井上喜久子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/21 19:09 UTC 版)
いのうえ きくこ 井上 喜久子 | |
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2018年 東京ゲームショーにて | |
プロフィール | |
本名 |
熊谷 喜久子 (くまがい きくこ)[1] (旧姓:井之上[2][3]) |
愛称 | お姉ちゃん[4][5]、17才[5]、きっこさん[5] |
性別 | 女性 |
出生地 | 日本・東京都[6] |
出身地 | 日本・神奈川県横須賀市[6] |
生年月日 | 1964年9月25日(59歳) |
血液型 | O型[7][8] |
職業 | 声優、ナレーター[9]、歌手 |
事務所 |
オフィスアネモネ[7] ベルベットオフィス(ナレーション部門のみ)[7] |
配偶者 | あり |
著名な家族 | 井上ほの花(長女) |
公式サイト | 井上喜久子 オフィシャルサイト @manbow |
公称サイズ(時期不明)[10] | |
身長 / 体重 | 164 cm / ― kg |
声優活動 | |
活動期間 | 1988年[11] - |
ジャンル | アニメ、ゲーム、吹き替え、ナレーション、ラジオ |
デビュー作 | 女学生(『ハーイあっこです』)[11] |
音楽活動 | |
活動期間 | 1994年 - |
ジャンル | J-POP、アニメソング |
職種 | シンガーソングライター |
レーベル | ポニーキャニオン |
共同作業者 | ワイルドストロベリー |
経歴
伝記の記載を年譜形式のみとすることは推奨されていません。 |
- 1988年
- 声優として初めてテレビアニメ『ハーイあっこです』女学生2役[13]とOVA『あいうえおアニメ 世界名作童話全集』えいごのおねえさん役[14]を演じる。
- 1994年
- 声優グランプリ創刊号の表紙を國府田マリ子とともに飾る。
- 1995年
- 岩男潤子と声優ユニット「おさかなペンギン」を結成。
- 1996年
- 5月に高校時代の同級生と結婚[注 1]。
- 1998年
- 2月に長女・井上ほの花を出産。長女はラジオなどで「ほっちゃん」と呼ばれる。
- 1999年
- 10月1日から、それまで所属していた江崎プロダクション(現:マウスプロモーション)[2]を離れフリーになる。後に実姉と共に個人事務所オフィスアネモネ[注 2]を設立[注 3]。
- 2003年
- 1月から、ナレーション部門のみベルベットオフィスに所属。
- 2007年
- まるたまり、ピアニストの小笠原純子と共にユニット「ワイルドストロベリー」を結成。アニメソングを大胆にアレンジした音楽活動を行っている。
- 2010年
- 3月6日第4回声優アワードにて、助演女優賞を受賞。
- 2016年
- 2月16日第10回声優アワードにて、高橋和枝賞を受賞[15]。
- 2022年
- 9月24日初の自叙伝『 井上喜久子17才です「おいおい!」』を主婦の友社より発売した。この本についてロングインタビューで3部構成となる文春オンラインで10月20日公開された[16]。
- 10月20日この日自身のTwitterにて、17歳と1万5000日を迎える[17]。
人物・特色
- 声優になるまで
- 東京都で生まれる[6]。元々は東京で生活をしていたが、幼稚園の年長頃に神奈川県横須賀市に引っ越しをする。小・中・高、短大生の頃まで含めても、表現することにまったく興味がなかったが、本を読んで想像することは好きだったという[18]。姉は宝塚のファンで演劇部に所属していたこともあり、一緒に舞台を観に連れて行ってもらったりしていた[18]。しかし影響されて「自分から表現したい」と思ったりすることはまったくなかったという[18]。井上の最古の記憶は、母親と離れるのが嫌で幼稚園に行くことを拒否して泣いていたことだというが、その在園時のクリスマス会で、キリスト降誕の舞台劇に登場する女神を演じたのが、人生初の芝居経験だったという。子供の時はぼーっとした子供で、マイペースで、読書好きで空想して遊んでいたという[18]。小学校の低学年から中学時代までは外で遊ぶことが多く、友達と池でザリガニ釣りをしたり、野原に作った秘密基地で、ままごとや人形ごっこに興じていたが、実姉ともよく遊び、姉の友達とよくケイドロ(井上の住んでいた地域では『どろじゅん』と呼んでいた)をしていたという。ままごとでは母役が多かったという[19]。そんな遊びの中で近所の駄菓子屋へ通うようになり、駄菓子屋が本屋の仲介もしていた関係から、小学1 - 2年の頃に、母親が世界名作童話集を定期購読で買い与え、毎月届く童話を読むことが井上の日課となった。井上は童話を読む際、無意識に発声して読んでいたといい、その頃から声優を目指す予兆があったと自著で語っている。小さい頃に職業としての声優があることを知り、なんとなく「面白そうだな」という漠然とした憧れはあったという[3]。中学生の頃は、ピンクレディーが好きであり、姉と2人で一緒に歌って、踊っていた[18]。その頃の将来の夢はテレビドラマで流行していたスチュワーデス、学校教師、花屋、嫁のように女子が憧れる職業になりかたったといい、小学4年生の時に1ヶ月くらい入院し、お世話になった看護士が優しく看護士になりたいとも考えていた[18]。中学生まではピアノをしていたが、講師が亡くなってしまったため、辞めたという[18]。中学時代はギター部、高校に入ってからは『エースをねらえ!』に影響されて軟式テニス部に入部するも[18]、向いてないと自覚して3カ月で退部、一転して帰宅部となり、文学に読み耽るようになる。文学少女になるきっかけは三島由紀夫の『仮面の告白』で、そこから石川啄木や太宰治を好んで読むようになった[13]。高校生になってからは、本が好きなため、漠然と図書館司書、国語の教師になりたいなと思うようになった[20]。高校時代は単独行動が多く、横須賀のジャズ喫茶で読書をしたり、授業後にふらっと海で泳いだりしていたという。高校3年になると外の世界に興味を持ち、生まれて初めてシェーキーズでバイトを経験し、店長から「笑顔がとても良い」と褒められて自信をつけ、そのバイト先で知り合った友人と2年間、水曜ロードショーで放映された『ビッグ・ウェンズデー』に影響されてサーフィンに打ち込むなど、刺激的な生活を送る[21]。しかし、将来の道筋を考える重要なタイミングであった高校3年生の時に、大学に進学して勉強したい気持ちにはなれず、かと言って就職する実感も湧かず、自分でもよくわからないくらい何もできない、スランプを味わう。高校卒業後は、別に秘書になりたかったわけではないのだが、本人曰く「何となく」秘書科のある専門学校に進学したものの、「やっぱり勉強がしたいな」と思って長続きせず、半年後[22]に辞める。その後は教員となるために、短期大学で中学校の教員免許(国語)と、図書館司書の資格を取得したが[20]、教育実習先の中学校で、生徒に見くびられ放題だったことに愕然とし、授業中に男子生徒数人が教室でバドミントンを始めた際に注意できなかったことが決定打[23]となり、教師になることを挫折する[13][24]。
- 教育実習は、就職活動の一環でもあっただけに、友人たちが仕事が決まる中で、井上は教師に挫折したことから将来に対して悩んでいたが、計算ができず、家計簿をつけることも事務職にも向いていない[25]と不安を募らせていた。その時期に『アタックNo.1』の再放送を見て、その放送回が非常に感動できるエピソードであり、大人の自分をこんなに感動させたことに感銘を受け、頑張っている鮎原こずえの姿に心を打たれていた時、「これって誰がしゃべってるんだろう?」とふと思い、「この声を出しているのは声優さん? 声優さんっていいかも……!!」と雷に打たれたような衝撃だったといい[24][26]、そして姉が持っていた雑誌『an・an』の広告欄にあった東京アナウンスアカデミーの声優コースの募集[27]を見て、すぐに電話して声優を志す[28]。その後、昔から好きな声の人物である増山江威子がいたことに気付いたという[26]。子供の頃から普通に色々なアニメを見ていたため、声がテレビから流れるたびに、「あー好き、この人の声好き!」と思っており、声優の勉強を始めてから、その「好き」が繋がったという感じだったという[26]。増山とはプロになってから、仲良くさせてもらっているという[26]。久川綾が増山と同じ青二プロダクション所属なため、井上のことを紹介してもらい、毎年皆の誕生日にお祝いで食事に行ったりするくらい、仲良くさせてもらっているという[26]。井上曰く増山は会うたびに、たくさんの愛をくれる、「永遠に憧れの人」、と語る[26]。短大卒業と同時に恵比寿にある同校の1年コースに入所[29]、授業料は全て近所の花屋のバイト料で賄い、親の援助を受けなかったが、両親は全く反対しなかった[30]。また井上の友人も「きっこ(井上)は会社員じゃないから」と、喫茶代を全額立て替えるなど、応援してくれたという[31]。地元の友人に伝えた時は、きょとんとしていたが、あまりたくさんの人物には話していなかった[32]。その後、しばらくは、ほとんどの人物が就職していたことから友人に会うと、皆ご飯をごちそうしてくれたという[32]。入所した時は、「絶対に声優になろう」と決めていた[32]。一度挫折しているため、ここで挫折したらもうおしまい、崖っぷちであり、なおさら声優への思いが急激に高まったような気がしていた[32]。その時に「ここでダメだったらこれから先は何をやってもダメだ」のような気持ちになり、養成所ではものすごく気合いを入れて授業を受けていた[24]。「クラスの中でいちばん声優になりたいと思っているのは私だ!」くらいのことは考えていた[24]。クラス全員が声優を目指していたなかで、「みんなよりうまくなるために」と思い、色々工夫しており、たとえば先生から「毎日1回『外郎売り』を朗読しなさい」と言われていたところ、「よし、私は毎日3回やろう。しかも1回ごとに声の高さを変えてやろう」と思っており、発声練習は周囲の迷惑になることから家ではなかなかできなかった[24]。その時にバスタオルを巻いた物を口に当てて声を抑えながら毎日続けており、短大時代までは姉から舞台、芝居に誘われても行かなかったくらい役者の世界に興味がなかったが、そんなことを続けていたため、両親、姉は「どうしちゃったんだろう、この子は」と思ってたんだと語る[24]。当時はヘコむことばかりで、日記帳を読んだところ笑ってしまうくらい、毎日落ち込んでいた[32]。しかし落ちているからこそ、這い上がる自分がおり、「ただがむしゃらに、とにかく頑張ろう」と思ったという[32]。週1の夜学[30]レッスンを受けて課程修了後、オーディションを受けて[33]江崎プロダクション(現・マウスプロモーション)の養成所にさらに2年通う[24]。養成所時代は、先生の述べていたことを素直な心で受け止められたことは、とてもよかったと語る[32][34]。養成所時代に講師を担当した納谷六朗から「台本チェックには書き直せるシャープペンシルを使うと良い」、「台本チェックは必ず鉛筆で」、「ボールペンで書くと台本がどんどん汚れて、読みにくくなるから」と助言され、今でも台本のチェックにシャープペンシルか鉛筆を用いている[33][34]。ある時、ふと周囲を見渡していたところ、鉛筆でチェックしている人物は半分もおらず、その先生が言った一言を信じ、「ここでやってきているんだな」としみじみ感じていた[34]。2011年時点では、ラジオの時はキラキラしたかわいいペンを使って楽しんだりしているが、台本チェックは必ずシャープペンシルで「本当にいいことを教わったなぁ」と思っていたため、ある時、仲良くなった新人にこの話をしていた[34]。その場では「やってみます!」と言っていたが、あとでその人物を見ていても、鉛筆を使っておらず、それはそれでショックであった[34]。幼なじみにはいまだに「喜久子が声優をやっているっていうのが不思議でしょうがない」、「声も小さいほうだったし、舌足らずだったよね」と言われるという[34]。養成所時代に才能が見えてないはずだが、一生懸命自分なりにレッスン方法を編み出したり、先生にかわいがってくれて、「少しずつどうにか歩んで来れたのかな」と語る[34][35]。養成所時代から色々仕事をくれたり、収録などへ連れて行ってくれていたため、周囲の友人からは「喜久子ちゃんは大丈夫だよ」と言われたりしていた[35]。養成所卒業と同時に江崎プロダクションにジュニアとして所属する[24]。その当時、ネガティブなタイプで「自分はダメだ」と思ってしまう人物であったことから、合格した時は夢のような気持ちであったという[35]。
- 声優デビュー
- 養成所に入所してから数か月後にTBSの『報道特集』のボイスオーバーで声優デビュー[36]。スタッフに「声優の方、こちらへどうぞ」と言われたその時の嬉しさは2011年時点でもはっきり覚えており、第三者から「声優」と呼ばれたことが、嬉しかったという[32]。当時は凄く緊張しており、神奈川に住んでいたため、東京にも慣れておらず、その仕事も納谷六朗が、新橋SL広場で待ち合わせて連れて行ってくれたくらいだったからである[32]。そんなふうに親心のように周囲に支えてくれてから、なんとか仕事をこなせたんだと語る[32]。アニメは『ハーイあっこです』の女学生2[37]、吹き替えは映画『スペースキャンプ』の端役が初出演だった[38]。事務所に所属してから、1989年に放送を開始する『らんま1/2』、『ミラクルジャイアンツ童夢くん』で2本のレギュラーも決まった[24]。当時は『らんま1/2』の天道かすみ役のオーディションに受かり、同役でブレイクしたが、吹き替えの仕事が多かったため、アニメ特有の原音のない無音中の芝居に苦戦し、台本も当日渡される状況下の中、パニックの状態で演じていたが、同作品の収録現場で、周囲の声優たちから、キャラに関連付けて「お姉ちゃん」と呼ばれるようになり、これを気に入って、後の愛称となる[39]。日髙のり子、高山みなみに「お姉ちゃんお姉ちゃん、ここはゆっくりだよ」、「ここは口パクがこうだよ」など、たくさん教えてくれて2011年時点では「本当にありがたかったな」と思うという[35]。当時は勘の悪い新人で、収録では毎回落ち込んでいた[35]。『らんま1/2』を収録していたスタジオは、東京タワーのふもとを通って通っていたため、落ち込んだ帰り道は、東京タワーを見上げて「やっぱり高いもののふもとはこんなに太くて、がっちりしてるんだ。やっぱり基礎があるから高くなれる。基礎は大切なんだな」などと思ったりしながら帰っていたという[35]。あまりにも落ち込んでいたところ、帰り道が同じであった佐久間レイが、電車で励ましてくれたり面白い話をたくさんしてくれて、元気を取り戻し、次の週はのほほんと収録してしまったり、そんな繰り返しであった[35]。しかし、自分の憧れの世界に入ることができたため、スタジオに行くのは毎週嬉しかったという[35]。デビュー当初は、地声的に男の子役が適任と考え、事務所にその旨を要望するも、「女の子で売った方が良い」と諭され[40]、デビューしてから数年間は「穏やかなお姉さん」「優しいお母さん」役、『ああっ女神さまっ』のベルダンディーのような清楚な女性役が多かったが[41]、1990年代後半頃からは少年役や、強い女性、気性の荒い悪役などもこなすなど、役幅が広がっている。
- ナレーターデビュー
- 2001年頃に、アニメ『キャプテン翼(第3作)』の主人公の翼(幼少期)を演じた際、朝日新聞のCMナレーションをキャラ声で歌う仕事があり、企業名の部分を担当するナレーターの垂木勉と同日収録となり、当時、垂木に同行していたベルベットオフィスの社長から直々にスカウトされ、ナレーションのみを業務提携することになったが、井上が個人事務所であったため、実現できたのだという[42]。現場での台本渡しによる1発録りや、視聴率が上がらないとナレーターが真っ先に代えられるなど、ナレーター業界の厳しさに驚きつつも、ベルベットオフィスの社長から「ナレーションは30歳を過ぎないと説得力が出ないので、年齢は高いほど良いです」と言われ、希望を感じたという[43]。
- 仲の良い声優
- 『らんま1/2』で、芝居の助言や励ましの言葉を送り続けた日髙のり子と佐久間レイを恩人と慕っており、後年に出版した自著にて「心からの『ありがとう』の気持ちでいっぱいです!」と感謝の言葉を記している[44]。同じく『らんま1/2』で共演していた高山みなみとは、2010年時点でも付き合いをさせてくれるという[24]。
- 1990年代は冬馬由美、久川綾と仲が良く、イベントやライブでの共演も多かった[45]。國府田マリ子とは『ママレード・ボーイ』で共演して以来の親友である。
- 憧れの先輩声優に、小山茉美を挙げており、井上がヒロインを演じた『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』で共演できた時は、とても嬉しかったと語っている[要出典]。また後輩声優の内田真礼は、目標とする人物に井上を挙げている[46]。
- 音楽CD・トークCD
- 1990年「魔獣戦士ルナ・ヴァルガー」のキャラクターソングで初めて歌う仕事を経験する[47]。1994年「優美なおさかな」でソロデビュー以降、オリジナルアルバム7枚、シングル2枚、ベストアルバム3枚をポニーキャニオンから発売している[48]。また、1996年から『月刊お姉ちゃんといっしょ』を同レーベルより毎月発売するなど、個人名義でのトークCDの発売も多い。なお、キャラクターソングについてはソロやユニット含め300曲以上のリリースがある。本人が声優を始めたばかりの頃は声優が歌を歌うことが定番とは言い切れなかったため、歌を担当させてもらえることは当時の井上にとっては夢のようなことであった[49]。親友の國府田と比べると歌手活動はあまり大々的には行ってきておらず、2017年の國府田との対談ではそれについて触れている[49]。
- 永遠の17歳
- 自らを「(永遠の)17歳」と称しており[50]、周囲に「おいおい!」とツッコミを入れさせることまでがパターンとして定着している[51]。元ネタは、1998年から1999年まで放送された文化放送のラジオ番組『かきくけ喜久子のさしすせSonata』の冒頭挨拶で、相方だった声優の山本麻里安が「山本麻里安、16歳です」と挨拶し、「井上喜久子、16歳です。おいおい」の挨拶が続く、番組の台本に沿った台詞であったが、番組中に山本が17歳になり、それに合わせて井上の台詞も17歳に変更された。しかし山本が18歳になった際、井上は「17歳という言葉には、16歳にも18歳にもない甘酸っぱい響きがある。17歳は特別な感じがする」と考え、17歳のままでいることを決意し、番組の公開録音や、番組とは関係のない媒体の挨拶でも、「井上喜久子、17歳です」と発言するようになった。そんなある日、アニメ『舞-乙HiME』の収録現場にて、共演者だった声優の田村ゆかりが、「お姉ちゃん、私も17歳と言っていい?」と了解を求め、井上が快諾した際、「じゃあ17歳教に入って良いの?」と聞き返した。井上の記憶によれば、17歳教という言葉を初めて使ったのは田村ゆかりで、井上も面白いと感じて「入って、入って!」と入会を促したという。その数か月後に、田村とラジオ番組で共演していた[52]声優の堀江由衣から入会の問い合わせがあり、その後も、17歳のままでいる「井上喜久子、17歳です」という自己紹介を真似て「永遠の17歳」を宣言する声優たちが次々と現れたことから、「17歳教」は1つの生き方として確立することになった[53]。17歳教に入信する1つの目安として『ドモホルンリンクルが気になる頃』と挙げている[54]。「17歳教」は2008年の新語辞典「現代用語の基礎知識2008」(自由国民社)に収録された[55]。これが、女性声優を“生年非公開”(=夢の国の住人)とさせることに繋がっている。井上自身は「『17歳です』と言ってはいても、若作りをしたいわけではないし、若いことだけが素晴らしいとも思っていません」「若い時には乗り越えられなかった悩みも、年齢を重ねて経験が増えると解決できたりするので、いいことだなと思っています」「若い人が今つまらなくても、『諦めなければ、年を重ねてから楽しくなるよ』と言いたいです」と語っている[56]。また、収録帰りの電車で偶然一緒になった若本規夫から、健康管理についての助言を受けたことがきっかけで、鍛えることの大切さを知り、17歳の声を維持するために、発声練習や腹筋運動をあさイチの日課としている[57]。具体的には、起床後、最寄りの神社の方角に手を合わせて心を落ち着かせ、お湯を沸かして白湯をコップ一杯飲み、口を濯いでから腹筋と発声練習を15分行うルーティンを毎日行うことで、安定した生活を送れているという[58]。
- 家族
- 母親は、井上が「信じられないくらい優しい人」「この人は本当は天使様なのかも」と語るほど温厚な人物で、幼少期の井上に対して「いいのよ、ゆっくりで」「大丈夫よ」といつも穏やかに語りかけていたという[59]。
- 父親は、広告代理店に勤めるサラリーマンだったが、絵に描いたような真面目な性格で、早朝に会社へ電車で出勤し、退社するとまっすぐ家に帰って来て、家で酒を少し嗜むという生活を送っていたが、正月は必ず『春の海』をBGMに、家族全員が着物を着て、年始の挨拶をするイベントを行う習慣を持っていた。また、セミプロのジャズドラマーであり[18]、休日はジャズやムード歌謡、浪曲をレコードでかける音楽好きでもあり、井上が後にアニソンをジャズ風にアレンジするユニット『ワイルドストロベリー』を組むきっかけとなった[60]。
- 実姉は井上より3歳年上[61]で、井上が所属する事務所のオフィスアネモネの代表であり、井上のマネージャーも務めている。
- 長女・ほの花も同事務所に所属していて、17歳の誕生日を迎えた2015年には声優・歌手としてデビュー、さらに2017年には『異世界はスマートフォンとともに。』にて姉妹役で共演を果たしている(姉・オリガを喜久子が、妹・アルマをほの花がそれぞれ演じている)。2018年には、『パズドラ』(母・卯月佳乃を喜久子が、娘・卯月さくらをほの花がそれぞれ演じている)、『メルクストーリア - 無気力少年と瓶の中の少女』(妖精の国の春を統べる女王フロイレイダを喜久子が、その娘の王女サローディアをほの花が演じている)にて母娘役で共演を果たし、『邪神ちゃんドロップキック』でも第11話の「風船を木に引っ掛けた親子」のシーンにて親子役で共演をしている。
- 持ち役について
- 『らんま1/2』に登場する天道かすみ役については、オーディションを受けた際、可愛く声を作って演じていたが、音響監督の斯波重治から「その声は地声ですか?」と問われ、「地声です」と嘘をついて受かったことを今でも後悔しているが、その声で毎回収録に臨む内に、本当の地声がどれか分からなくなってしまったという[62]。
- 『ふしぎの海のナディア』に登場するメディナ・ラ・ルゲンシウス・エレクトラ役については、スタジオに貼られていたキャラクター絵を見た瞬間に演じてみたいと思った役柄で、当時、吹き替えの仕事で多く担当した秘書や弁護士、若い警官のような雰囲気で演じたのが上手くハマったという。特に第22話『裏切りのエレクトラ』は、新宿の収録スタジオで台本を渡された瞬間に読みたい気持ちが抑えられず、帰宅途中にデパートのトイレで先読みをして号泣し、帰宅後も号泣が止まらず、その感情のまま本番当日を迎えてしまったが、数多い経歴の中でも、自分の感情とキャラの感情、作画と台詞のタイミングが全て合っていた忘れられない収録回になったという[63]。
- 『ああっ女神さまっ』のベルダンディー役については、当初「こんなかわいい女の子は無理かも」と戸惑ったが、神様である以上、演技に神々しさを出さなければいけない反面、出し過ぎると近寄り難くなるため、そこに温かみを加えるバランスを常に意識していたという。そのため、リアルな人間にありがちな、喋る途中で声が裏返る、掠れる表現を一切しないことを心掛け、話す言葉に関しても、トーンや高さ、感情の入れ方を、一つひとつ、塗り絵の色分けのように細分化した上で演じるという細心の注意を払った結果、収録が終わるたびにドッと疲れが出たというが、10年以上関わる中で、TV放送の最終クール頃には、安心して演じることができるようになったという[64]。
