NCの実用化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 05:39 UTC 版)
空軍は1953年にプロジェクトへの資金提供をやめたが、Giddings and Lewis Machine Tool Co. (G&L) が開発を継承した。1955年、G&Lの後援でNCを商用化するための会社 Concord Controls が創設され、MITからも人員の多くがそちらに移籍し、Numericord という制御装置を開発した。Numericord はMITの設計をほぼ継承していたが、紙テープの代わりにゼネラル・エレクトリックが開発中だった磁気テープ装置を採用した。磁気テープには様々な位相の信号が記録されており、それが直接各種制御の角度を表している。磁気テープは一定速度で制御装置が読み取り、それがセルシンの一方に角度情報として供給され、セルシンのもう一方は工作機械制御に接続される。依然として設計図の数値は紙テープに記録されていたが、磁気テープに変換する装置が用意された。磁気テープを使うことで制御装置の複雑さを大幅に低減させることに成功した。1995年、航空機の表面加工用の精密なダイスを生産するため Numericord "NC5" がG&Lの工場で稼動を開始した。 Monarch Machine Tool も1952年からNC旋盤の開発を開始した。同社は1955年の Chicago Machine Tool Show でNC旋盤を公開しており、そのショーには完成品や試作品段階のNC工作機械が他社からも出品された。例えば Kearney & Trecker の Milwaukee-Matic II は切削ヘッドをNC制御で自動交換することができた。 ボーイング社の報告には「数値制御はコスト低減できることを証明し、リードタイム削減と品質向上と工作機械設定削減を成し遂げ、生産性を向上させた」とある。一部利用者が熱烈に支持したにも関わらず、数値制御の採用はそれほど急速には進まなかった。パーソンズはこれについて後に次のように述べている。 NCの概念は製造業者にとって非常に奇妙で、採用も進まなかったため、米軍自身が120台のNC工作機械を作り、各製造業者にリースすることで一般化させようとした。 1958年、MITはNCの経済性についての報告を公表した。それによると、NC工作機械は人間の機械工に対抗できるが、単に作業に要する時間が加工からテープ作成に移っただけだとした。Forces of Production という著書の中で Noble は、空軍に限って言えばこれが全てだったと主張している。すなわち、労働組合の組織率の高い工場から組織率の低いホワイトカラーの設計事務所への作業の移転である。
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