Mk_41_(ミサイル発射機)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > Mk_41_(ミサイル発射機)の意味・解説 

Mk 41 (ミサイル発射機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/19 04:34 UTC 版)

Mk 41 VLS上面、ミサイル・セルの蓋。

Mk.41 垂直発射システム(Mk.41 Vertical Launching System)は、世界的に広く用いられているミサイル発射システム。垂直発射方式を採用しており、スタンダードトマホークVLAなど、幅広い種類のミサイルを運用することができる。

なお、ミサイル発射機単体としては別に制式番号を付与しており、厳密には、Mk 41とはミサイル発射システム全体に対する名称である。

来歴

Mk.41は、もともと、先進水上ミサイル・システム(ASMS)の開発から派生するかたちで、1965年ないし1966年より着手された[1]。ASMSは1969年にはイージスシステム(AWS)と改称された[2]

1976年には基本設計が完了したものの、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の建造開始には間に合わず、最初の5隻ではターター・システムと同じ連装式のMk.26が搭載された。その後、6番艦「バンカー・ヒル」より本機の搭載が開始された[1]

設計

現在世界でもっとも多く運用されている垂直発射装置である。典型的なVLSとして、弾薬庫が発射機を兼ねているほか、Mk 41固有の特徴として、複数種類のミサイルを同時に並行して収容し、任意のミサイルを迅速に発射できることから、複合的な脅威に対する優れた対応能力を有する。1秒に1発のミサイルを発射することができる。またミサイルあたりのコストはMk.26の半分程度であるほか、省力性にも優れ、タイコンデロガ級では、Mk.26搭載艦では11名必要とされていた科員がMk.41搭載艦では8名に削減されている[1]

システム構成

Mk 41システムは、下表のように、垂直発射機を中核として、それを制御する発射管制装置(Launch Control Unit, LCU)などによって構成されており、構成機器等に応じて複数のバージョン(ベースラインやmodなど)に分けられる[3]

艦級 ベースライン mod 発射管制装置 発射機
タイコンデロガ級 IIA/III 0 Mk 211 mod 0/1 Mk 158 mod 0 (61セル)
スプルーアンス級 1 Mk 158 mod 0 (61セル)
アーレイ・バーク級 2 Mk 159 mod 0 (29セル)
IV/V 7 Mk 211 mod 3 Mk 176 mod 0 (64セル) Mk 177 mod 0 (32セル)
VI/VII 15 Mk 235 mod 0 Mk 176 mod 2 (64セル) Mk 177 mod 3 (32セル)

ミサイル弾薬庫と発射機を兼ねるケース(ミサイル・セルと呼称)を最小単位としており、これを8セル集めたのが1モジュールとなる。このうち、Mk 158/159発射機については、構成するモジュールのうち1つずつ、ミサイル・セル3つ分のスペースを使ってミサイル再装填用のクレーン(Replenishment handling system equipment)を設置した ストライク・ダウン・モジュールが組み込まれていた。しかし洋上でのミサイル再装填がきわめて困難であることから[1]、Mk 176/177では組み込まれなくなった[3]

またその後、モジュール単位ではなく、単一のセルでの搭載が可能な機種(Single Cell Launcher:SCL)も開発されており、Mk 25キャニスターによるESSMの試射を成功させている。

ミサイル・セル

ミサイル・セルの高さとミサイルの種類。

ミサイル・セルには、全高が異なる3つの機種があり、大型なものほど、より多くの種類のミサイルを運用することができる。アメリカ海軍がこれまでに運用しているMk 41はいずれもStrike-Lengthモジュールを使用している。

Strike-Length
もっとも大型のモジュールで、全高は約7.7メートル(303インチ)、トマホーク巡航ミサイルスタンダード SM-2/SM-6艦隊防空およびSM-3弾道弾迎撃ミサイルシースパローおよびESSM個艦防空ミサイル垂直発射式アスロック対潜ミサイルを運用することができる。
Tactical-Length
中型のモジュールで、全高は約6.8メートル(266インチ)、全高が大きいトマホーク巡航ミサイルや、スタンダードミサイルのなかでも大型であるSM-2ERやSM-3、SM-6は搭載できないが、それ以外のミサイルは運用できる。
Self-Defense
全高約5.3メートル(209インチ)。もっとも小型だが、Tactical Lengthモジュールと同様のミサイルを運用することができる。

また、それぞれのミサイルは、専用のキャニスターを介してミサイル・セルに収容される。Mk 13はスタンダードSM-2MR、Mk 14はトマホーク、Mk 15はVLA用のキャニスターであり、シースパロー/ESSM用のキャニスターとしては、1発のみ収容できるMk 22と、1セルに4発収容できるMk 25がある[1]。また、弾体が大型化したスタンダードSM-2ERやSM-6、BMD用のSM-3を収容するためのMk 21も開発され、配備されている。

運用と搭載艦

Mk 41を最も早く搭載したのはタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の6番艦「バンカー・ヒル」以降の艦で、上表の通り61セルのMk 158発射機2基を搭載し、Mk 41 VLSのシステム全体の呼称としてはMk 41 Mod 0とされている。続いて、スプルーアンス級駆逐艦の一部艦が前甲板のアスロック8連装発射機Mk 16にかえて61セルのMk 158発射機1基を搭載し、これはMk 41 Mod 1とされた[1]

またアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦では、設計時よりMk.41の搭載が前提となっていたため、その搭載するイージスシステムおよびトマホークシステムの重要なサブシステムと位置づけられて、セル数について徹底的な検討が行われたことが知られている[4]。この結果、フライトI/IIではMk 41 Mod 2として、前甲板に29セル、後甲板に61セルを搭載した[1]

一方、カナダイロクォイ級ミサイル駆逐艦は、1990年代初頭に行われたTRUMP改修によって29セルのMk 41を搭載し、アメリカ国外では初の搭載例となった。これは、スタンダード SM-2MRの運用にのみ用いられている。これに対し、1994年より就役を開始したドイツ海軍ブランデンブルク級フリゲートではシースパロー艦対空ミサイルの運用に用いられており、逆に1996年より就役を開始した日本むらさめ型護衛艦においては、16セルで垂直発射式アスロック(VLA)の運用のみが行われており、艦対空ミサイルについては別に搭載した Mk 48 VLS16セルで運用している。たかなみ型護衛艦からは32セルのMk 41にまとめられた。

この他にも採用が相次ぎ、現在では11ヶ国の海軍で16クラス、173隻の艦艇に搭載されて運用されている。

搭載艦

 アメリカ海軍

 イギリス海軍

 オーストラリア海軍

 オランダ海軍

海上自衛隊

 カナダ海軍

 スペイン海軍

 タイ海軍

 大韓民国海軍

 中華民国海軍

 デンマーク海軍

 トルコ海軍

 ドイツ海軍

 ニュージーランド海軍

 ノルウェー海軍

モデル一覧[5]
mod セル数 搭載例
0 122
(61+61)
タイコンデロガ級
1 61 スプルーアンス級
2 90
(29+61)
アーレイ・バーク級フライトI/II、こんごう型[6]
4 16 ブランデンブルク級
T 29 イロクォイ級
5 8 アンザック級
7 96
(32+64)
アーレイ・バーク級フライトIIA
(DDG-79-90)
8 16 サーリヒレイス級
9 むらさめ型
10 32 ザクセン級
11 40 デ・ゼーヴェン・プローヴィンシェン級
12 48 アルバロ・デ・バサン級
13 32 李舜臣級
15 96
(32+64)
アーレイ・バーク級フライトIIA
(DDG-91-)
16 8 アデレード級
17 試験艦「あすか」[7]
18 32 たかなみ型[8]
20 96
(32+64)
あたご型[8]
22 16 ひゅうが型
29 32 あきづき型[9] [10]

脚注

注釈

  1. ^ a b 後日装備予定
  2. ^ TRUMP改修により後日搭載
  3. ^ 改修により搭載予定

出典

参考文献

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、Mk 41 (ミサイル発射機)に関するカテゴリがあります。


「Mk 41 (ミサイル発射機)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「Mk_41_(ミサイル発射機)」の関連用語

Mk_41_(ミサイル発射機)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Mk_41_(ミサイル発射機)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのMk 41 (ミサイル発射機) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS