TPP
英語:Trans-Pacific Partnership、Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement
2006年にAPEC参加国であるニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4ヵ国が発効させた、貿易自由化を目指す経済的枠組み。
TPPは、加盟国の間で取引される品目に対して関税を原則的に100パーセント撤廃しようという枠組みである。工業製品や農産品、金融サービスなどをはじめ、全品目について、2015年をめどに関税全廃を実現するべく協議が行われている。
2010年11月の時点で、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの5ヵ国がTPPへの参加を表明し、次いでコロンビアやカナダも参加の意向を表明している。
それまで日本はTPPに対する姿勢を明らかにしていなかったが、2010年10月に開かれた「新成長戦略実現会議」で、菅直人内閣総理大臣(当時)がTPPへの参加検討を表明した。しかし、TPPは国内の農業・漁業をはじめ、あらゆる産業に対して大きな影響を及ぼす協定であり、参加に反発する声や、参加を急がず慎重を期するべきとの声も多数上っている。
2010年10月26日、前原誠司・外務大臣(当時)は記者会見の席で次のように述べている。
「まず,TPPのいわゆる扉というのが閉まりかけている。」「ルールメイクをともにするのであれば,政治的な先送りは許されない。」
大臣記者会見「前原外交を語る」より引用
2010年11月9日の閣議決定では、TPPへの参加は決定されなかったものの、下記の通り「関係国との協議を開始する」との決定が下された。
「FTAAPに向けた道筋の中で唯一交渉が開始している環太平洋パートナーシップ(TPP)協定については、その情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。」
包括的経済連携に関する基本方針より引用。但し、全角文字は半角に置換している。
また、2010年日本APECのAPEC首脳会議において採択された首脳宣言である「横浜ビジョン」では、TPPは「ASEAN+3」「ASEAN+6」などと並んでFTAAPを実現するための具体的な経済的な枠組みの候補の一つに挙げられた。
なお、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の前身は、2002年10月のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議において、ニュージーランドとシンガポール、チリの3ヵ国が署名した経済協力の構想(Pacific Three Closer Economic Partnership)である。全ての産業品に対し関税を撤廃するという枠組みは、ニュージーランドとシンガポールとの間の2国間協定「ANZSCEP」をベースとしているとも言われている。
ちなみに、韓国はTPPへの参加を表明していない。韓国は2011年7月にEUとの間に「EU韓FTA」を発効しており、2012年初頭には米国との間に「米韓FTA」の発効を見込むなど、個別の経済連携協定の締結を推進している。
2011年9月に野田佳彦・新内閣総理大臣に下で新内閣が誕生し、以後11月初旬にかけて、日本国内ではTPPへの参加の是非を巡って様々な議論が繰り広げられた。2011年11月に入り、野田佳彦内閣総理大臣は、自身が設置した意思決定機関である政府・民主三役会議を開き、11月11日にいちど結論を先送りにした上で、11月12日にバラク・オバマ米国大統領へTPPへ参加する意向を表明した。
11月13日、野田佳彦首相はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に参加し、同席上でTPPへの参加方針を表明した。
同じく11月13日には、カナダがAPEC開催地であるホノルルでオバマ米国大統領と会談し、TPP参加交渉へ加わる意志を表明した。また、米通商代表部を通じて、メキシコも参加に積極的意向を示していると発表された。
2012年6月18日にはメキシコが米国からTPP交渉への参加を承認されたことが発表された。他の参加国もメキシコのTPP参加を承認する意向と報じられている。
関連サイト:
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉 - 外務省
Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement - ブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポール、が発効させた合意内容の原文
包括的経済連携に関する基本方針 - 平成22年11月9日閣議決定(首相官邸)
横浜ビジョンの仮訳 - 2010年日本APEC(PDFファイル)
THE YOKOHAMA VISION - BOGOR AND BEYOND - 横浜ビジョンの原文(英語)
日本の経済連携協定(EPA)交渉 - 現状と課題 - 外務省
環太平洋戦略的経済連携協定 - EPAの取組について - 経済産業省
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の概要と意義 - 国際貿易投資研究所
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉の現状(平成23年10月)(PDF) - 外務省 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉 資料
韓米FTAとTPPが抱える共通の課題 - 日経ビジネスオンライン
Trans-Pacific Strategic Economic Partnership - Wikipedia(英語)
TPSEP
(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/01 07:36 UTC 版)
TPSEP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement、日本国は当事者でないため公式の日本語訳は存在しないが、他の類似する協定の訳を参考にすると「環太平洋戦略的経済連携協定」)は環太平洋地域の4つの国によって、さまざまな経済政策に関して締約された貿易協定(条約)である。この協定は2005年にブルネイ、チリ、シンガポール、 ニュージーランドによって署名され、2006年に発効した。この協定は、物品貿易、原産地規則、貿易救済措置、衛生植物検疫措置の適用に関する協定、貿易の技術的障壁、サービス貿易、知的財産、政府調達、競争政策に関係する包括的な貿易協定である。締約国間のすべての関税を2006年1月1日までに90%減少させ、2015年までにゼロにすることを定めている。[7]
- ^ “Brunei Darussalam, Chile, New Zealand and Singapore conclude negotiations on a Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement” (プレスリリース), Joint Press Statement from Brunei Darussalam, Chile, New Zealand and Singapore Ministers, (2005年6月3日), オリジナルの2006年9月7日時点によるアーカイブ。 2012年12月15日閲覧, "Brunei Darussalam Ambassador-at-Large Princess Masna, Chilean Minister of Foreign Affairs Mr Ignacio Walker, New Zealand Minister for Trade Negotiations Hon Jim Sutton, and Singapore Minister for Trade and Industry Mr Lim Hng Kiang today announced the successful conclusion of negotiations for a Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement (Trans-Pacific SEP).... The Ministers will recommend the results of the negotiations to their respective governments for signature."
- ^ “Brunei, Chile, New Zealand and Singapore reach trans-Pacific FTA”. The Manila Bulletin. Reuters. (2005年6月3日) 2012年12月15日閲覧。
- ^ “Second free trade agreement to be signed by NZ this year” (プレスリリース), New Zealand Government, (2005年7月18日) 2015年10月7日閲覧, "The first multi-party free trade agreement spanning the Pacific and Asia was signed today in a ceremony at Parliament, announced Prime Minister Helen Clark."
- ^ a b c “Treaties for which NZ is Depositary: Trans-Pacific Strategic Economic Partnership (TPSEP or P4)”. 2012年12月15日閲覧。
- ^ “FTA signed: NZ, Chile, Singapore and Brunei to end tariffs”. The National Business Review. (2005年7月19日) 2012年12月15日閲覧。
- ^ “Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement: Understanding the P4 – The original P4 agreement”. 2012年12月15日閲覧。 “The agreement provisionally entered into force (between New Zealand and Singapore only) on 1 May and officially entered into force on 28 May. The Agreement entered into force for Brunei on 12 July 2006, and for Chile on 8 November 2006.”
- ^ “Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement (PDF)”. NZ Ministry of Foreign Affairs & Trade (2005年). 2019年11月1日閲覧。
- 1 TPSEPとは
- 2 TPSEPの概要
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