新型FFMとは? わかりやすく解説

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新型FFM

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/07 13:23 UTC 版)

新型FFM
三菱重工案イメージCG
基本情報
艦種 多機能護衛艦(FFM)
運用者
建造期間 2025年 -
就役期間 2028年以降 (予定)
計画数
  • 10隻→12隻
  • 11隻
建造数 0隻(2025年2月現在)
前級 もがみ型
次級 最新
要目
基準排水量 4,880トン前後
満載排水量 6,200トン
全長 約142m
最大幅 約17 m
機関方式 CODAG方式
主機
推進器 スクリュープロペラ×2軸
最大速力 30ノット以上
兵装
搭載機 哨戒ヘリコプター
または飛翔型センサ×1機
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新型FFM(しんがたFFM、英語: New FFM)は、日本海上自衛隊が計画している護衛艦。当初22隻の建造が計画されていたもがみ型護衛艦が12隻のみの建造となったため、その代案として10隻の建造が予定されていたが[1]、のちに建造予定数が増やされ[2]、現時点では2024年度からの5年間で計12隻が調達される計画となっている[3]。 

またオーストラリア海軍も本型の採用を発表しており、日本での建造分および自国での建造分をあわせて11隻を導入予定とされる。

来歴

海上自衛隊は、平成30年(2018年)度計画よりもがみ型護衛艦(30FFM)の建造を開始した[4]。これは護衛隊群に属さない「10番台護衛隊」所属のDD・DEが受け持っていた近海域での各種戦任務に加えて対機雷戦をも引き受けることを狙った新型艦であり、当初計画では22隻を建造して、「10番台護衛隊」所属のDD×8隻とDE×6隻、更に掃海隊群所属の掃海艦艇8隻を置き換える事になっていた[4]

しかし2023年1月25日、防衛装備庁は「『新型FFMに係る企画提案契約』の参加希望者募集要領」を公示し、令和6年(2024年)度以降の建造分は新型艦に移行することとなった[5][6]。これが本型であり、同年3月31日ジャパン マリンユナイテッドおよび三菱重工業と企画提案契約を締結した。その後、6月15日、各社から企画提案書を受領し、8月25日、本級に係る調達の相手方を決定し[7]、主契約者:三菱重工業、下請負者:ジャパン マリンユナイテッドとなった。 同年8月31日、2024年度計画艦からは新型FFMが計12隻建造されることになり、来年度予算では2隻の建造に1,747億円を要求した[8]。1、2番艦の就役は2028年を予定している[9]

もがみ型FFMは年2隻の建造ペースだが、新型FFMはそれよりもピッチを上げ、2024年度から2028年度までのわずか5年間で計12隻が調達される予定[10]。2024年12月27日、令和7年度防衛予算案では新型FFM3隻分の建造費3148億円(1隻当たり1049億3000万円)が予算計上された[11]

設計

船体

もがみ型と比べて、基準排水量にして3,900トンから4,880トンへと大型化している[12]。船体はステルス性を持ち、幅、長さ共にもがみ型より一回り大型になっている。また、前級のもがみ型では顕著な船尾シアが付されていたが本型では廃されている[13]。さらに、イメージ画像を見る限りでは艦橋構造がもがみ型より大きく変化している[14]

機関

ガスタービンエンジン1基、ディーゼルエンジン2基のCODAG方式が採用予定。最大速力は30ノット以上になるとされている。

推進器はもがみ型と同じく、従来どおりのスクリュープロペラで2軸装備とされている。

装備

C4ISRシステム

下記のように23式艦対空誘導弾の搭載を予定していることから、多機能レーダーにミサイル誘導用のイルミネーターを加えるとともに、日本版NIFC-CAと評されるFCネットワークも搭載する予定である[12]。ただし多機能レーダーは元来が個艦防空レベルのOPY-2をベースとすることから、将来的には能力向上の必要性が指摘されている[12]

船体装備ソナーとしては、探信儀と機雷探知機を兼ねる多機能ソナーを採用する予定である[12]

武器システム

装備面で最大の変更点が、艦対空ミサイルとして23式艦対空誘導弾(A-SAM)、またスタンド・オフ・ミサイルとして12式地対艦誘導弾能力向上型の搭載を予定している点である[12]。A-SAMは陸上自衛隊で運用されている03式中距離地対空誘導弾(改善型)を基に開発された長射程艦対空ミサイルであり、対潜ミサイルである07式垂直発射魚雷投射ロケット(07VLA)とともに、艦首甲板の32セルのVLS(垂直発射システム)に収容される[12]

それ以外の装備品はおおむねもがみ型のものを踏襲する予定である[12]

比較

同規模艦艇の比較
もがみ型 新型FFM 054A型 054B型 C・ベルガミーニ級 A・ゴルシコフ級 31型
船体 満載排水量 5,500 t 6,200 t 4,050 t 6,000 t 5,950 t 5,400 t 5,700 t
全長 133.0 m 142.0 m 134.0 m 150.0 m 142.0 m 135.0 m 138.7m
全幅 16.3 m 17.4 m 15.0 m 18.0 m 19.4 m 16.0 m 未公表
主機 方式 CODAG CODAD CODLAG CODAG CODAD
出力 70,000 ps 不明 28,200 ps 未公表 43,500 shp 55,000 ps 未公表
速力 30 kt 27 kt 未公表 27 kt 29-30 kt 28 kt
兵装 砲熕 62口径5インチ単装砲×1基 60口径76mm単装砲×1基 100mm単装砲×1基 64口径127mm単装砲×1基[注 1] 70口径130mm単装砲×1基 70口径57mm単装砲×1基
62口径76mm単装砲×1基 70口径40mm機関砲×1基
機関銃架×2基 不明 1130型CIWS×2基 1130型CIWS×1基 80口径25mm単装機銃×2基 パラシ CIWS×2基 7.62mm機関銃×8挺
ミサイル Mk.41 VLS×16セル[注 2]
07式[15][16]
Mk.41 VLS×32セル VLS×32セル
HQ-16 / CY-3)
VLS×32セル
(HQ-16FE)
シルヴァーA50 VLS×16セル
アスター15/30
3K96 VLS×32セル
(9M96E2-1/E、9M110)
VLS×24セル
シーセプター
SeaRAM 11連装発射機×1基 HHQ-10 24連装発射機×1基
17式 4連装発射筒×2基 YJ-83 4連装発射筒×2基 テセオ 4連装発射筒×4基[注 3] UKSK VLS×16セル
P-800カリブルNK
Mk.41 VLS[注 4]
SLCMSSM
水雷 324mm3連装短魚雷発射管×2基 4連装短魚雷発射管×2基
艦載機 SH-60K×1機 Z-9C / Ka-28×1機 Z-20×1機 NFH90×1機 Ka-27×1機 AW159 / AW101×1機
同型艦数 6隻/12隻予定
(4隻艤装中)
12隻予定 40隻/50隻予定
(6隻艤装中)
2隻/20隻予定 12隻予定[注 5]
(2隻艤装中)
2隻 / 15隻予定
(1隻艤装中、5隻建造中)
10隻予定
(4隻建造中)


輸出

豪州輸出に向けた官民合同推進委員会で展示された新型FFMの模型(2024年12月)

防衛装備庁三菱重工業は2023年11月7日から9日まで、オーストラリアのICCシドニーで開催された海洋防衛の総合イベント「INDO PACIFIC 2023」にて、新型水上戦闘艦「FFM-AAW」の模型展示を行った。この「FFM-AAW」は本級の派生型であるとも言われる[17]

2024年2月21日、オーストラリア国防省が発表した海軍再編計画でアンザック級フリゲートの後継として検討候補の一つに日本のもがみ型護衛艦が入っている。その他の候補はドイツのMEKO A-200型フリゲート、スペインのAlfa3000、韓国の大邱級フリゲートBatchIIもしくはBatchIIIである[18]。どれをベースとするかは年末までには決定されるという[19]

同年5月7日、政府がオーストラリア海軍が導入を計画する新型艦の入札に参加する方向で検討に入ったと複数の関係者が明かした[20]。同年11月8日、オーストラリア放送協会は、共同開発国の候補を日本(つまりFFM-AAW)とドイツに絞り込んだこと、契約額は10年間で110億豪ドル(現在の日本円に換算して約1兆1200億円)に及ぶと報じた[21]

2025年8月4日(日本時間)、オーストラリア政府はFFMの提案を採用する方針を固めたと日本政府関係者に伝えた。日本にとって戦後初の軍艦の輸出案件となる。今後は三菱重工業と協議を重ね年内の契約締結を目指す。日本による完成品の装備品輸出は戦後ではフィリピンへの警戒管制レーダーに次いで2例目となる[22]

同8月5日、オーストラリア政府は次期フリゲートについて、三菱重工業による提案を選定したと正式に発表した[23]。11隻のうち最初の3隻は日本で、その後は西オーストラリア州オースタルによって建造するとし[24]、1隻目は2030年の運用開始を目指すとしている[25]。三菱重工業は令和6年度型護衛艦(4,800トン型)を提案していたことを公式に発表し[26]、またオーストラリアのコンロイ防衛産業相は、戦闘システムの変更とオーストラリアの国内法で義務付けられている規格変更を除けば、基本的に三菱重工業の提案をそのまま導入することを表明した[27]

同型艦

海上自衛隊

艦番号 艦名 建造 起工 進水 就役 所属
FFM-13 令和6年度計画艦
(06FFM)
三菱重工業長崎造船所 2025年度予定
(令和7年度)
未定 2028年度予定
(令和10年度)
未定
FFM-14 令和6年度計画艦
(06FFM)
ジャパン マリンユナイテッド 2025年度予定
(令和7年度)
未定 2028年度予定
(令和10年度)
未定
FFM-15 令和7年度計画艦
(07FFM)
2026年度予定
(令和8年度)
未定 2029年度予定
(令和11年度)
未定
FFM-16 令和7年度計画艦
(07FFM)
2026年度予定
(令和8年度)
未定 2029年度予定
(令和11年度)
未定
FFM-17 令和7年度計画艦
(07FFM)
2026年度予定
(令和8年度)
未定 2029年度予定
(令和11年度)
未定

オーストラリア海軍

艦番号 艦名 建造 起工 進水 就役 所属
未定 未定 三菱重工業 2026年度予定 未定 2030年度予定 未定
未定 未定 未定 未定 未定 未定
未定 未定 未定 未定 2034年度予定 未定
未定 未定 オースタル 未定 未定 未定 未定
未定 未定 未定 未定 未定 未定
未定 未定 未定 未定 未定 未定
未定 未定 未定 未定 未定 未定
未定 未定 未定 未定 未定 未定
未定 未定 未定 未定 未定 未定
未定 未定 未定 未定 未定 未定
未定 未定 未定 未定 未定 未定

脚注

注釈

  1. ^ 汎用型での装備、対潜型は127mm砲を76mm砲に変え62口径76mm単装砲が2基
  2. ^ 6番艦まで後日装備。
  3. ^ 汎用型での装備、対潜型はテセオ用とミラス用が各2基
  4. ^ 後日装備
  5. ^ イタリア海軍で汎用型と対潜型が計10隻、エジプト海軍で汎用型が2隻

出典

  1. ^ 防衛装備庁、新型FFM建造に関する企画提案を三菱重工業とジャパンマリンユナイテッドの2社と契約(高橋浩祐) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2023年8月26日閲覧。
  2. ^ 海自新型FFMは12隻を建造へ 2024年度防衛予算概算要求の主な注目点(高橋浩祐) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2023年9月1日閲覧。
  3. ^ 海自新型FFMは2024年度からわずか5年間で12隻を調達へ 防衛装備庁が明かす”. 高橋浩祐. Yahoo!ニュース. 2023年11月3日閲覧。
  4. ^ a b 石井 2024a.
  5. ^ 新型FFMの企画提案を公募」『世界の艦船』2023年2月24日。
  6. ^ 「新型FFMに係る企画提案契約」の参加希望者募集要領(防衛装備庁公示第141号 5.1.25)
  7. ^ 新型FFM(護衛艦)に係る調達の相手方の決定について2023年8月25日、防衛装備庁。2023年8月27日閲覧。
  8. ^ 高橋浩祐 (2023年8月31日). “海自新型FFMは12隻を建造へ 2024年度防衛予算概算要求の主な注目点”. Yahoo!ニュース. 2023年8月31日閲覧。
  9. ^ もがみ型とどう違う? 海自「次世代護衛艦」の全貌 ひと回り大型化で「何でも屋」に割り切り?”. 乗りものニュース (2023年10月9日). 2023年10月18日閲覧。
  10. ^ 高橋浩祐 (2023年11月2日). “海自新型FFMは2024年度からわずか5年間で12隻を調達へ 防衛装備庁が明かす”. Yahoo!ニュース. 2023年11月3日閲覧。
  11. ^ 高橋浩祐 (2024年12月27日). “2025年度防衛予算案、海自「新型FFM」3隻の建造費に3148億円 もがみ型護衛艦から2倍以上”. Yahoo!ニュース. 2025年4月22日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g 石井 2024b.
  13. ^ Luck, Alex (2023年11月10日). “Japan's MHI shows 'New FFM' Frigate at Indopacific 2023” (英語). Naval News. 2023年11月11日閲覧。
  14. ^ 新型FFM(護衛艦)の主契約企業は三菱重工に決定(JSF) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2023年11月23日閲覧。
  15. ^ 見えてきた「もがみ型護衛艦の“次”」=売る気満々!? 海自新型FFMの“ファミリー構想”とは?”. 乗りものニュース (2023年11月22日). 2023年12月4日閲覧。
  16. ^ 高橋浩祐「もがみ型護衛艦のVLS、7番艦「によど」から就役時に設置」『Yahoo!ニュース』2025年3月30日。
  17. ^ 見えてきた「もがみ型護衛艦の“次”」=売る気満々!? 海自新型FFMの“ファミリー構想”とは?”. 乗りものニュース (2023年11月22日). 2023年11月22日閲覧。
  18. ^ Trevithick, Joseph (2024年2月20日). “Australia To Bet Big On Heavily Armed, Optionally Crewed Warships” (英語). The War Zone. https://www.twz.com/sea/australia-to-bet-big-on-heavily-armed-optionally-crewed-warships 2024年2月21日閲覧。 
  19. ^ Shimbun, The Yomiuri (2024年9月2日). “Japanese Government Tells Australia of Willingness to Cooperate in Building Warships; New Model Based on Mogami-Class Frigate” (英語). japannews.yomiuri.co.jp. 2024年11月8日閲覧。
  20. ^ 豪海軍新型艦の入札参加を検討 海自護衛艦ベースで共同開発」『共同通信』。オリジナルの2024年5月7日時点におけるアーカイブ。2024年5月12日閲覧。
  21. ^ 豪新型艦、日本と独に絞り込みか 最大11隻、契約額は1兆円規模」『共同通信』2024年11月8日。2024年11月8日閲覧。
  22. ^ オーストラリア次期フリゲート艦、日本製採用へ 初の輸出案件に」『日本経済新聞』。2025年8月4日閲覧。
  23. ^ Marles, Richard [英語版]; Conroy, Pat [英語版] (5 August 2025). “Mogami-class frigate selected for the Navy’s new general purpose frigates” (Press release). Minister for Defence.
  24. ^ Needham, Kirsty; Kelly, Tim; Pal, Alasdair (2025年8月5日). “Japan clinches landmark $6.5 billion warship deal with Australia to counter China”. Reuters. https://www.reuters.com/world/asia-pacific/japan-clinches-landmark-65-billion-warship-deal-with-australia-counter-china-2025-08-04/ 
  25. ^ 豪、次期フリゲート艦に三菱重を選定 日本9年越しの巻き返し」『ロイター通信』2025年8月5日。
  26. ^ 防衛・宇宙セグメント 艦艇・特殊機械事業部『豪州次期汎用フリゲートの共同開発・生産について』(プレスリリース)三菱重工業、2025年8月5日https://www.mhi.com/jp/news/25080503.html 
  27. ^ Marles, Richard; Conroy, Pat (2025-08-05), Press Conference, Canberra, Minister for Defence, https://www.minister.defence.gov.au/transcripts/2025-08-05/press-conference-canberra 

参考文献

関連項目




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