による試験は、1次試作の試作車の試験を受けた仕上げ作業に加えて、小隊行動試験も実施された[4]。この試験では、下北試験場にて試作車への射撃試験も行われている[4]1989年2月からは陸上自衛隊による実用試験が、同年8月まで実施された[6]。実用試験では潜水渡渉準備、NBC使用状況下の行動、重機関銃による対空射撃、弾薬補給等あらゆる事態を想定した試験が行われた[6]

試験中に2次試作の4輌は合計約20,500kmの走行試験、合計約3,100発の射撃試験を実施した[5]

実用試験の結果、陸上自衛隊は「部隊の使用に供し得る」との報告書をまとめ[6]、1989年12月15日に装備審査会議調整部会において陸自側の報告内容を追認し[6]、「制式の採用を適当と認める」との決定を下した[6]。翌1990年8月6日に新型戦車は“90式戦車”として制式化された[3]。同年、30輌の調達が開始された[6]

現在、この試作車のうちの1輌が陸上自衛隊広報センターで屋内展示されている。この車両は、元々日本原駐屯地に用途廃止車として屋外展示されていたものを、広報センター開設の為に化粧直しをして移管したものである。これは初めて90式戦車が公開されたときの写真と同じく、砲塔正面装甲をキャンバスで覆い隠している。また、車体前面には92式地雷原処理ローラ用の6箇所の取付け座がある。試作車は土浦駐屯地前川原駐屯地でも1輌ずつ屋外展示されており、後者にはストレートドーザが取り付けられている。

特徴

火力

JM33装弾筒付翼安定徹甲弾(手前)
JM12A1対戦車りゅう弾(奥)
ヤキマ演習場での訓練に参加する90式戦車(2009年9月15日

主砲には西側第3世代主力戦車の標準主砲となっているラインメタル社の44口径120mm滑腔砲を備え、弾種はAPFSDS(120mm TKG JM33装弾筒付翼安定徹甲弾)とHEAT-MP(120mm TKG JM12A1対戦車りゅう弾)を使用する。この120mm滑腔砲用砲弾の薬莢は、焼尽薬莢と呼ばれるもので、底部を残して燃えて無くなる仕組みで、射撃後に空薬莢を捨てる必要がない。照準具安定装置、自動装填装置、熱線映像装置、各種のセンサーと連動したデジタル計算装置を備え[7]、照準具安定装置の自動追尾機能は車体が上下に揺れたり、左右に方向転換しても常に目標を捉え続け、砲を目標に指向できる[7]

射撃統制装置レーザー測遠機や砲耳軸傾斜計、装薬温度計、横風センサー等から送られてくる情報を計算し、弾道へ与える各種要素を割り出す[8]。そして照準装置への入力・設定を照準制御器に送る事で、砲弾は的確な軌道を描いて目標に命中する[8]。これら国産ハイテク技術が導入された射撃統制装置や自動装填装置を用い、射撃には大容量のデジタル弾道コンピュータとジャイロを併用する事で、目標及び自らが移動していたとしても高精度な行進間連続射撃が行え、急激な制動で車体が前後に傾いた状態でも正確な射撃が可能となった。なお、90式戦車の滑腔砲は仰俯角範囲が狭いものの、サスペンションによって車体を傾斜させることでこれを補う。

日本の演習場では、広さの問題から行進間連続射撃や最大射程射撃訓練などが十分に出来ない為、1996年(平成8年)度より毎年9月アメリカワシントン州ヤキマ演習場に90式戦車を持ち込んで戦闘射撃訓練などを行っている。ヤキマ演習場で高機動テストや走行間射撃テストを行った際には、停止状態だと2km先の標的用M60に高確率での命中[9]、走行間射撃では3km先の目標に命中させる[10]などの性能に、アメリカ軍関係者が驚いた[11]という。00式120mm戦車砲用演習弾の導入により、富士総合火力演習でも2002年(平成14年)度から行進間射撃が披露されるようになった。

砲塔内の車長席には正面に照準潜望鏡、潜望鏡操作パネル、サーマルモニター、照準機ハンドルなどがある[12]。潜望鏡操作パネルには28個のスイッチランプがあり、車長はこれらを見る事で自らの車輌の状態を知る事ができる[12]。また、車外の車長用視察・照準装置を介して外の様子を知る事ができる。車長席側の装填装置にはハンドルを取り付ける穴があり、装填装置が使用不能になったとしても、車長がハンドルを取り付けて回す事で弾薬を装填できる。砲手席には正面とサイドにパネルがあり、正面のパネルには14個、サイドパネルに20個のスイッチが備わっている[12]。砲手席左側には無線装置がある。照準ハンドルには追尾スイッチ、角速度ボタン、レーザー発射スイッチ、撃発安全レバー、撃発ボタンの計5個のボタン・スイッチがあり、両手のを使い操作する[12]

砲塔後部にはラックと、円筒形の風向センサーを備えている。

なお、自動装填装置を採用している点については、評価する声がある一方で、装填手一人分の人手がなくなった事で、車体の清掃や整備、戦車用掩体を掘るといった作業における搭乗員の負担が増加したとの意見がある。メルカバやM1のように、技術的には可能とされながらも乗員減のデメリットを考慮し、自動装填装置の搭載を見送った例もある。人員削減の思惑もあるとされるが[13]、砲弾装填の失敗、事故を防ぐ点は評価されている。

主砲の滑腔砲は74式戦車が備えるライフル砲と違い空砲射撃が出来ないが[14]、これは砲自体が空砲使用を前提としていない為であり、創立記念行事などでの訓練展示(模擬戦)では、代わりに同軸機銃の74式車載7.62mm機関銃で空砲射撃が行われる。

このほか、乗員向けに89式5.56mm小銃(折り曲げ銃床型)が支給される。

防護力

砲塔左前面
マークは戦車教導隊第2中隊

セラミック系複合装甲の実用化と車両そのもの小型化により、軽量ながら防護力は高いとされている。

セラミックは硬度があるぶん割れやすい素材だが、APFSDSなどのように、セラミックが割れる速度より高速で衝突してくる物体に対してはその硬度を防御力に転換でき、劣化ウランなどの重金属装甲よりも軽量化することができる。これによって90式戦車は防御力を維持しつつ、他の同世代戦車に比べて軽量化することに成功しており、車体そのものが小型化されたことで被弾率が低下し、発見される可能性も抑えている。

一般に公開される90式戦車の砲塔正面装甲にはキャンバス布地などが張られ、複合装甲の詳細は隠されるが、生産車輌の試験走行時に撮影された公開写真などには何も貼られていない状態のもの[15][16]が存在し、その形態からルクレールと同様の内装式モジュラー装甲と見られている。

砲塔前面の複合装甲が垂直の平面で避弾経始を考慮していないのは、装甲を傾斜させると前面投影面積あたりの重量が増加し車内容積が減少する点のほか、高速で衝突し流体状の振る舞いで貫通するAPFSDSに対しては装甲傾斜による避弾経始が意味を成さないこと、また傾斜させずともそれに耐えられるだけの装甲材の開発に成功したこと等が理由に挙げられている。

耐弾試験では、正面装甲は44口径120mm滑腔砲を使用して発射された重金属弾体APFSDSに対して自衛隊の公式発表では「良好な結果を得た」という表現が用いられ、前面装甲に関してはM1A1エイブラムスを若干上回る防御力を持ち、側面は35mm徹甲弾の掃射に耐えうる性能があり、上面は榴弾の破片やSADARM程度の自己鍛造砲弾にも耐えうる耐弾性能を有しているとされる。

この耐弾試験の映像の一部はマスメディアに公開されており、実際に耐弾試験映像を視聴した軍事ライターの雑誌記事[17]によると「バンカー内に納められた90式戦車の正面に対し別の90式戦車の主砲により射撃を実施(射距離250m程度と推測)。試験終了後にバンカー内から被弾した90式戦車が自走を行い、被弾車の車体正面の複合装甲に4発(被弾痕からHEAT-MP3発、APFSDS1発と推定)、砲塔正面右側の複合装甲に少なくとも1発(被弾痕からAPFSDSと推定)の被弾痕が確認でき、砲塔側も車体側と同等の防護力を持つと推察できる」としている。その他に「89式装甲戦闘車らしき車輌から35mm機関砲により90式戦車の砲塔側面を射撃」する場面や、「横向きに吊るした155mm榴弾を90式戦車の上空約10mで爆発(曳火射撃を想定した静爆試験と推測される)」させる場面、「覆帯下で地雷を爆発(地雷による静爆試験)」させる場面が試験映像中にあると紹介している。

また、砲塔後部にある即用弾収納部分の上面はパネル構造とされ、被弾などによって搭載する砲弾が誘爆した際にはパネルが吹き飛び、エネルギーを上に逃がすことができるように設計されており、乗員の安全性向上が図られている。

車体

稜線射撃を行うため車体を前傾させた様子
車体を前傾させた様子

車体の砲塔左下側に操縦者が乗車する。操縦席には、位置可変T字型操向ハンドル、電気式アクセルペダルや常用ブレーキ、アシストシリンダー付の駐車ブレーキなどの操縦装置、57個のボタンや計器類がある[12][18]

ペリスコープにはワイパーが備わる。車体底部に燃料タンク、後部に冷却ファンとそれを挟む形で潜水用逆流防止弁が付いた排気管がある。その上部に変速操行機オイルクーラーとラジエターがある。操縦席の右側が予備弾薬庫となっている。

懸架装置は、前側の第1転輪と第2転輪、後側の第5転輪と第6転輪が油気圧式、中央の第3転輪と第4転輪はトーションバー式というハイブリッド式サスペンションとなっている。車体を前後に傾斜させる機能と、車高を昇降させる機能により、丘などの稜線を利用した射撃において効率的に車体を隠すのに役立つ。74式戦車のように左右に傾斜させる事は出来ない。

制動能力は高く、全制動時では50km/hの速度から2m以内で停止可能である。[19]配備当初は不用意に制動を行った際に上半身を車外に出していた車長が胸部を打撲した事もあり「殺人ブレーキ」などと呼ばれていた。

ストレートドーザを装着した車両も存在し、待ち伏せ等での陣地構築の際に用いられる。また、専用の装備を持つ一部の車両は車体前面に92式地雷原処理ローラが装着出来る。

制式化当初からレオパルト2との形状の類似が指摘されており、防衛庁(当時)の担当官が「この様な(レオパルト2のような)のが欲しい」と発言したとの逸話が、ワールドタンクミュージアムの解説書などにも掲載された。実際には、90式戦車の複合装甲はレオパルト2の分割配置複合装甲とは異なり、ルクレールと同様に複合装甲の着脱が容易な内装式モジュール装甲だと考えられている[1][2]。また形状以外では、90式戦車では前面投影面積や砲塔容積の削減で、主要国のMBTと比較して小さく設計されており、新素材の採用などにより防御力を犠牲にせずに軽量化を図られている。

動力

エンジンには三菱10ZG32WT水冷2ストロークV型10気筒ターボチャージドディーゼル、変速機には三菱MT1500オートマチックトランスミッション(前進4段 後進2段)が採用されている。これらはパワーパック化され、土浦駐屯地での公開実演では20分以内での交換が実施されている。

1972年に技術研究本部で10ZG32WTの原型となる単筒型の実機の試作が行われ、1977年から1978年にかけて10ZG32WTの8気筒型である8ZG(シリンダ内径135mm行径150mm)の試作が行われた。1978年から1979年にかけて所内試験が行われ、最大出力1,196ps/2,600rpm を達成した。これらの研究成果を元に1982年に1,500psを達成した10ZG32WTが完成した。

10ZG32WTは1,500ps級ディーゼルエンジンとしては排気量21,500ccと小型で、また耐久性に関しても15分間における定格最大出力1,500psを達成しており、諸外国のディーゼルエンジンとの比較においても10ZG32WTは過酷な高出力下での高い耐久性を達成している。

燃料消費性能

10ZGの燃費性能は定格燃料消費率234g/kWh(約172.1g/PSh)、最低燃料消費率226g/kWh(約166.2g/PSh)と技術研究本部の元研究官による雑誌記事[17]において公表されている。

同雑誌記事では、10ZGの燃費性能を他の新型1,500馬力級ディーゼルエンジンと同一条件下にて比較した場合、1990年代初期に技術研究本部が研究試作したターボ・コンパウンド搭載の4ストローク多気筒ディーゼルエンジン(定格燃料消費率200g/kWh、最低燃料消費率198g/kWh)や、1990年代前半に登場したドイツMTU社製のMTU MT883 ka-500 4ストロークディーゼルエンジン(定格燃料消費率209g/kWh、最低燃料消費率198g/kWh)などより 10ZG の燃費性能(前述の数値)はやや劣るとしている。

なおMTU社の公開資料によると、レオパルト2に搭載されているMTU社製エンジンの一つであるMB873の燃料消費率は約250g/kWh(1500PS/2600rpm時)[20]、MT883の燃料消費率は220g/kWh(1500PS/2700rpm時。なお燃料消費率の数値は±5%の誤差があるとしている)[21]となっている。

よって10ZGの燃料消費率はMB873に対してやや優れ、MT883にはやや劣ると考えられる。

8気筒型である 8ZGの燃費性能は、全負荷最低燃料消費率191g/PSh(約259.7g/kWh)と公表されている[5]

90式戦車は諸外国の第3世代戦車と比較して航続距離が低いとされることから10ZGエンジンの燃料消費性能が悪いという指摘があるが、同一条件下におけるエンジン単体の燃料消費量は前述の数値の差程度である。

また、戦車の種類によって車体重量、燃料搭載量などの条件が異なることに加えてメーカー、国、軍事機関などにより燃料消費率の測定基準が異なると考えられる以上、一概に航続距離の数値をもってエンジンの燃料消費性能を論ずるのは適切ではない。(各国の軍事機関を例に挙げても米軍のMIL規格、日本の防衛省規格NDSなど様々な基準・仕様・規格が存在する)

主力戦車としての評価

行進間射撃を行う90式戦車

実戦での運用例は無く秘匿情報も多いが、公開される性能から第3世代型戦車としてはM1A2エイブラムス(米)やレオパルト2A6(独)などと並ぶ世界最高水準の戦車の一つとされ、2004年度のForecast International社による世界主力戦車ランキングではM1A2 SEP、メルカバMK4に続いて第3位に評されている[22]

また、アメリカ陸軍雑誌『アーマー』では、アメリカ政府関係者の発言として90式戦車の高度な機能として移動目標照準時の自動追尾機能を挙げ、その他に敵目標の脅威度を認識・判定する機能の存在を推測する記述がある[23]

しかしながら、平成13年度時点で既に、開発から10年以上が経過し諸外国の技術水準から取り残されつつある、早急に国際的な技術進歩の趨勢に対応していくことが必要不可欠であると指摘されており[24]、 特に諸外国戦車との比較では90式が装備していないC4I機能がM1A2、レオパルト2[25]ルクレールには装備されていることが示されている[24]

現在、第2戦車連隊の配備車両には、基幹連隊指揮統制システム端末の搭載が開始されている[26]。このT-ReCs搭載型は2010年8月23日から9月22日まで北部方面隊で行われた総合戦闘力演習「玄武2010」に、C4ISR部隊として参加している[27]

だが、内部スペースや給電能力の制約により、これ以上に高度なC4I機能の付加は困難であるとされている。このことから、より充実したC4I機能等が付与された後継の新主力戦車、10式戦車が開発された[28]




  1. ^ a b c d e f g 『戦後の日本戦車』 p113
  2. ^ 『戦後の日本戦車』 p112
  3. ^ a b 『丸』2002年1月号 p72
  4. ^ a b c d 『戦後の日本戦車』 p114
  5. ^ a b c 防衛省『技術研究本部50年史』
  6. ^ a b c d e f 『戦後の日本戦車』 p115
  7. ^ a b 『丸』2002年1月号 p73
  8. ^ a b 『丸』2002年1月号 p74
  9. ^ 『月刊グランドパワー』2006年4月号では、記者が「ほぼ100パーセント」と表現している
  10. ^ コーエー刊『戦車名鑑1946~2002 現用編』51頁
  11. ^ 『月刊グランドパワー』2006年3月号
  12. ^ a b c d e 『丸』2002年1月号 p77
  13. ^ 『丸』2002年1月号 p76
  14. ^ 但し10式戦車用に空砲が調達された事、それぞれ砲弾の一部に共用可能であることから技術的には空砲の使用も可能
  15. ^ 活動報告 その他(衆議院議員 坂本剛二)
  16. ^ http://kago-ai-chan.net/uploader/img/naver6684.jpg
  17. ^ a b 『世界のハイパワー戦車&新技術』(Japan Military Review『軍事研究』2007年12月号別冊)
  18. ^ 後継の10式戦車では情報モニターの設置など、操作計器の簡素化も行われている。
  19. ^ テレビ朝日 カーグラフィックTV 1996.08.24 No.564 陸上自衛隊の働くクルマ逹より
  20. ^ MTU社MB873エンジン公式資料
  21. ^ MTU社MT883エンジン公式資料
  22. ^ Forecast International Re-evaluates Main Battle Tank Market
  23. ^ ARMOR-July-August 1999
  24. ^ a b 平成13年度政策評価書 事前の事業評価(本文)
  25. ^ 自己位置評定のみ
  26. ^ 柘植優介「陸自期待のルーキー、10式戦車の姿」、『PANZER』第470集、アルゴノート社、2010年9月、22-33頁。
  27. ^ 「イーグル・アイ」 「玄武2010」で2師団 C4ISRで継戦能力保持(朝雲新聞・2010年11月4日号(2010/11/17閲覧。))
  28. ^ 平成21年度政策評価書 事前の事業評価(本文)
  29. ^ 平成20年度予算から初度費が一括計上されており、10式戦車の単価には初度費は含まれていない。
  30. ^ 2014年度末に廃止される第1戦車群から管理替えを受けた上で6個中隊全てに配備予定
  31. ^ JapanDefense.com
  32. ^ 防衛白書の検索
  33. ^ 特に日本共産党や社民党等の一部政党や政治団体に関しては自党の支持者向けイベント(赤旗祭)等で戦車不要論の証明として引き合いに出される事が多い
  34. ^ そもそも重量30トンを超える重量物を輸送するようなトラックが重量物積載状態で多数走行している現状や、そもそも50トンクラスが走行出来ないような橋は道路事情を考慮しても一部の「田舎道」程度であることから、90式が橋を渡れないという話は安全上分割して運搬している姿しか目にしていない状況による憶測でしか無い
  35. ^ レオパルト2の方向指示器(後部)が見える写真 / ルクレールの方向指示器(前部)が見える写真
  36. ^ 戦車、民間フェリーで移動…北海道から大分へ - 読売新聞 2011年10月26日
  37. ^ 自衛隊、南西シフト鮮明=九州・沖縄で相次ぎ演習-鉄道、民間船で列島縦断 - 時事通信 2011年11月3日
  38. ^ 戦車以外では、在来線で施設科などの小規模な輸送が行われている。


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