SUVの長所・短所
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 03:35 UTC 版)
「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の記事における「SUVの長所・短所」の解説
クーペやセダン、ステーションワゴンなど通常の乗用車に比べると基本的に最低地上高が高いため、雪道・段差・悪路でボディ下面を擦る心配が少なくなる。全高も高い分アイポイントが高く視界良好、積載性も高いなどの実用性に優れる。またそのボディの大きさゆえ豪華性・ステータス性を演出できるメリットもある。 ただし一般的なミニバン(MPV)ほどではないものの、最低地上高(車高)や全高が高い分ロール(揺れ幅)が大きく、ドライバビリティの面ではクーペはともかく、セダンやステーションワゴン、コンパクトカーに劣る。また重量が大きいため低回転域での大トルクが必要なことや、ピックアップベースのSUVは北米市場の好みから排気量の大きなエンジンを搭載しているものが多く、さらに車体価格が高いことに加えて、頑丈なフレームや足回りの重量(いわゆるばね下重量)と大径タイヤの抵抗、追加された駆動系の抵抗、大きな車体による空気抵抗や投影面積の増大など、燃費が悪化する要因が多い。このため、中価格以下のSUVはアンダーパワーを承知で小さめのエンジンを搭載して燃費を稼ぐケースが多い。またタイヤは大きめで車重の重さゆえ摩耗率も高いため、全体的に維持費は通常の乗用車よりも高くなる傾向にある。 衝突安全性面では、車体が大きい分頑丈なフレームを搭載でき、またクラッシャブルゾーンなども大きくとれるため有利になりやすい。また乗員の位置が高い分、サイドメンバーが乗員を守る有効に働く、頭上空間が広いため車体上面が潰れても頭部・首を守りやすいというメリットもあるとされ、乗員保護の観点からは安全性は高いとされる。 その一方で他者に対する衝突安全性については数々の難点が指摘されている。例えば衝突相手が軽自動車など質量が小さい車であると、運動量保存の法則により相手を弾き飛ばしてしまい、大きなダメージを与えてしまう。アイルランドのダブリンにあるトリニティカレッジの研究者シムズ講師らによると、米国から取り寄せた重大事故に関するデータを分析した結果、SUVはボンネットなど車体前部が乗用車より高く、歩行者と衝突した場合、歩行者が頭部や腹部などにより深刻な衝撃を受ける恐れがあるとされる。1990年代前半から日本などでアクセサリーとしてグリルガード(カンガルーバー、アニマルバー、ブッシュバーともよばれる)を装備することが流行ったが、対人衝突時の危険性が指摘され、ウレタン樹脂製の形だけのものへと代わり、現在では社外品以外ほとんど見られなくなっている。ユーザー層という観点から見ると、日本の国土交通省の調べではSUVは視界が広くなるため運転しやすいことから、運転にあまり自信のない女性運転者のほか、初心運転者や高齢運転者などに人気が高いとされる。さらにトヨタ店の資料によると年齢的には20歳代、30歳代の交通事故発生率の最も多い若年層に人気が高いとされており、これら諸々の事情からSUVに対する危険を呼びかける場合が時々あった。しかしこうした弱点は、近年の自動車メーカーたちの厳しい安全規制への対応努力、歩行者用エアバッグの採用や先進運転支援システムの充実などによりカバーされるようになってきている。 全高の高さと全幅の広さゆえに立体駐車場に駐車できないことが多く、路上駐車を助長する要因の一つにもなっていたが、近年はSUV以上に背の高いミニバン、およびトールワゴンの登場とSUVの低全高化が進み、駐車場側も改善されてきたことでそれほど問題にされなくなってきている。 2020年代のEVシフト下において、ブランドのEV第一弾としてSUVが選ばれる傾向にあるが、これはバッテリー・モーターの積載の都合がつきやすく、また流行のボディタイプのため採算が確保されやすいためであると推測されている。
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