雨 文化・生活

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 21:36 UTC 版)

文化・生活

歌川広重『名所江戸百景』

雨の概念や雨に対する考え方は、その土地の気候によって様々なものがある。イギリスドイツフランスなど西洋の温暖な地域(西岸海洋性気候の地域)では「雨」を悲しいイメージで捉える傾向が強く、いくつかの童謡にもそれが表現されている。

一方、雨が少ないアフリカ中東中央アジアの乾燥地帯などでは、雨が楽しいイメージ、喜ばしいものとして捉えられることが多く、雨が歓迎される。

民俗

古来より人は、恵みをもたらす半面災厄をもたらす雨を、崇拝すると同時に畏怖していたと考えられる。端的な例として、ノアの洪水のみならず、世界の破壊や創造をもたらす洪水神話は世界各地に存在する。洪水神話は、雨の破壊性と創造性の2つの面を象徴していると考えられる[50][51]

また、世界の多くの神話や伝承において雨は、至高神、天神、雷神の活動の結果としてもたらされると解釈されている。メソポタミア神話の天候神アダドヒッタイトの天候神テシュブ、フェニキアの嵐の神バアルは天候を支配し雨や洪水を司るとされ、神の怒りが洪水や干ばつの原因だとして恐れられた。ギリシア神話では、全能の神ゼウスが雷を武器として他の巨人や神々と戦う際に雨が降るとされた。インド神話では、王インドラが雷神でもあり、悪竜ブルトラを退治することで川に水を取り戻し、田畑を干ばつから救ったとされる。日本神話では、スサノオヤマタノオロチを倒した際にその尾から出た天叢雲剣が雲を司る神器とされる。スサノオが高千穂峰に降りた天孫降臨の際には、雨と風がもたらされたと伝えられる[50][51]

さらに、天を、大地をとし、両者の交わりによって雨が降り大地に実りがもたらされるという、天父地母の信仰も広く見られる[50]

水辺に生息するカエルヘビなどの動物はしばしば、水神や水神の化身や家来とされたり、雨とかかわりの深いものとされている。ヨーロッパでは、ある種の昆虫の活動を雨の前触れとする伝承が広く見られる[51]

雨と関わりの深い農耕や牧畜を行う民族・部族では「雨乞い」の習俗が存在する。雨への依存が大きいアフリカの農民や牧畜民では、雨乞いを行う雨乞師の社会的地位が高いという特徴がある。雨乞いの儀式には広く水や煙、鉦などが用いられるが、これは水が雨、煙が雲、鉦が雷鳴を象徴する類感呪術であると考えられている。一部では、特徴的な形状の自然物を「雨石」や「雨の葉」などの神聖な事物として祀る習俗もある[51][50]。これに対し、長雨の終息を祈る「日乞い」の習俗も存在するが、雨乞いほど多くはない[3]

日本では、雨はそれ自体神格化されず、水神や龍神が司るものとされる。そして、神の出現の際には、神威の現れとして雨が降るとされる。これに通じるものとして、七夕などの節日神社祭礼の日には雨が降るという伝承も各地に伝わっている。田植えを終える目安とされる半夏生の日に降る雨を半夏雨と言い、田の神が天に昇るときの雨だとされている。また、歴史的に水田稲作が盛んであることから農民は雨に強い関心を抱いており、正月節分における天気占いや雨乞いの儀礼が各地で行われてきた[3][51][50]

一方、大雨による洪水や山崩れを蛇身と化した水神のしわざだとする伝説や、激しい夕立や竜巻を龍神の昇天だとする伝承がある。そのほか、雨の夜には人魂幽霊が現れやすいともされている[50]

雨は文化的モチーフにもなっている。季節を感じさせるものとして四季それぞれの雨に対する感性が大きく異なり、古来より雨は多くの文学や芸術のモチーフに叙情的に描かれ、江戸時代の浮世絵版画においては歌川広重が交差する線の表現など多様な雨の表現を開拓している。

雨による活動の制約

雨により、人間の活動が制限されることもある。雨の日に外出するときには、レインコートなどの雨具を持参し身に付ける。野外で予定されていた行事が、雨天で中止になったり変更される例はよく見られる。ただし、「少雨決行」のように弱い雨の場合には雨天に関わらず行事が行われる場合がある。

なお、類人猿においてもこのようなことがあり、雨の日は活動が制約される。彼らは雨よけのために木の枝などを集めて屋根のようなものを作ることが知られている。

雨の表現

日本は雨が多く四季の変化に富み、雨に関する語彙、雨の異名が豊富であるとされる[50][51]

雨の強さや降り方による表現
霧雨 霧のように細かい雨。雨粒の大きさが0.5mm未満の雨(気象庁の定義)。
小糠雨(糠雨) 糠のように非常に細かい雨粒が、音を立てずに静かに降るさま。
細雨 あまり強くない雨がしとしとと降り続くさま。
小雨 弱い雨。あまり粒の大きくない雨が、それほど長くない時間降って止む雨。
微雨 急に降り出すが、あまり強くなくすぐに止み、濡れてもすぐ乾く程度の雨。
時雨(しぐれ) あまり強くないが降ったり止んだりする雨。
特に晩秋から初冬にかけての、晴れていたかと思うとサアーッと降り、傘をさす間もなく青空が戻ってくるような通り雨を指す。
俄雨(にわかあめ) 降りだしてすぐに止む雨。降ったり止んだり、強さの変化が激しい雨。夏に降る俄雨は夕立、狐の嫁入り、天照雨などと呼ばれる。
肘かさ雨驟雨(しゅうう)と同義。
地雨 あまり強くない雨が広範囲に一様に降るさま。俄雨に対し、しとしと降り続く雨で、勢いが急に変化するのは稀。
村雨 降りだしてすぐに止む雨。群雨、業雨などとも書く。地方によっては「鈍雨」(とんぺい)」とも呼ばれる。
村時雨(むらしぐれ) ひとしきり強く降っては通り過ぎて行く雨。降り方によって片時雨横時雨、時間によって朝時雨夕時雨小夜時雨と分ける。
片時雨 ひとところに降る村時雨。地雨性の村時雨。
横時雨 横殴りに降る村時雨。
涙雨 涙のようにほんの少しだけ降る雨。また、悲しいときや嬉しいときなど、感情の変化を映した雨。
天気雨 晴れているにもかかわらず降る雨。
通り雨 雨雲がすぐ通り過ぎてしまい、降りだしてすぐに止む雨。
スコール 短時間に猛烈な雨が降るさま。熱帯地方で雨を伴ってやってくる突然の強風に由来する。
大雨 大量に降る雨(一般的な認識)。大雨注意報基準以上の雨(気象庁の定義)。
豪雨 大量に降る激しい雨(一般的な認識)。著しい災害が発生した顕著な大雨現象(気象庁の定義)。
雷雨 雷を伴った激しい雨。普通は短時間に激しく雨が降る場合が多い。
風雨 風を伴った激しい雨。
長雨 数日以上降り続くような、まとまった雨。
季節による表現
春雨(はるさめ) 春にあまり強くなくしとしとと降る雨。
地雨性のしっとりとした菜種梅雨の頃の雨を指す。桜の花が咲くころは、花を散らせるので「花散らしの雨」とも呼ばれる。
菜種梅雨 3月から4月ごろにみられる、しとしとと降り続く雨。
菜の花が咲くころの雨。特に三月下旬かる四月にかけて、関東から西の地方で天気がぐずつく時期を指す。
五月雨(さみだれ) かつては梅雨の事を指した。現在は5月に降るまとまった雨を指すこともある。
また、五月雨に対して、この梅雨の晴れ間を五月晴れというが、5月の爽やかな晴天をさすことがある。
走り梅雨 梅雨入り前の、雨続きの天候。
梅雨(ばいう、つゆ) 地域差があるが5月 - 7月にかけて、しとしとと長く降り続く雨。
暴れ梅雨 梅雨の終盤に降る、まとまった激しい雨。「荒梅雨」とも言う。
送り梅雨 梅雨の終わりに降る、雷を伴うような雨。
帰り梅雨 梅雨明けと思っていたところに再びやってくる長雨。「返り梅雨」、「戻り梅雨」ともいう。
緑雨 新緑のころに降る雨。翠雨の一種。
麦雨 麦の熟する頃に降る雨。翠雨の一種。
夕立 夏によく見られる突然の雷雨。あるいは単に夏の俄雨を指す。午後、特に夕方前後に降ることが多い。白雨(はくう)ともいう。
狐の嫁入り 夕立の、特に日が照っているのに降る雨をさす。天照雨(さばえ)などともいう。
秋雨(あきさめ) 秋に降る、しとしとと降る雨。特に9月から10月にかけての長雨をさす。秋雨前線によって起こり、台風シーズンの特徴。秋霖(しゅうりん)。
秋時雨 秋の終わりに降る時雨。
秋入梅 秋雨。秋雨の入り。
液雨 冬の初めの時雨。立冬から小雪のころの時雨。
寒九の雨 寒に入って(小寒を寒の入りという)9日目の雨。豊年の兆しとされる。
寒の雨(かんのあめ) 寒の内(大寒から節分まで)に降る雨。
山茶花梅雨 11月から12月ごろにみられる、しとしとと降り続く雨。山茶花が咲くころの雨。
氷雨 冬に降る冷たい雨。のことを指すこともある。
淫雨 梅雨のようにしとしとと長く降り続き、なかなか止まない雨。
その他の区分からの表現
私雨(わたくしあめ) ある限られた土地だけに降る雨。転じて個人の利得の意もある。
外待雨(ほまちあめ) 局地的な、限られた人だけを潤す雨。
翠雨(すいう) 青葉に降りかかる雨。時期によって緑雨麦雨、草木を潤す雨という視点で甘雨瑞雨と区別する。
甘雨(かんう) 草木を潤す雨。翠雨の一種。
瑞雨(ずいう) 穀物の成長を助ける雨。翠雨の一種。
慈雨 恵みの雨。少雨や干ばつのときに大地を潤す待望の雨。

比較的新しい雨に関する言葉も生まれている。明確な定義はないものの、微妙に異なった意味で使用されている。

集中豪雨 限られた場所に集中的に降る激しい雨(一般的な認識)。警報基準を超えるような局地的な大雨(気象庁の定義)。局地的豪雨。局地豪雨。
ゲリラ雨・ゲリラ豪雨 限られた場所に短い時間集中的に降る、突然の激しい雨。
短時間強雨 短い時間に集中的に降る強い雨。
ゲリラ雷雨 雷を伴ったゲリラ雨・ゲリラ豪雨。

注釈

  1. ^ 大きな雨粒は変形するため、それを球形に換算した半径のこと。

出典

  1. ^ 岩槻、p216
  2. ^ 気象観測の手引き、p61
  3. ^ a b c d e f g h i j k l グランド現代大百科事典、大田正次『雨』p412-413
  4. ^ 荒木、p42-43
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 世界大百科事典、内田英治『雨』p475-476
  6. ^ a b 荒木、p75-77
  7. ^ a b 岩槻、p112, p118-120
  8. ^ Robert Fovell (2004年). “Approaches to saturation (pdf)”. University of California in Los Angelese. 2015年4月7日閲覧。
  9. ^ 岩槻、p180-184
  10. ^ 小倉、p78-88
  11. ^ 荒木、p116-128
  12. ^ 小倉、p81, p85-92
  13. ^ 荒木、p77-82, p128-129
  14. ^ 武田、p31-34
  15. ^ 小倉、p87-88, 98
  16. ^ a b c d 荒木、p132-148
  17. ^ a b 小倉、p92-99
  18. ^ 気象観測の手引き、p61
  19. ^ 小倉、p86, 89
  20. ^ 荒木、p77-82, 129-131
  21. ^ 荒木、p23-38
  22. ^ 荒木、p103-104
  23. ^ 雨の強さと降り方 平成12年8月作成、平成14年1月一部改正」気象庁、2015年4月18日閲覧
  24. ^ a b 天気予報等で用いる用語 降水
  25. ^ 武田、p139-140, 142-153
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  30. ^ a b c 荒木、p77-82
  31. ^ a b 気象観測の手引き、p61
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  36. ^ a b c 地球と宇宙の化学事典、p154
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  52. ^ 金星」、宇宙航空研究開発機構 宇宙情報センター、2015年4月20日閲覧
  53. ^ 土星の衛星」、宇宙航空研究開発機構 宇宙情報センター、2015年4月20日閲覧



雨…

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/18 15:02 UTC 版)

雨…」(あめ)は、1978年11月に発売された、小柳ルミ子の27枚目のシングルである。




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