- 『しましまとらのしまじろう』のお母さん役については、当初は母親ではなかったため、優しかった自身の母親のイメージで演じたため、ディレクターから「もっとちゃんと怒って。お母さんはそんなに優しく言わないでしょう」と指摘され、叱る演技をしっかり演じるよう心掛けるようになったという[65]。
- 『怪盗セイント・テール』の深森聖良役については、キャラ設定のシスターに今まで縁がなかった上に、説明台詞をしっかり言う難しい役どころで、いつも緊張しながら演じていたが、ある時、共演者の1人から「『が』が鼻濁音になっていない」と指摘され、当時ネガティブな性格だったために、パニックに陥ったこともあったが、2019年に原作25周年記念でイベントを主役の櫻井智と共演者の岡野浩介の3人でやった際、「ブルーレイで子供と一緒に観ています」と参加した当時の視聴者から告げられ、「アニメは生き続けている。尊いですね」「いつの時代も変わらない、女の子の夢が詰まっているんでしょうね」と後年語っている[66]。
- 『機動戦士ガンダム第08MS小隊』のアイナ・サハリン役については、オーディションで受かったが、OVAであったため収録が月1で、TVアニメのように毎週、役の気持ちを積み上げて、まとめていくことができず、キャラクターの髪もショートカットで、ロングヘアである自身と、役のシンクロが中々できずに苦労したが、主役を演じた檜山修之の熱量に驚愕し、「私も心を揺さぶられて演じることができました」と語っている[67]。また、収録当時は妊娠中で、その姿を見た同作品の後任監督であった飯田馬之介は、身重の井上に感化され、物語の結末を「自分的にはハッピーエンドだった」と述べている[68]。
- 『キャプテン翼(第3作)』の大空翼(少年時代)役については、デビューから13年目にして待ち望んでいた人間の男の子役だったが、作品のネームバリューに対してのプレッシャーも大きく、「楽しい」より「必死で」向き合った役であったという。元々、同じ音響制作会社の神南スタジオが担当した『真・女神転生デビルチルドレン』で、獣キャラクターの男の子役を演じた実績から、本作のオーディションを受け、役を勝ち取ったが、作品の特筆上、登場人物の多さから、演じる声優たちも多人数となり、主役ながら複数のマイクを移動して収録するマイクワークに苦労して、パニックを起こす状態にまでなったが、参加声優の1人だった高乃麗が気を利かせ、井上が専用に1本のマイクを使えるようマイクワークを変更させたことで、セリフに集中することができたと語っている[69]。
- 『サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜』のロベリア・カルリーニ役については、決め打ちのオーディションで役が決まったが、「巴里始まって以来の大悪党。懲役1000年」のキャッチコピーが書かれた設定資料とデザイン画に、思わず「この役、私がやるんですか?」と二度を見したという。プロデューサーだった広井王子は、外画の吹き替えでのシリアスな演技を参考に「行けるんじゃないか」「一人ぐらい変わり種を入れたかった」という気持ちから起用に至ったが、あまり出したことのない芝居に、当初はダメ出しも多く、収録は細かく丁寧に行われた。また本作品は、同キャストによる舞台を行うという特筆事項があり、オーダーメイドで誂えたコスプレ衣装に苦闘し、稽古では台詞よりも歩くことから始めなければならないほどだったが、観客からのコンテンツ愛の大きさに、涙が出るほど嬉しかったと語っている[70]。
- 『おねがい☆ティーチャー』の風見みずほ役については、声優人生で初めて、「演じた」ではなく「生きた」と思えた役どころだったと語り、作品の舞台になった長野県の木崎湖に聖地巡礼を行い、海ノ口駅に置かれたノートに記帳もしたという。その体験から、「アニメ作品が夢のような場所で、私たちが今生きている世界が現実だとすると、木崎湖は夢と現実の中間のようなイメージがあります。そんなふうに思える作品とキャラクターに出会えたことが、私には宝物です」とも述べている。また決め台詞の「最優先事項よ!」は、作品外でも使うほどお気に入りであるという[71]。
- 『ひぐらしのなく頃に』の園崎茜役については、「絵に描いたような極妻感」と評し、元ネタの『極道の妻たち』をテレビ視聴していたこともあり、女優としてだったら、振られても絶対できない役だったが、声優としてなら、ものすごいエネルギーを放出する感じになったが、心と魂を込めて、不思議とできてしまったと語っている[72]。
- 『コードギアス反逆のルルーシュ』のセシル・クルーミー役については、オペレーターというキャラクター設定上、台詞を的確、明確に話す場面が多く、彼女がオペレーターとして振る舞う時は気が抜けなかったが、共演者に同年代の声優が多く、年長者故に、スタジオでポツンと一人でいることが多くなりつつあった時期であったため、本作品の収録に行くのが楽しかったと語っている[73]。
- 『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』のラスト役については、大人の階段を少しずつ上がってきたからこそ、演じられた役だと語り、キャラクターのデザインから、鋭さと色っぽさを合わせた感じで演じたが、「色っぽ過ぎる」とダメだしされると、「すいません。地が出ちゃって」と、冗談を返す余裕が出てきた自分に嬉しくなったという。特に最後の場面は印象に残っており、「あなた(ロイ・マスタング)みたいな男にやられるのも悪くない」という台詞を収録したスタジオの張りつめた空気感を、今でもよく覚えているという。また、収録から10年以上経って、先述の最後の場面をゲーム用に新録し、「10年経って、またできるのは、とてもうれしいですね」とも語っている[74]。
- 『HUNTER×HUNTER(第2作)』のパーム=シベリア役については、「あんなにおかしな人はいない(笑)」「こちらの想像を超えてくる大好きなキャラクター」と語り、「オーディションで受かったが、あの時期だからこそできた役。放送の5年前だったらできなかった気がする」とも語っているが、原作絵を見た瞬間に、入り込み易い役柄だと感じ、声作りに関しては苦労した記憶はないという。また収録時は、彼女のような奇天烈な役が演じられることに、楽しさを感じたとも述べている[75]。
- 『有頂天家族』の母(下鴨 桃仙)役については、オーディションで、キャラクター設定にもある宝塚の男役になる場面があったが、事務所の社長をしている実姉が宝塚を目指し、自身も姉に連れられて何度も観劇した経験から、直ぐにイメージすることができたという。正体が変幻自在に姿を変える狸という設定もあり、演じる楽しさがあったと語る一方、「大」の文字を3つ並べるほど、原作愛が深いこともあって、放送終了後には、作品の舞台となった京都に聖地巡礼を行い、その様子をマネージャーが紀行文に記し、それを自身のホームページに掲載するほど、思い出深いものだったという[76]。
- 『宇宙戦艦ヤマト2199シリーズ』のスターシャ・イスカンダルについては、オーディションでなく指名で起用されたが、作品のネームバリューに対してのプレッシャーも大きく、本人が心の底から演じられるようになったのは、リメイクシリーズの6作目である『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』の後章になってからだったという。後章の台本を家で読む内に、今までキャラクターが抑えていたであろう想いが内面に溢れ、嗚咽しながら落涙するほどだったが、「人生で私が経験してきた悲しい出来事は、こういう役を演じるために神様が用意してくれたのかも……」と感慨深いものがあり、本番の収録では、その気持ちを胸に、淡々と語ることを心掛けたと語っている[77]。
- 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のカルタ・イシューについては、台本とキャラ表を見た瞬間、「やっちゃっても良い役だ」と思い、キャラクターをもっと濃くしたい欲にかられたという。テスト収録の際、手振りをつけながら、「捻り潰してやるわ」という台詞をヒステリックに声を裏返して演じたところ、共演者たちやディレクターからの受けが良く、本番にも採用されたが、「誰か一人でも困った顔をされていたら、できませんでした」「プロデューサーさん、監督さんを始め。皆さんが楽しんで下さる空気があって、伸び伸びとやらせて頂けました」と語っている。また、この頃は声優の経歴も20年を超え、遊べるキャラを演じるのが楽しくなっている時期で、「一言で言えば、図々しくなったんだと思います(笑)」とも述べている[78]。
- 『はたらく細胞』のマクロファージさん役については、「若い頃だったら、『キャラの方向性をどっちに振ったらいいんだろう?』と悩んでいた気がする」と語り、オーディション時は、精神的に少し弱っていた時期でもあって、もっと若い人が受かると思っていたが、可愛く笑いながら、残虐に細菌を薙ぎ倒すギャップが最高に楽しく、「正直、私にピッタリだったと思います(笑)」とも語っている[79]。
- 『CLANNAD』の古河早苗役については、それまで持っていた母親役の概念を大きく覆したキャラクターで、母親というより可愛い女性の印象を受けて、芝居も、母親らしさのテンプレから可愛い方向へシフトして行ったという。また収録中、作中で娘が亡くなって泣く場面では、自身もスタジオで号泣してしまい、「あんなに泣いたことは、なかったかもしれません」「いつもは悲しい場面があっても、涙を見せるのは恥ずかしいし、バレないようにしていましたけど、この作品では無理でした」と語っている[80]。
- 『名探偵コナン』のキャンティ役については、「『これをテレビで放送していいの?』と思うくらい、とんでもなく恐ろしい」「悪い女ですね。悪い上に、短気なんですよね」と語り、井上喜久子が声を担当していることに驚く人が多く、とても嬉しいが、どういう経緯で自身が起用されたのか、ずっと知りたいと思いつつ、未だに把握できていないという[81]。
- 『テイルズ オブ デスティニー』のフィリア・フィリス役については、真面目さ故に失敗して悩む性格が理解しやすく、台本もすんなり頭に入ったので、役に寄り添えて伸び伸び演じることができ、作品の発表から20年以上経っても、何年かに1回は派生作品の新録があるため、キャラクターが自分の中に生き続けている感じがしているという[82]。
- 『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』のザ・ボス役については、「まだ自分としては若輩者と思っていた頃に、伝説の隊長役を振られて、今考えてもビックリです」と語り、監督の小島秀夫から「ザ・ボスは母ですから」と言われ、母性が直接見えるキャラではないが、奥底に相応のものを秘めていると解釈して、自分を見出してくれた監督の期待に応えようと挑戦した結果、後年、本作とは無関係の作品での打ち上げで、スタッフやアニメーターから「ザ・ボスが好きです」との声を貰うようになったという[83]。
- 『バイオハザード ヴィレッジ』のオルチーナ・ドミトレスク役については、「まぁ大変なキャラクターで(笑)。凄く体の大きな人なので、出る声も普通ではないんです。自分の体を楽器のように使って、一番深く、そして一番迫力のある声を出す様に、凄く気を使いました」と語り、オーディションでは仮タイトルで作品名が伏せられていたが、課題台詞を読んだマネージャーがタイトルに勘づき、「気合を入れて下さい」と進言し、通常の170%くらいの気合を入れて役を勝ち取ったが、既に英語音声が出来上がっており、先に収録していた海外の声優の芝居や演技が凄まじく、これに負けないクオリティを出すため、収録日には他の仕事を入れないという体制で本番に臨んだという。一方で、YouTube用のパペット人形劇『バイオ村であそぼ♪』ではブラックユーモアに振り切っており、「『喜久子さん楽しそう』とコメントを書かれていて(笑)」「ドミトレスク夫人が重厚すぎる役だった分、此方ではギャップで思い切り遊んでしまいました」と語っている[84]。
- 『ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ』のハイデリン役については、『ファイナルファンタジーXIV: 漆黒の反逆者』で担当した池田昌子の後任として起用され、役を引き継ぐプレッシャーが大きく、さらに全ての台詞が重要な言葉であるため、従来のゲーム収録で用いてきた『重要な言葉に向かって感情を作る』やり方が使えず、大変だったという。また、一度は全ての台詞を録り終えたものの、より良いものにしたいという思いが抑えられず、ディレクターに同意を得た上で、本来は禁じ手である再録を決行し、「2回やらせて頂いたお陰で、自分の想いを100%描き切れました」「ゲームが発売されてからも、沢山の方に『良かったよ』と言って頂けて、本当に嬉しかったです」と語っている[85]。
- 『ガールフレンド(仮)』の天都かなた役については、「17歳の生徒会長なんですけど、とんでもなくマイペースで周りが大変なことになる役」「日頃『17歳役はいつでもOKです』と言っている割に、毎回収録では、あの声が出るのかドキドキしています(笑)」と語り、可愛らしい見た目に合わせるため、声を維持する努力を、数ヶ月に1度の収録用に続けていて、「もうかなり長い付き合いになりましたけど、とても愛しくて大好きな、ありがたい存在です」と語っている[86]。
- 演じやすかったキャラクター
- 今まで最も演じやすかったキャラクターに長年担当しているしまじろうのお母さんを挙げている[87][出典無効]。
- 趣味
- 水泳(『merry fish』『fishes』でも披露)、はなうた、コスプレ[88]
- 資格・免許
- 中学国語教員免許・学校図書館司書教諭免許[89]。
- 特技
- 華道(池坊師範)[89]
- 高校入学時から稽古を始め、池坊お茶の水学院にも月一で通う。1986年に脇教授3級、1987年に脇教授2級の職位を取るが、声優業の多忙により休止し、2022年1月から再開している[90]。
- 演じる際のスタイル
- 悪役を演じる際は、直前まで素の状態を保ち、マイク前に立った瞬間に芝居に入るスタイルを採っている[91]。
- ホラー映画のリハーサルを自宅で行う際は、叫ぶ場面では近所迷惑にならない様、バスタオルを口に当てて台詞の練習をしている[92]。
- 話し方の語尾に、息が混じって可愛らしい喋りになる癖があり、ナレーションでは、語尾をハッキリ締めることを心掛けている[93]。
- 声優としての考え
- 演じるキャラクターに「決め台詞がある」、「グッズが出る」。この2つは、声優の二大うれしいであると、自著で語っている[94]。
- 毎日努力されていることは腹筋であり、プロになってから5、6年目、共演していた女性の先輩に「喜久子ちゃんは、もっと腹筋を鍛えないとダメね」と言われたことがあった[35]。同じ現場で仕事をしている先輩にダメ出しされたことが、その時は凄くショックで、ちょうどその頃、「自分は声量がないな」と悩んでいたため、なおさらであった[35]。それで、その日から腹筋をしっかり頑張っていたところ、声が変わってしまった[35]。「腹筋は声優にとって、すごく大切なものなんだ」と気づくと同時に、「なんで今まで腹筋をしないでここまで来ちゃったんだろう」と怖くなってしまうくらい、違っていた[35]。腹筋がなければ「私の人生もっと楽しいんだろうな」と思うこともあるが、疲れていても、眠くても、毎日だいたい100回はしている[95]。それにプラスして、自分なりにお気に入りの腹筋をしたりしている[95]。普段の生活でも、背もたれずに、少し背中を後ろにしていると腹筋のトレーニングになるため、いつでもしている[95]。スタジオでも自分の出番ではない時は、いつもしているという[95]。
- 感情的な台詞は、どれだけ自分の内をほとばしるパッションではじけさせるか、感性で言う。冷静に物事を伝える場面では、自分の中で言葉をしっかり咀嚼して、説得力が出ることを意識するのが大事と述べている[96]。
- デビュー以来、担当することが多い母親役については、「『お母さん』という属性を意識しなくても、1人の女性として演じればキャラクターが成立する」と述べている[97]。昔はヒロイン役などを演じていたことはなく、お姉さん、母親役といった大人の女性役が多いような、地味なタイプであった[24]。「自分でもそういうポジションが居心地がいい」と感じていたが、色々と演技で必要以上に悩むことも多く、考えすぎて悩みを育ててしまうようなところがあった[24]。そんな感じで落ち込んでいた時、地元の友人に誘われてスポーツクラブに行ったが、体を動かして汗を流してふと休んでいた[24]。その時に、暗いトンネルを抜けたところ、まぶしい春の国が広がっていたような感じで霧が晴れたような爽快感があり、「こんなに悩んでばかりいても良くない」と思った[24]。その後は色々なことを楽しんでやれるようになり、その日を境に、性格も考え方も変わった[24]。笑顔でいたく、周囲にも笑顔になってほしく、「そのためなら何でもできる」と思えるようになったという[24]。
- 祖母や老女を演じる際は、「深みのあるところを演じられる喜びがあるので、人生経験を経た言葉の重みを大事にしている」と述べている[98]。
- 悪役を演じる際は、「黒い影が濃ければ濃いほど、主人公や、幸せな光の世界の美しさが際立つ」「役を頂いたからには、自分に表現できる限りの悪、真っ黒い部分を出したい」と述べている[99]。
- 2010年時点ではものすごく怖い役、悪い女役が増えてきており、私生活では口にしておらず、聞くこともないようなセリフが言えるため、演じていても楽しくてわくわくしている[24]。そのきっかけになったのは、『キャプテン翼』だったと語り、「井上喜久子は男の子役もできるんだ。あの声が出るんだったら、こんな役もできるんじゃないか」と思った人物が、声をかけてくれるようになったのかもしれないといい、『キャプテン翼』が一つの転換期になった[24]。男の子役からクールな女性、悪女というふうに、徐々に幅が広がっていったという[24]。
- アニメのアフレコと外画の吹き替えは、演じるハートは一緒でも、技術的には違うと考えており、「アニメでは細いサインペンで描くところを、外画では筆で描くような感覚」と例えている[100]。
