iron overloadとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > iron overloadの意味・解説 

鉄過剰症

(iron overload から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/06 21:04 UTC 版)

鉄過剰症(てつかじょうしょう、: Iron overload)は、体内にが過剰に蓄積されることによって起こる症状。急性の鉄中毒(Iron poisoning)とは区別される。

骨髄異形成症候群・再生不良性貧血といった難治性貧血の治療で輸血を受け、鉄が過剰に体に取り込まれることによって発症する。また、遺伝子疾患によって引き起こされる場合もある。特有の自覚症状は無いが、進行すると肝障害や心不全などの臓器障害を引き起こす危険性がある。

細かくは、肝臓や脾臓に鉄が滞留する血鉄症(Hemosiderosis)と肝臓、膵臓、皮膚に貯蔵鉄が沈着する血色素症(Hemochromatosis)に分けられる。

メカニズム等

人間には体内から鉄を排出する生理学的機序が存在しないため[1]、余剰の鉄はフェリチンヘモジデリンに貯蔵隔離される。過剰の鉄はこれらのタンパク質に結合していない自由鉄[2]を生じる。自由鉄がフェントン反応を介してヒドロキシラジカル(OH•)等の活性酸素を発生させる。発生した活性酸素は細胞のタンパク質やDNAを損傷させる。活性酸素が各臓器を攻撃し、肝臓には肝炎肝硬変肝臓がんを、膵臓には糖尿病膵臓癌を、心臓には心不全を引き起こす[3]

マウスに鉄を過剰に投与することによる心臓障害モデルで、タウリンの投与により心筋のアポトーシスの抑制、細胞の繊維化の抑制が認められ、生存率の増加、血圧などの症状が改善された[4][5]

診断

血清フェリチンの値が1,000ng/mL以上で肝機能、臓器障害が現れる。輸血が40単位を超えた場合も、肝臓、心臓、膵臓などで臓器障害が生じる可能性が高く目安とされている。血清フェリチンの値と受けた輸血の単位数によって総合的に診断される。

治療

臓器に沈着した鉄を除去する治療と、鉄沈着により生じた臓器障害に対する対症療法が行われる。

  • 瀉血療法:遺伝性ヘモクロマトーシスの場合は、定期的に瀉血を行う。
  • 鉄キレート療法:体内から過剰な鉄を排出させることで、輸血による鉄過剰症の致死的な臓器障害リスクを低減し、生命予後の改善が期待される。

関連疾患

関連項目

出典・脚注

  1. ^ MSDマニュアル.
  2. ^ NTBI, non-transferrin-bound iron とも呼ばれる。
  3. ^ 輸血後鉄過剰症の診療ガイド
  4. ^ Oudit, Gavin Y; Trivieri, Maria G; Khaper, Neelam; Husain, Taneya; Wilson, Greg J; Liu, Peter; Sole, Michael J; Backx, Peter H (2004). “Taurine supplementation reduces oxidative stress and improves cardiovascular function in an iron-overload murine model”. Circulation (Am Heart Assoc) 109 (15): 1877-1885. doi:10.1161/01.CIR.0000124229.40424.80. https://doi.org/10.1161/01.CIR.0000124229.40424.80. 
  5. ^ 薩秀夫「タウリンの多彩な生理作用と動態」『化学と生物』第45巻第4号、2007年、273-281頁、doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.45.273 
  6. ^ エクジェイド:日本初の経口鉄キレート薬 日経メディカル 記事:2008/6/18 閲覧:2019/3/7

参考文献




「iron overload」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「iron overload」の関連用語

iron overloadのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



iron overloadのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの鉄過剰症 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS