IRON_MAIDENとは? わかりやすく解説

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アイアン・メイデン

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/09 01:20 UTC 版)

アイアン・メイデン
基本情報
出身地 イングランドロンドン
ジャンル
活動期間 1975年 -
レーベル
公式サイト Iron Maiden.com
メンバー
旧メンバー 別記参照
ロゴ

アイアン・メイデン: IRON MAIDEN)は、イングランドヘヴィメタルバンド

世界で最も著名なHR/HMバンドの一つ。1980年代初頭にイギリスで発生したヘヴィメタルの潮流「NWOBHM」(New Wave Of British Heavy Metal)の代表格として、ブームの一翼を担い地位を確立。1990年代末からラインナップが安定し、21世紀に入ってもなお精力的に活動している。アルバムの総売り上げは、1億枚以上を記録[4]。バンド名は、中世ヨーロッパの拷問器具「鉄の処女」に由来する。

バンド公式の日本語転写は無いが、日本国内盤を販売した東芝EMIが定める「アイアン・メイデン」と本項では記述する。

来歴

ポール・ディアノ期

1980年デビュー当時

ブルース・ディッキンソン期

ブルース・ディッキンソン(Vo) 加入初期 (1982年)

ブレイズ・ベイリー期

ブレイズ・ベイリー(Vo) 2005年

その後、ヘヴィメタル停滞という時代の流れなどにより、バンドの活動はスケールダウンしたため、ソロ活動に行き詰まっていたブルース・ディッキンソン、エイドリアン・スミスにオファーをし1999年に再加入。それにしたがってブレイズが脱退する形となった[† 2]。これにより、バンドはトリプル・ギターの全6人編成になる。

リユニオン期

21世紀も精力的に活動中である。メンバーチェンジの多いバンドとしても知られるが、ブルースとエイドリアンの復帰以降は20年以上同じメンバーで安定している。現在のメンバー構成での活動期間が、トータルでも連続でもアイアン・メイデン史上最も長い。

音楽的特徴

1980年デビュー当時。左ポール・ディアノ(Vo) 右スティーヴ・ハリス(B)

初期にはハードロックに強く影響されながらも、ディアノの歌唱法のようにパンク・ロックの荒々しさを取り入れたサウンドを身上としており[† 3]NWOBHMの黎明期からシーンの牽引力として同時期の代表格バンドとなった。3rdアルバム『魔力の刻印 - The Number Of The Beast - 』では、前任者よりはるかに広い声域を持つヴォーカリストのブルース・ディッキンソンが加入し、メロディアスかつ整合性を重視する傾向が強まった。以降はパンクの要素が減少し、流麗なギターワークを主軸とした音楽性が固定化した。2000年代からはデイヴ、エイドリアン、ヤニックの看板ギタリスト三人が揃い踏みとなった編成でよりヘヴィなサウンドとなっている。

プレイにおける特徴としては、まずベースがアンサンブルを牽引する、ないしベースが中核として構築される特異なスタイルが挙げられる。強力な2フィンガー奏法によるペンタトニックスケールを基本としたフレーズ3連譜を主体とするソロによって組み立てられたスティーヴのプレイは後述するギターの構成の補強のみならず、スティーヴ自身の存在感を強くアピールしている。ギターにおいては音数多く刻まれる硬質なリフや、叙情的で勇壮なツイン・リードのコンビネーションなどが総ての時代を通じての特徴であり、時に過剰なほどにインタープレイが盛り込まれもする[† 4]。ヘヴィメタルの性質上総じてアップテンポな楽曲が多い反面、リーダーでメイン・ソングライターのスティーヴがイエスジェネシスジェスロ・タルといったプログレッシヴ・ロックのファンであることを公言しており、影響も受けていることから、複雑な展開と動静の変化を盛り込んだ長尺の楽曲も多い。そうした独特の音楽性ゆえ、ラッシュカンサスプログレッシヴ・ハードロックとは別個に、後輩のメタリカなどと同様にプログレッシブ・メタルの源流のひとつとされることもある。

逆に『第七の予言 - Seventh Son Of A Seventh Son - 』以降のアルバムにおいては、歌詞の面で同じフレーズを多用するようになり、歌詞の長さが短くなる傾向にある。

エディ

エディ・ザ・ヘッド(Eddie the Head、通称エディ)はデビュー時からのバンドのキャラクターであり、アルバムやシングル盤のジャケットにデビュー時から常に登場する。またライヴのステージ上に巨大なエディが出現することもある。ゾンビであり、『死霊復活』のジャケットに描かれた墓碑銘には"Edward T.H."とある。過去には凍結されたり、復活したり、ピラミッドになっていたり、宇宙へ向かったりしたこともある。作者はイギリス人アーティスト、デレク・リッグス

エディは、2008年にワールドツアー用にチャーターされたアストライオス航空ボーイング757垂直尾翼にペイントされた。そのB757を同社の操縦士でもあるディッキンソンが自ら操縦している。同機は"エアフォースワン"に掛けて"Ed Force One"と呼ばれた。機材が重くなったので、2016年にはボーイング747-400(ジャンボジェット)の改造機に交替している[16]

ロゴ

特徴的なロゴは、1979年リリースのThe Soundhouse Tapes以来(広告では1977年から使用している[17])、バンドのすべての作品を飾ってきた。本書体は1976年の映画地球に落ちてきた男のポスターのデザイン(en:Vic Fairが手掛けた)に由来しており、en:Gordon Giltrapナナ・ムスクーリ[18]も使用しているが、スティーヴ・ハリスは建築製図者の訓練経験を元に自らデザインしたと主張している[19]

ロゴタイプにはいくつかバリエーションがあり、1995年リリースのX ファクターでは横長のものが、1998年リリースのヴァーチャル・イレヴンから2010年リリースのファイナル・フロンティアまではR, M, Nの下端が他の文字の下端からはみ出ていないものがそれぞれ使用された。

メンバー

※2021年7月時点

現ラインナップ

ライヴサポート
  • マイケル・ケニー (Michael Kenney) - キーボード (1986年 - )
  • サイモン・ドーソン (Simon Dawson) - ドラムス (2025年 - )

旧メンバー

アルバムごとの編成

タイトル 担当楽器
ボーカル ギター ギター ギター ベース ドラムス キーボード
鋼鉄の処女
(1980)
ポール・ディアノ デイヴ・マーレイ デニス・ストラットン N/A スティーヴ・ハリス クライヴ・バー N/A
キラーズ
(1981)
エイドリアン・スミス
魔力の刻印
(1982)
ブルース・ディッキンソン
頭脳改革
(1983)
ニコ・マクブレイン
パワースレイヴ
(1984)
サムホエア・イン・タイム
(1986)
第七の予言
(1988)
ノー・プレイヤー・フォー・ザ・ダイイング
(1990)
ヤニック・ガーズ マイケル・ケニー
フィア・オブ・ザ・ダーク
(1992)
X ファクター
(1995)
ブレイズ・ベイリー
ヴァーチャル・イレヴン
(1998)
マイケル・ケニー & スティーヴ・ハリス
ブレイヴ・ニュー・ワールド
(2000)
ブルース・ディッキンソン エイドリアン・スミス スティーヴ・ハリス
死の舞踏
(2003)
ア・マター・オブ・ライフ・アンド・デス〜戦記
(2006)
ファイナル・フロンティア
(2010)
魂の書〜ザ・ブック・オブ・ソウルズ〜
(2015)
戦術
(2021)

一覧表


ディスコグラフィ

スタジオ・アルバム

売上枚数

アメリカでのアルバム販売枚数の10位までを記す。
(アメリカSoundScan社集計による)

  1. 死霊復活 - Live After Death (1985年、558,578枚)
  2. フィア・オブ・ザ・ダーク - Fear Of The Dark (1992年、421,786枚)
  3. 魔力の刻印 - The Number Of The Beast (1982年、357,463枚)
  4. 頭脳改革 - Piece Of Mind (1983年、347,400枚)
  5. パワー・スレイヴ~死界の王、オシリスの謎~ - Powerslave (1984年、299,022枚)
  6. サムホエア・イン・タイム - Somewhere In Time (1986年、291,420枚)
  7. ブレイヴ・ニュー・ワールド - Brave New World (2000年、282,460枚)
  8. ベスト・オブ・ザ・ビースト (ベスト盤) - Best Of The Beast (1996年、251,112枚)
  9. 第七の予言 - Seventh Son Of A Seventh Son (1988年、218,056枚)
  10. ノー・プレイヤー・フォー・ザ・ダイイング - No Prayer For The Dying (1990年、213,745枚)


全世界でのアルバム売上トップ10位[22]

(ChartMastersより)

  1. 魔力の刻印 - (1982年、1,882万枚)
  2. 頭脳改革 - (1983年、1,245万枚)
  3. パワースレイヴ - (1984年、901万枚)
  4. フィア・オブ・ザ・ダーク - (1992年、750万枚)
  5. サムホエア・イン・タイム - (1986年、652万枚)
  6. 第七の予言 - (1988年、646万枚)
  7. 鋼鉄の処女 - (1980年、630万枚)
  8. キラーズ (アイアン・メイデンのアルバム) - (1981年、570万枚)
  9. ノー・プレイヤー・フォー・ザ・ダイイング - (1990年、340万枚)
  10. ブレイヴ・ニュー・ワールド (アイアン・メイデンのアルバム) - (2000年、302万枚)

ヒットチャート

イギリスでの年間ヒットチャートの第1位を記す。
(イギリスThe Official UK Charts Company調べによる)

アルバム
  1. 魔力の刻印 - The Number Of The Beast (1982年、2週TOP)
  2. 第七の予言 - Seventh Son Of A Seventh Son (1988年、1週TOP)
  3. フィア・オブ・ザ・ダーク - Fear Of The Dark (1992年、1週TOP)
  4. ファイナル・フロンティア - The Final Frontier (2010年、1週TOP)
  5. 魂の書〜ザ・ブック・オブ・ソウルズ〜 - The Book Of Souls (2015年、1週TOP)
シングル
  1. Bring Your Daughter To The Slaughter (1991年、2週TOP)

来日公演

脚注

注釈

  1. ^ 1976年と記述されている資料もある[5]
  2. ^ マネジメントはサンクチュアリで残った。
  3. ^ ポールはパンクのサウンドや精神への愛を語っている[14]。一方で、スティーヴ・ハリスはパンクを嫌っており、影響を明確に否定している[15]
  4. ^ 必然的にリフを担当するプレイヤーが不在となるため損なわれる低音の音圧をスティーヴが補うことで可能となる。

出典

  1. ^ Phillips, William; Cogan, Brian (2009). Encyclopedia of Heavy Metal Music. Santa Barbara, California: ABC-CLIO. p. 117. ISBN 978-0-313-34801-3 
  2. ^ a b Weber, Barry. Iron Maiden Biography, Songs, & Albums - オールミュージック. 2021年9月1日閲覧。
  3. ^ Daniels, Neil (2016). Iron Maiden – Updated Edition. Voyageur Press. p. 21. ISBN 0-7603-5254-2 
  4. ^ "Bruce Dickinson: 'Iron Maiden's Bruce Dickinson - a man child in satan's sweet shop'". The Sunday Times.
  5. ^ a b IRON MAIDEN (アイアンメイデン)のプロフィールローソンネットショッピングロッピー
  6. ^ IRON MAIDEN公式サイト・バイオグラフィー
  7. ^ アイアン・メイデン、15枚目の新作『ファイナル・フロンティア』が初登場1位 - RO69
  8. ^ IRON MAIDEN公式サイト・THE FINAL FRONTIER WORLD TOUR 2011記念企画!!
  9. ^ IRON MAIDEN 待望の新作が遂に発売! - HMV
  10. ^ IRON MAIDEN、8年振りとなる来日公演が4/20-21に両国国技館にて開催決定! - 激ロック
  11. ^ アイアン・メイデン、新ツアー<Legacy Of The Beast>開幕”. BARKS (2018年5月29日). 2018年5月30日閲覧。
  12. ^ アイアン・メイデン、9月にニュー・アルバム『戦術』リリース”. Barks (2021年7月20日). 2021年7月21日閲覧。
  13. ^ アイアン・メイデン、最新作で全米アルバム・チャートにおいて史上最高位を記録”. NME JAPAN (2021年9月13日). 2021年9月29日閲覧。
  14. ^ ポール・ディアノ 独占インタビュー”. WARD LIVE MEDIA PORTAL (2020年5月14日). 2022年9月5日閲覧。
  15. ^ アイアン・メイデンの「価値」はファンが決めること スティーヴ・ハリスが語るその軌跡”. Rolling Stone Japan (2019年7月21日). 2024年10月27日閲覧。
  16. ^ アイアン・メイデンの航空機、地上移動中に損傷 チリで足止め”. AFPBB News (2016年3月13日). 2016年3月15日閲覧。
  17. ^ Font used by Iron Maiden and others” (英語). 2023年12月9日閲覧。
  18. ^ Nana Mouskouri Nana Live At The Royal Albert Hall UK vinyl LP album (LP record)” (英語). 2023年12月9日閲覧。
  19. ^ "Part 2: Groundwork". Iron Maiden: In Profile. EMI. 1998.
  20. ^ IRON MAIDENがニコ・マクブレインのツアー活動からの引退を発表! 後任はBRITISH LIONのサイモン・ドーソン!” (2024年12月9日). 2024年12月12日閲覧。
  21. ^ アイアン・メイデン、最終公演からニコ・マクブレインの舞台裏映像公開” (2024年12月11日). 2024年12月13日閲覧。
  22. ^ Erel, Eray (2022年4月2日). “The Top 10 Highest-Selling Iron Maiden Albums Until 2023” (英語). MetalCastle - All about Rock and Metal. 2023年4月13日閲覧。

参考文献

外部リンク


鉄の処女

(IRON_MAIDEN から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/23 01:41 UTC 版)

鉄の処女(てつのしょじょ)は、中世ヨーロッパ刑罰拷問に用いられたとされる、女性の形をしていて中に人間を入れることのできる空洞がある像。「空想上の拷問具の再現」とする説も強い。

鉄の処女の複製品(明治大学博物館所蔵)

概要

聖母マリアをかたどったともいわれる女性の形をした、高さ2メートルほどの大きさの、中が空洞の人形である。前面は左右に開くようになっており、中の空洞に人間を入れる。木製のものがほとんどである。木製のものは十分な強度を持たせるために肉厚な構造になっているが、鉄製のものは比較的薄いため、写真(上)でも判別できる。左右に開く扉からは、長い釘が内部に向かって突き出しており、本体の背後の部分にも釘が植えられているものもある。犠牲者の悲鳴は外に漏れないように工夫されていた。

ドイツ語では「アイゼルネ・ユングフラウ(Eiserne Jungfrau)」、英訳は「アイアン・メイデン(Iron Maiden)」、または「ヴージェノヴ・ニュアレンバーグ(Virgin of Nuremberg)」(「ニュルンベルクの処女」の意味)と表記される場合もある。1857年に、伝説に基づいてドイツニュルンベルクで作られた模造品が特に有名であり、各地の模造品はこの量産品である。名称とは裏腹に大部分のものは木製の本体で、鉄製なのはのみ、または釘とその留め金と扉の蝶番のみである。

使用方法

罪人はこの鉄の処女の内部の空洞に入れられ、扉を閉じられる。同時に扉の部分にある多くのに全身を刺される。現存するものは釘の長さが様々で、生存空間はほとんどないようなものから、身体を動かせば刺し傷で済みそうなものまでがあった。罪人が死亡した後に、前の扉を開けることなく死体がそのまま下に落ちるように「落し扉構造」があったという噂を記述した文献がある。

