個体発生とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 言葉 > 場所 > 過程 > 個体発生の意味・解説 

こたい‐はっせい【個体発生】

読み方:こたいはっせい

生物個体有性的には受精卵または単為生殖卵から、無性的に胞子から、完熟した成体になるまでの過程。→系統発生


個体発生

英訳・(英)同義/類義語:ontogenesis, ontogeny

生物受精受粉)によって発生開始して成体になり、老化して死ぬまでの過程
「生物学用語辞典」の他の用語
現象や動作行為に関連する概念:  促通拡散  信号刺激  個体  個体発生  倍数系列  偶発突然変異  偽似交接

胚発生

(個体発生 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/02 10:02 UTC 版)

オランダの科学者ハルトゼーカー (Nicolas Hartsoeker) が唱えた精子の姿。中にホムンクルスが入っている

胚発生(はいはっせい、英語: embryogenesis)または生物学における発生(はっせい)とは、多細胞生物受精卵単為発生の場合もある)から成体になるまでの過程を指す。広義には老化再生も含まれる。発生生物学において研究がなされる。

前成説と後成説

古くは、または精子の中に小さな人の形をしたもの(これをホムンクルスという)があらかじめ存在し(つまり、受精卵の中に、子孫の雛形がある)、発生はホムンクルスが大きくなる過程であるという前成説が唱えられた時代があった。後の研究で、そのようなものは存在しないことが明らかとなった。他方、受精卵の中には雛形に相当するものは何もなく、次第に形ができて来るという考え方を後成説という。

実際には顕微鏡を使用して、細胞レベルの観察が行われるようになって、具体的な発生の過程が観察できるようになった(もっとも、研究の初期には「顕微鏡を通してホムンクルスが観察された」といったような報告がされたこともあった)。動物の発生については多くの研究がなされているが、植物についてはかなり遅れて研究がなされた。

動物の発生過程

様々な無脊椎動物の発生過程の研究から、動物の発生には、一定の共通する型があると考えられるようになった。

受精後の哺乳動物卵子卵割の最初の段階。図表のz.p.は透明帯。p.gl.はen:Polar body:極体。aは2細胞期。bは4細胞期。cは8細胞期。d、eは桑実胚期。

前核の出現

受精が成立すると、前核(prenuclear; PN)が出現する。精子の進入後約6時間で見え始め、約20時間で見えなくなる。雄性前核は受精卵で形成される精子由来の核、雌性前核は卵子由来の核である。雄性前核と雌性前核の融合により、父親と母親の遺伝情報を保持する子供の核が作られる。

体外受精では受精操作の翌日、PNの観察により受精の確認を行う。2PNは正常受精卵。1PNは2PNが融合後消える途中の場合と異常受精の場合がある。3PN以上は2つ以上の精子が入ってしまった異常受精である。0PNはすでに前核が消失してしまったか未受精を示す。

卵割

多細胞動物の発生は、受精卵の細胞分裂、いわゆる卵割から始まる。卵割は同調的な分裂により、細胞数を2の級数で増やす。通常は2細胞期に左右に、4細胞期に前後に、8細胞期に腹背に分かれる。卵黄の多い卵では、このとき動物極側(卵黄が少ない)の方が細胞が小さくなる。

en:Blastulation:胞胚形成 、1 - en:Morula:桑実胚2 - en:blastula:胞胚

胞胚期

ある程度細胞数が増えると、多くの場合、内部に空洞ができる。その外側は一層の細胞に覆われた形になる。この時期を胞胚(ほうはい)期と呼ぶ。胞胚の内部の空洞は卵割腔(らんかつこう)または、胞胚腔(ほうはいこう)と呼ばれる。ウニ卵は胞胚期孵化し、表面に繊毛を持って泳ぐ。

卵割腔がなく、内部まで細胞で満たされるものもある。また、脊椎動物では複数の細胞層が生じる。

胚葉動物の原腸陥入:(1)胞胚から(2)原腸胚の形成。外胚葉細胞(オレンジ)の一部は内側に移動して内胚葉(赤)を形成する。

原腸の形成

胞胚の表面の細胞層が内部に入り込む。これは陥入(かんにゅう)と呼ばれる。そして、一つの口を持った袋を内部に形成する。これが消化管の始まりである。この袋は原腸と呼ばれ、その出入り口は原口と呼ばれる。この時期の胚を嚢胚(のうはい)または原腸胚(げんちょうはい)とよび、その形成を原腸胚形成 (Gastrulationという。

刺胞動物扁形動物では消化管には一つしか出入り口がない。その他の動物では消化管は管状である。そのような動物では、原口の反対側に新たにもう一つ出入り口ができる。このとき、どちらが口になるかは動物門によって異なる。軟体動物節足動物環形動物など、多くの無脊椎動物など原口動物(先口動物ともいう)では原口が口になるが、棘皮動物脊椎動物など新口動物(後口動物ともいう)では原口は肛門になる。

胚葉の分化

原腸が陥入したことで、それまで平等に並んでいた細胞が、内側と外側に分かれたことになる。そこで、外に残った細胞群を外胚葉(がいはいよう)、内側に入った細胞群を内胚葉(ないはいよう)と呼ぶ。外胚葉からは主に表皮神経が、内胚葉からは消化管が形成される。刺胞動物は、このような構造をほとんどそのままに成体になるので、二胚葉性動物と言われる。

それ以外の動物では、外胚葉と内胚葉の隙間に細胞群が入り込み、そこで発達を始める。この細胞群を中胚葉(ちゅうはいよう)とよぶ。中胚葉からは筋肉血管系などが作られる。また、中胚葉からは体腔が作られる。これらの動物は三胚葉に分類される。

形態形成

ここから後は各器官が形成される段階になる。これを形態形成という。

形成体

誘導を行う細胞群のことを形成体オーガナイザー誘導体)と呼ぶ。ドイツのハンス・シュペーマンヒルデ・プレショルドはイモリ胚での移植実験から、原口背唇に分化を引き起こす作用を発見し、原口背唇をシュペーマンオーガナイザーと名付け、未分化の細胞群に分化を促す形成体の作用を誘導と呼んだ。のちに原口背唇以外の細胞も誘導を行うことが確認され、誘導を行う細胞群全体をオーガナイザーと呼ぶようになり、形成体という日本語訳が当てられるようになった。

誘導の連鎖

誘導によって分化した細胞群が形成体となって別の細胞群を誘導する。この連鎖のことを誘導の連鎖または誘導連鎖と呼ぶ。

一例として目の形成過程を以下に示す。

  1. 胚の原口背唇(一次形成体)
    胚の外胚葉に働きかけ、神経管を誘導する。神経管はに分化する。
  2. 脳の両側に形成される眼胞(がんぽう)→眼杯(がんぱい。二次形成体)
    表皮に働きかけ、水晶体を誘導する。眼杯自体は網膜に分化する。
  3. 水晶体(三次形成体)
    表皮の表層に働きかけ角膜を誘導する。

誘導のメカニズム

誘導は分泌性因子を介した細胞間相互作用により行われると考えられるが、しばしば多数の因子が複雑な制御系を形成しており、分子メカニズムが解明されていないことも多い。例えば、上記の形成体の誘導にはWntシグナル系と呼ばれるシグナル伝達系路が重要であることが知られているが、その際にWntシグナル系がどのようにして活性化されるのかについては不明な点も多い。また、眼胞/眼杯による誘導には神経成長因子および骨形成因子が関与していると考えられているが、その詳細は明らかではない。


関連項目

参考文献

外部リンク


個体発生

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 21:14 UTC 版)

スピノサウルス」の記事における「個体発生」の解説

スピノサウルスの非常に若い個体属す21ミリメートル長さ末節骨からは、スピノサウルスが非常に若い年齢あるいは誕生時に半水棲適応発達させており、生涯通じてそれを維持していたことが示唆されている。1999年発見されたこの標本は、Simone Maganucoらにより記載され幼体成体小型版に類似する仮定して、骨の持ち主全長1.78メートル推定された。 これは2018年時点での既知範囲内では最小標本である。

※この「個体発生」の解説は、「スピノサウルス」の解説の一部です。
「個体発生」を含む「スピノサウルス」の記事については、「スピノサウルス」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「個体発生」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「個体発生」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



個体発生と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「個体発生」の関連用語






6
比較発生学 デジタル大辞泉
92% |||||

7
直接発生 デジタル大辞泉
92% |||||



10
前脳 デジタル大辞泉
74% |||||

個体発生のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



個体発生のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
JabionJabion
Copyright (C) 2025 NII,NIG,TUS. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの胚発生 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのスピノサウルス (改訂履歴)、ドレッドノータス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS