アイーシャの権能
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生か死か(Live or Die) アイーシャがギリシア神話の春と冬の女神ペルセポネから簒奪した第1の権能。 春の乙女であり、冬と死を司る冥界の女王でもあるという、ペルセポネの二面性を体現した2種類の力を秘めている。 春の女神としての能力は《万能の治癒》ともいうべき超回復。生命力を操り、傷ついた者へ命の息吹を吹き込むことにより瀕死の人間すら一瞬で癒すことが可能となり、呪力を全力で込めれば邪眼によって無機物に変えられた者を一時的に命ある姿に戻すこともできる。さらに副次的な作用として、怪我だけでなく呪いや毒をも見ただけで察知する眼力を獲得する。ただし、カンピオーネを治療することはできない。 1日ほどかけて準備して「反転」させると、寒波をもたらしすべてを凍てつかせる「冬の力」となる。『冬と吹雪』を呼びよせ、相手を氷漬けにしてあらゆる命を停止させる冷気を放ち、冬の女王の呪縛として冷気を『氷の大蛇』の形で操ることも可能。ただし、力を使いすぎると半年から1年、もしくはそれ以上の間、冬の寒さが残って厄災の原因となってしまううえ、自身がふと思いついただけの作戦すらも半自動的に実行してしまうという制御不能な面を持つ。加えて、冷気によって周囲に居る人間たちが低体温症を起こして倒れてしまうという問題点もある。 さらに、神すらも即死させうる切り札として、地底の冥界に通じる地割れを起こして敵を引きずり落とす『冥府落とし』がある。冥府の穴からは常人ならば周囲にいるだけで凍死しかねないほどの冷気が噴き出るという追加効果まであるが、大地母神を含む冥府の神々や復活を遂げる伝承を持つ神々にはあまり効果がなく、これを使うと「冬の力」はしばらく使用不能になるうえ本来の癒しの力も弱体化してしまう。 幸いなる聖者への恩寵(Grand Luck) アイーシャが中国の善なる民衆の守護神・地蔵菩薩から簒奪した第2の権能。 《幸運の招来》を行い、善行の成就に努めている限り自らの行動が成功するように幸運が発生するようになる。その本質は、吉と凶、幸運と不幸という、因果の帰結をゆがめる「2種の力」を異様に高め、己に都合よく幸いを引きよせ、他人に不幸を押しつけるというもので、故に自分の善行を妨げようとする者に対しては不幸が訪れる。不幸の度合いは相手の力量に応じて変化し、相手が人間の範疇にあるなら事故に巻き込まれたり同行者が急病にかかる程度で収まるが、カンピオーネともなれば大規模な災害に巻き込まれる。アイーシャを狙った暗殺者が勝手に転んで自分の凶器で死ぬ、というような幸運もしばしば起こるらしい。権能そのものは自在にオンオフできるが、すでに起こってしまっている現象を中断させることはできないため、自らもその不幸に巻き込まれてしまうことがある。また、禍福はあざなえる縄のごとしという言葉の通り、何度も連続して幸運に恵まれて一定量を超えると反動で大きな不運に見舞われてしまう。 応用として、同様の効果を持つ『幸運の加護』を他人にあたえることも可能。対象は自らを取りまく幸運の気を自覚できるようになるが、大きな反動などの自分自身に使う時と同じデメリットがあるのでめったに使わない。 《妖精郷の通廊》と密接な関係を持つ権能であり、発動中ならば大量の呪力を代償に「修正力」をも利用して通廊の中に緊急避難することも可能となる。さらに「起こりうる最大の吉凶」を願った場合には、夜空を血のように赤黒く染めると同時に足下から噴出する強い呪力をはらんだ熱風で移動を妨害した直後、勝手に通廊が空き4名のカンピオーネをまつろわぬ神3柱の眼前へと強制転移させた。 相手が「この世の運命をねじ曲げ、世界を滅ぼそうとする大罪人」であれば、『時間』と『歴史』を味方につけ、『歴史の修正力』によって究極の神具《救世の神刀》の降臨すら可能となる。さらには対象に一定時間「地球の誕生以来、一番幸運な人間」にするほどの『至上の幸運』を加護として授けることができ、何かするときのみならず何もしなくても全てが上手くいくほどの幸運に恵まれる。ただ、それに見合った凄まじい反動が返ってくるという代償があり、蓮の場合は『ほぼ無敵状態』になった上に崩壊した地球を巻きもどすほどの大奇跡を成し、その反動で主戦力の権能《ネメシスの因果応報》を長期間封じられる羽目になった。 妖精郷の通廊(Beyond the Timeless Horizon) アイーシャが常若の国の妖精女王ニアヴから簒奪した第3の権能。 アストラル界や過去の時代など「地上でないどこか」の世界に通じる「妖精の門を開く権能」、つまりは時空を超えるためのワープホールを作り出す能力。この力によりアイーシャはいろいろな時代へ時間旅行を行っているが、作ろうと思っても作れなかったり何年か後に勝手に穴が開いてしまったりと、自分自身でも上手く制御できず、一度開けば作った本人さえ抗えずに吸い込まれてしまう。 「門」は洞穴のような漆黒の穴の形をしている。通廊の中は闇が広がる空間で、光は出口にあたる一点のみ。宇宙空間のような見た目だが、地上と同じように呼吸できる。直通の出口の他にも無数の出口が存在し、アイーシャが内部で念じれば出現するが、当人もそれぞれの出口がどんな場所・時代につながっているか判別できないので、迷い込めば確実に迷子になってしまう。理論上は敵をどこかへ追放して無力化できるのだが、神やカンピオーネは自力でタイムトラベルして過去から帰還してしまう可能性が高いこと、権能の舵取りをするのがアイーシャ夫人である以上は失敗する確率が高いこと、という不確定要素が大きすぎるので決め手にはならない。 アイーシャが通った後は自然に閉じるようになっているが、よく晴れた満月の日に自然と開くほか、大勢の優れた魔術師が半月から1カ月ほど時間をかけて準備をすれば魔術的に開けることも可能。他人を強制的に転移させる場合、相手の人数や強さが増すごとに消耗も大きくなる。穴が見えなくなった後でも道は残っており、神力などの細かい力はそこを通ることができる。なお、アイーシャの帰還と共に消滅するが、自らの意志で残すこともできる。 さらに、本来あるべきでない世界へ「繋ぎ止めようとする力」により、起こるはずの事象をなかったことにし、起こった事象さえ修正する力に守られることに加え、ある程度恣意的に「修正力」を操り攻撃無効化を行うことが可能。加えて、この権能の副次的な効果によりアイーシャは不老になっている。 元があくまで『異界を旅する』権能でしかないため殺傷力は非常に低く、送り込んだだけで死に至るような過酷な環境の場所へ繋げて“葬り去る”用途では使えない。ただし、一度吸い込まれると入口方向へ帰還するのは困難で、普通の魔術師の飛行魔法はもちろん、アイーシャ自身の力でさえ逆走は不可能。 なお、現代から直接未来に飛ぶことは今のところできないが、通廊は両方向性なので過去から現代へやってくることは可能であり、過去から現代に帰る際に呪力を一気に使うことである程度任意に時代を選ぶこともできるため、元の時代から30年後などに飛んで意図的に浦島太郎状態を作り出すといった裏技的な用法も存在する。 《幸いなる聖者への恩寵》で生じた「起こりうる最大限の凶兆」という下地にアイーシャ自身の怒りと絶望が作用すると、巨大な色とりどりの薔薇に包まれた直径数百メートルはある「天空通廊」が上空2500メートルほどの高さに発生する。周囲は黄金色の光に包まれた幻想的な光景となるが、妖精王であっても抗えぬほどの桁違いな吸引力が発生し、さらには通廊からは小妖精達が現れて微笑みながら内部へ連れ去ろうとする。 また、作品終盤にて、条件付きではあるがこの世界に初めて出現した、「異なる時間軸の並行世界への転移も可能とする権能」であることが明らかになった。ただし、異界のスペシャリストが内部から術で暴走させてようやく可能となる用法な上に、「行き来」ができる能力ではないため行った後に自力で帰還するのはかなり難しい模様。作中では、魔王内戦にて妖精王たちが自らの肉体から作った宝珠を用いて6人の神殺しを並行世界へと追放している。 そして、大暴走して並行世界へ旅立った後は『神話の領域』につながる通廊を作り出す力へと変質を遂げ、さらに通った後の世界に星雲に似た『光の集合体』という形の《空間歪曲》を出現させるという異変を引き起こすようになった。同時にそれまで使ってきた過去やアストラル界へ転移する能力は失われ、ユニバース235にいくつも存在していた通廊が次々に消滅している。何らかの理由でアイーシャがおとなしく眠っている間はほとんど空間歪曲は発生しないが、眠りが浅くなってくると高頻度で発生するようになる。仮にアイーシャが死亡すれば全ての通廊が断末魔の暴走をはじめ、決して交わらないはずの神話の領域同士をつなぐ抜け道となって、神話の筋書きを変え、本来いるはずのない神がいるべきではない神話に現れ、神々の在り方を大きく変えてしまう危険すらあることから、救世の勇者であっても殺害を躊躇する状態となっている。以前と同じく緊急避難目的でも使えるのだが、時空にまつわる権能を持つ神によって行き先を強制変更されかねないというリスクがある。妖精ニアヴ 《妖精郷の通廊》が具現化した顕身。小鳥などと同程度のサイズで、姿形は10代半ばの少女、透けそうなほどに白い肌と輝く美貌を持ち、背中にはアゲハチョウのごとき翅を生やしている。 アイーシャがヒューペルボレアで再封印されそうになった際に誕生し、直後、時空を超えて多元世界の彼方へ逃亡してしまう。ただ、この顕身さえ消滅させられれば空間歪曲の広がりと多元宇宙の混沌化は封じ込められることが分かったため、護堂とモニカが行方を追うことになる。 女王の呪縛(Charm and Curse) アイーシャがバビロニアの古き地母神イシュタルから簒奪した権能。 周囲の人間の好意を自分に向けさせ信奉者に変える魅了、もとい《集団洗脳》の能力。初めて会ったばかりの人々に自分のためなら命を惜しまないほどの忠誠心を植え付け狂信的な教団を作り、魅了した者たちの身体機能と戦闘技術を強化する効果により精強な軍団に変えることも出来る力だが、アイーシャの性格的に普段は人捜しや移動手段の確保程度にしか使われない。ただ、ほほえみを見せたりお願いをするだけでも権能はわずかながら常時発動しており、微弱な権能しかかけていなくとも何度も重ね掛けすることで結果として狂信者を生み出してしまうこともあり、一旦暴走してしまった群衆はアイーシャの力でもしばらく鎮静できなくなるという危険性を持つ。自分を忘れるようにお願いすれば、記憶が不鮮明になって思い出せなくなる。 神や神殺しには通用しないが、神の眷属ですら沈静化、あるいは同士討ちさせ、他者の権能の支配下にある者をも魅了するほどの絶大な効果を持つ。ただし、敵対者を完全に魅了するには時間と回数が必要となる。魅了された人々は時間と距離を置けば呪縛から解放され、それまでにかかる時間は呪力の量や魔術に慣れているかどうかによって違いが生じる模様。生物の種類によって効きやすさに違いがあり、動物と比べて草木の類にはあまり通用しない。また、同種の権能によって効果を上書きされる場合がある。 これまでの時間旅行で魅了してきた人間との繋がりはアイーシャの帰還後も残っており、プルタルコスの館にある『時の門』のような特異点を利用すれば信奉者たちから莫大な呪力を瞬時に徴収できる。 不思議の国の剣(ジャバウォック・スレイヤー, Jabberwock Slayer) アイーシャが伝説の騎士にして守護聖人である竜殺しの英雄サン・ジョルディから簒奪した権能。 剣で武装した『甲冑の魔神』を顕身として召喚、使役する。身長は十数メートル、甲冑をつけているのはずんぐりとした上半身だけで、下半身は煙でできている。民衆の庇護を求める声がなければ決して召喚することはできないという条件があるものの、支持さえあれば自身がどれだけ呪力を消耗していても顕現させられる。ただし、魔神がダメージを受けると蒸気と共に甲冑の継ぎ目から火の玉が噴出して地上へ落下してくる性質があり、その射程範囲は数キロメートルに及ぶため庇護すべき民衆すらも危険にさらしてしまうという本末転倒な欠点を抱えている。 発動条件自体は非常に厳しいが、アイーシャの場合は《女王の呪縛》のおかげで発動難易度が下がっており、『時の門』のような特異点を利用できる状況ならば、過去に魅了した人々に頼むことで簡単に発動できる。
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