現存する鉄の処女の一覧

様々な拷問具。右後方にあるのが鉄の処女の複製品
ドイツ
イギリス
  • 拷問博物館
  • リーガースブルグ魔女博物館
  • スコットランド国立博物館
  • チリンガム城
イタリア
  • サンジミヤーノ拷問博物館
スイス
  • キーブルク城博物館
オランダ
  • アムステルダム拷問博物館
チェコ
  • クシヴィオクラート城
エストニア
日本

上記以外で存在が確認できる鉄の処女は以下の通り。

オーストリア
  • ウィーン拷問博物館
クロアチア

鉄の処女は実在したか

「中世の拷問具」として博物館にも展示されている鉄の処女であるが、実際に中世にこのような拷問具があったかどうかに関しては、存在を記述したものが19世紀のロマン小説や、風聞に基づくものばかりで、公的な資料や記録が皆無な為、その実在を疑う研究者も多い。

実在説の論証とされる、欧州各地で展示されている実物も、ほとんどが19世紀半ば以降の再現品である。ニュルンベルクの鉄の処女も、19世紀に作られたオリジナルは空襲で焼失している。現存する鉄の処女はすべて18世紀末以後に作られたものであり、伝説で語られている中世のオリジナルは存在していないのである[1]

各地の鉄の処女の原型は、オーストリアの「ファイストリッツ城ドイツ語版」にあるものと、1857年にニュルンベルクで作られたものの2種に分けられる。

「恥辱の樽」のひとつ。
18世紀ラーヴェンスブルクの「恥辱のマント」。
向かって右には「酔っ払いと喧嘩者」、正面上側には「ののしる者」「ばくち打ち」・下側には「密漁者」、左には「ハーブと根菜の盗人」とある

中世から近世にかけてヨーロッパで行われた「恥辱の刑」と呼ばれる、晒し刑に用いられる懲罰具(拷問処刑具ではない)として、「処女のマントドイツ語版」、また「恥辱の樽」と呼ばれたものがあったが、これは当時の刑罰の資料によれば、受刑者は樽から頭と足だけを出して市内の広場に立たされる、というものである。

ビーレフェルト大学ドイツ語版ヴォルフガング・シルトドイツ語版教授は、鉄の処女はこの恥辱の樽の内側に、19世紀になってから鉄の針を付け、頭の部分を覆うよう改造されたものであるとしていて、以下のように、欧州各地の鉄の処女を調査・検分し、すべてがニセモノだと断定している。

ファイストリッツ城にある鉄の処女は、城主ディートリッヒ男爵がフランス革命時にニュルンベルクから購入し修復改造したもので、男爵がオーストリアで上記の恥辱の樽に、17世紀にヴェネツィアで流行したマリア像の頭部と、内部の棘を付けたものとされる。

ニュルンベルクにあったという鉄の処女は、1857年に当地の銅版彫刻師のG・F・ゴイダーが、ファイストリッツ城にあったものを手本に、ヴィルトという錠前屋に作らせた何体かのうちのひとつである。1944年に連合軍の爆撃で焼失した。多数作られたゴイダーの再現品は見世物として珍重され、欧州各地に売られていった。

ローテンブルクの中世犯罪博物館の鉄の処女は、釘を外して展示しており、これは釘の存在が製造当初からのものであるか、後の改造によるものであるか、断定できないためと説明されている。これも構造的に恥辱の樽の改造品であり、ゴイダーが何体か作らせたもののひとつで、1889年にロンドンの美術商がこれを買い、1968年のオークションで中世犯罪博物館が競り落としたものである。

イタリアの拷問博物館 (Museo della tortura) の「ニュルンベルクの処女 (La Vergine di Norimberga)」も、ゴイダーの作らせたもののひとつである。

ウィーンの拷問博物館の鉄の処女は、本体部分も鉄製で、人形の頭部は固定され、円筒形の胴体の部分のみが左右に開いて罪人を入れるようになっているが、シルト教授はこれもおそらく後世の模造品であるとしている。

日本では明治大学博物館(刑事部門)に鉄の処女の複製品が展示・収蔵されている。これは本体も鉄製となっていて、生存空間がほとんどないタイプである。あくまで複製品であって中世のオリジナル品ではない。

シルト教授は以上の調査の結果、鉄の処女は恥辱の樽を元に作られたものであり、「鉄の処女伝説は根拠のないフィクションである」と結論付けている。

また、「キリスト教徒である拷問執行者らが、彼らの崇拝対象である聖母マリアを拷問道具の意匠に用いること自体がそもそもあり得ない」との議論も強い[2]

鉄の処女伝説

鉄の処女には、ハンガリー伯爵夫人エリザベート・バートリが作らせたものとする伝説がある。メイドの少女がエリザベートのでとかしていた所、櫛に絡まりついた髪を誤って引っ張ってしまった。激怒したエリザベートは、髪留めでメイドの胸を何度も突き刺し心臓をえぐった(鉄の棒で殴り殺したという説もある)。返り血がかかった手を拭うと肌が金色に輝いたように見えたため、エリザベートは「処女を浴びるとが綺麗になる」と思い込み、配下の者に命じて村中の処女を集めさせた。その血液を絞り取るために特別に作らせた器具が鉄の処女であるとされる。

その後エリザベートの鉄の処女は改良され、搾り取られた処女の血液は管を通してバスタブへと注ぎ込まれる細工が組み込まれた。犠牲者が死んだ後にの扉を開けると棺の床が抜けて死体は水で城の外に流されるようになっており、そのための水路には刃物が設置されていたので、死体が城外に出る頃には原形をとどめていなかったという。しかしこれはあくまで風説のレベルに過ぎず、実在を示した証拠は何もない。

鉄の処女に類似した拷問あるいは処刑用の刑具として、両腕で罪人を抱きかかえて、像の胸部から飛び出した釘が身体を刺すという「アペガの像」や、像の前に落とし穴があって、近づいた罪人を穴に落すという「バーデン・バーデンの処女」などが、文献上は存在しているが、現物は一切存在しない。

脚注

  1. ^ ヴォルフガング・シルト著『鉄の処女、詩と真実 (Die eiserne Jungfrau. Dichtung und Wahrheit)』(2000年、ローテンブルク犯罪博物館叢書第三巻)
  2. ^ 浜本隆志『拷問と処刑の西洋史』新潮社〈新潮選書〉、2007年。ISBN 978-4106035951 

参考文献

  • 柳内伸作『拷問・処刑・虐殺全書―現代も行なわれている残酷刑のすべて』ベストセラーズ、1999年。ISBN 978-4584183984 
  • 高平鳴海『拷問の歴史』新紀元社〈Truth In Fantasy〉、2001年。ISBN 978-4883173570 
  • マイケル・ケリガン『図説 拷問と刑具の歴史』岡本千晶、原書房、2002年。ISBN 978-4562035526 
  • ジェフリー・アボット『処刑と拷問の事典』熊井ひろ美、原書房、2002年。ISBN 978-4562035496 
  • マルタン・モネスティエ『図説死刑全書完全版』吉田春美、原書房、2002年。ISBN 978-4562034789 
  • 秋山裕美『図説 拷問全書』筑摩書房〈ちくま文庫〉、2003年。ISBN 978-4480037992 
  • 大場正史『西洋拷問刑罰史』(新装版)雄山閣、2004年。ISBN 978-4639018711 
  • 晨永光彦『世界拷問刑罰史―どこまで人は残酷になれるのか!?』日本文芸社、2007年。ISBN 978-4537251166 
  • 浜本隆志『拷問と処刑の西洋史』新潮社〈新潮選書〉、2007年。ISBN 978-4106035951 

出典

  • 浜本隆志『拷問と処刑の西洋史』新潮社〈新潮選書〉、2007年。ISBN 978-4106035951 

関連項目

外部リンク


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