- 外画の吹き替えに関して、「国によって、情熱、表現、感情に違いはあっても、誰かを大切に思う気持ちや、愛する故に涙が出てしまうのは、どの国でも変わらない」と述べている[101]。
- アニメやゲームでは「女性は若ければ若いほど良い」という風潮があり、演じるキャラクターにも因るが、若い女の子の話が多いため、「女性声優は年齢を重ねるほど辛いと感じる人が多いかもしれない」「頑張って10年、20年とやるほど、逆に厳しい状況になることもある」と述べている[102]。
注釈
シリーズ一覧
- ^ 第1期(1989年)、第2期『熱闘編』(1989年 - 1992年)
- ^ 第1作(1996年)、第2作『J to X』(1998年)
- ^ 第2期『おジャ魔女どれみ♯』(2000年)、第3期『も〜っと!おジャ魔女どれみ』(2001年)
- ^ 第1作(2002年)、続編『ADVANCE』(2003年)
- ^ 第1期(2003年)、第2期『Dragon Destiny』(2007年)、第3期『Great Guardians』(2008年)、第4期『XTREME XECUTOR』(2010年)
- ^ 第1期(2005年)、第2期『それぞれの翼』(2006年)、特別編『闘う翼』(2007年)
- ^ 第1シリーズ(2006年)、第2シリーズ(2009年)、第3シリーズ(2013年)
- ^ 第1期(2006年 - 2007年)、第2期『R2』(2008年)
- ^ 第1期(2006年)、第2期『解』(2007年)
- ^ 第1期(2007年 - 2008年)、第2期『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』(2008年 - 2009年)
- ^ 第2期『〜双月の騎士〜』(2007年)、第3期『〜三美姫の輪舞〜』(2008年)、第4期『F』(2012年)
- ^ 第2期『【俗・】さよなら絶望先生』(2008年)、第3期『【懺・】さよなら絶望先生』(2009年)
- ^ 第1期(2008年)、第2期『CAPU2』(2008年)
- ^ 第1期(2009年)、第2期『II』(2010年)
- ^ 第1期(2010年)、第2期『探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕』(2012年)、第4期『探偵歌劇 ミルキィホームズ TD』(2015年)
- ^ 第1期(2010年)、第2期『にっ!』(2011年)
- ^ 第1期(2010年 - 2011年)、第2期(2011年 - 2012年)、第3期(2012年 - 2013年)
- ^ 第1期(2010年)、第2期『増量中!』(2011年)
- ^ 第1期(2010年)、第2期『夢色パティシエールSP プロフェッショナル』(2010年)
- ^ 第1期(2012年)、第2期『next stage』(2013年)
- ^ 第1期(2012年)、第2期『戀』(2014年)
- ^ 第1期(2013年)、第2期『2』(2017年)
- ^ 第2期『G』(2013年)、第3期『GX』(2015年)、第4期『AXZ』(2017年)
- ^ 第1期(2013年)、第2期(2014年 - 2015年)、第3期(2018年 - 2019年)
- ^ 第1期(2013年)、第2期『2』(2015年)、第3期『3』(2015年)
- ^ 第1期(2013年)、第2期(2014年)
- ^ 第2クール『デュラララ!!×2 転』(2015年)、第3クール『デュラララ!!×2 結』(2016年)
- ^ 第2期『続』(2015年)、第3期『完』(2020年)
- ^ 第1期(2016年)、第2期『〜あどばんす〜』(2018年)
- ^ 第1期(2017年)、第2期『継つぐもも』(2020年)
- ^ 第1期(2017年)、第2期『2』(2023年)
- ^ 第1期(2017年)、第2期『2』(2021年)
- ^ 第1期(2018年)、第2期『はたらく細胞!!』(2021年)
- ^ 第1期(2019年)、Season2(2022年)、Season3(2023年)
- ^ 1ST SEASON(2019年)、2ND SEASON『MEISEI STORY 〜二度目の夏、空の向こうへ〜』(2023年)
- ^ 第1期(2020年 - 2021年)、第2期『みっくす!』(2021年 - 2022年)
- ^ 『業』(2020年 - 2021年)、続編『卒』(2021年)
- ^ 第2期『キムラック編』(2021年)、第3期『アーバンラマ編』(2023年)
- ^ 第1期(2021年)、第2期(2023年)
- ^ 第一部(2021年)、第二部(2022年)
- ^ 第1期(2021年)、第2期(2023年)、第3期(2024年)
- ^ シーズン1(2021年)、シーズン2(2022年)
- ^ 第1期(2021年)、第2期(2022年)
- ^ 第1期(2021年)、第2期『2』(2023年)
- ^ 1st Season(2022年)、2nd Season(2023年)
- ^ 第1期(2023年)、第2期(2024年)
- ^ 『[前編] 君の列車は生存戦略』、『[後編] 僕は君を愛してる』
- ^ 第3期『星霊節の花嫁』(2005年)、第4期『時と夢と銀河の宴』(2006年)
- ^ 『GGENERATION』(1998年)、『ZERO』(1999年)、『F』(2000年)、『F.I.F』(2001年)、『NEO』(2002年)、『SEED』(2004年)、『PORTABLE』(2006年)、『SPIRITS』(2007年)、『WARS』(2009年)、『WORLD』『3D』(2011年)、『OVER WORLD』(2012年)、『GENESIS』(2016年)、『CROSSRAYS』(2019年)
- ^ 『エクストリームバーサス2』(2018年)、『クロスブースト』(2021年)、『オーバーブースト』(2023年)
ユニットメンバー
出典
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