大型自動車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/24 14:30 UTC 版)
免許制度
かつての自動車免許には、大型免許と言う区分は存在せず、普通自動車免許(以下「普通免許」と略記)を持っているだけで大型自動車相当の自動車を運転することができたが[注釈 1]、1956年8月1日に大型免許と普通免許に区分され、普通自動車のうち乗車定員11名以上の自動車[疑問点 ]または最大積載量5,000 kg以上の貨物自動車は普通免許で運転することができなくなった。このとき普通免許を所持していた者は第二種運転免許の新設と合わせて大型二種免許に免許区分が変更された[注釈 2]。ただし、道路交通取締法施行規則の運転できる自動車の種類では大型自動車ではなく普通自動車のままである。1960年の道路交通法制定時に大型自動車の区分が明記された[注釈 3]。
当初は18歳以上で普通自動車の運転経験がなくても直接大型から受験できたが、相次ぐ大型自動車の事故により(猿投ダンプ事故の項目も参照)、1967年試験方法を改正し、大型免許の受験可能年齢を20歳以上で、なおかつ普通免許、大型特殊免許のいずれかを取得後2年以上の運転経験をもつ者に限定することとなった[注釈 4]。
2007年の法令改正施行により中型自動車免許(第二種を含む)(以下「中型免許」と略記)が新設され、大型免許(第二種を含む)を必要とする車両規模の下限が、改正前の特定大型車(政令大型車)に相当するものに変更された。この(新)大型免許については、21歳以上で3年以上の運転経験を持つ者が受験資格(自衛官を除く[注釈 5])となるが、これは、改正前の特定大型車の運転条件と同じである。
そのため、改正前に大型免許(第二種を含む)を受けた者が(新)大型自動車を運転する場合、特定大型車の運転資格を満たす必要があった。この改正で試験車両が試験場、指定自動車教習所いずれも変更となり、大型一種免許では6トン車(4トン車サイズで5.5 - 7トン積載、全長約7 - 8 m)がそれまで多く使われていたがフルサイズ10トン車(全長約12 m)の大型車両に変更となっている。また試験場での受験でもそれまでは場内(構内)のみの試験であったが、改正後は場内(構内)試験に合格して大型仮免許の交付を受けてから(大型免許取得3年以上か大型二種免許取得の経験者、あるいは技能教習に従事する指定自動車教習所の教習指導員に同乗してもらい)1日2時間の路上練習5日以上が必要となった。この路上練習が終わってからでないと路上試験[注釈 6](構内+公道)を受けられない。路上練習に必要な大型免許所有者と大型車両を揃える事は簡単ではなく、このため改正前と比べて試験車両の車体サイズが大きくなったことと併せて試験のハードルが高くなった。
なお、今回の改正前に普通免許と大型免許を所持していたドライバーは更新時に免許証が大型+中型となり、免許条件に「中型車は中型車 (8 t) に限る」という表示になる。この場合、大型免許がある以上は「中型車 (8 t)」以外の中型車でも問題なく運転できる。またこのドライバーが更新時の適性検査で深視力などに不合格の場合は、大型のみが取り消しとなり中型自動車8t限定免許を取得することができる。
反対に中型免許施行後に(新)大型免許を取得した場合、免許証欄は同じ表記となるものの、「中型車は中型車 (8 t) に限る」の表示が消える(既得権放棄)。また、改正前の大型免許所持者が中型第二種や大型第二種免許を取得した場合も、8 t未満限定が解除される(上位免許取得による既得権放棄のため)。そのためこれらのドライバーが更新時の適性検査に不合格になった場合、合格基準が同一である中型免許、凖中型免許も不合格(取消)となり、車両総重量3.5 t未満まで運転可能の新普通免許が交付される。
同様に2017年の改正による準中型免許新設の際にも、改正前に普通免許と大型免許を取得した場合、免許証欄は、準中型 + 大型となるが、免許条件に「準中型で運転できる準中型車は準中型車 (5 t) に限る」の条件が付与され、普通二種+大型二種を取得した場合、準中型に二種免許は存在しないため、中型二種免許+大型二種免許となり、免許条件には「中二で運転できる中型車はなく、準中型車は準中型車 (5 t) に限る」が付与される。上位免許を取得したときには中型5t限定と同様に前述の条件は解除される。
2022年5月13日から、大型免許、中型免許、二種免許の受験資格が緩和され、一定の教習を修了することにより、19歳以上で、かつ、普通、準中型免許等を受けていた期間が1年以上あれば受験することができるようになった。
大型免許(第二種含む)で運転できる車両は、牽引免許が必要な牽引自動車[注釈 7]を除く四輪車(具体的には中型自動車、準中型自動車、普通自動車)および50 cc以下の原動機付自転車、小型特殊自動車である。大型自動二輪車と大型特殊自動車は「大型」という名称が入っているが大型免許では運転できない。前者は大型二輪免許のみで運転可であり、後者は大型特殊免許でのみ運転可である。
注釈
- ^ 1933年11月1日から小型免許が存在している。(1948年に小型自動車(第一種)、1949年に小型自動四輪車免許に名称変更。
- ^ 道路交通取締法施行令の一部を改正する政令(昭和31年政令第255号)附則第2項第1号。ただし、この時点で満21歳未満の者は大型免許に免許区分が変更され、21歳になった時点で大型二種免許に変更された。
- ^ 乗車定員30名以上、車両総重量8,000 kg以上、最大積載量5,000 kg以上で特殊自動車、自動三輪車、自動二輪車、軽自動車以外の自動車(道路交通法施行規則第2条(1960年12月20日施行))
- ^ ただし、自衛官に限り特例で19歳以上で普通自動車の運転経験がなくとも受験可能とされた。この場合、当該自衛官は一定の年数を経るまでは自衛隊用でない一般の大型自動車は運転できない。
- ^ 自衛官のみ特例で19歳以上である。これは、自衛隊で使用されている73式大型トラックが法改正後は本来中型免許の範囲となるところ、部隊運用の関係上[疑問点 ]特例により自衛隊自動車訓練所で教習する場合に限り改正後も大型免許として取得するためである。この場合、免許の条件欄に「大型車は自衛隊用自動車に限る」と記載され、民間の大型自動車に乗るためには自衛隊車両の限定解除を公安委員会で受ける必要がある。
- ^ 公道試験が導入されたのは平成13年4月受講開始者以降であり、平成13年3月末受講開始者は構内のみの試験で2種を含む大型免許を取得できた。
- ^ トレーラーが「重被牽引車」(車両総重量が750 kgを超えるもの)である場合。
出典
- ^ 基本的な料金車種区分表 ドラぷら(東日本高速道路が運営)
大型自動車と同じ種類の言葉
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