食品における乳酸菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/17 07:43 UTC 版)
乳酸菌は、さまざまな発酵食品の製造に用いられてきた。主なものとしては、ヨーグルトや乳酸飲料などの発酵乳製品、キムチや一部の漬物、ピクルス、ザワークラウト、テンペ、味噌などの発酵植物製品、塩辛、鮒寿司などのなれ寿司などが挙げられる。乳酸菌による発酵は、これらの食品に酸味を主体とした味や香りの変化を与えるとともに、乳酸によって食品のpHが酸性側に偏ることで、腐敗や食中毒の原因になる他の微生物の繁殖を抑えて食品の長期保存を可能にしている。 また、乳酸菌は発酵の際にビタミンCも産生する菌株があり、馬乳酒などは発酵前の生乳等のビタミンCよりも濃度が高くなる。牛乳にはビタミンCがほとんど含まれていない。その理由は、子牛が自らビタミンCを合成できるので牛乳から摂取する必要がないためである。牛乳を発酵して作ったヨーグルトでは微量ながらビタミンCが含まれている。一方、他の発酵食品の製造過程において、乳酸菌が雑菌として混入することが問題になることもある。ラクトバシラス属のL. fructivorans、L. hilgardii、L. paracasei、L. rhamnosusなど、アルコールに強い乳酸菌は、酒類の醸造、発酵中に混入・増殖すると、異臭・酸味を生じて酒の商品価値を失わせてしまう。日本酒醸造の現場ではこれを火落ちまたは腐造と言い、これらの菌は「火落ち菌」として造り酒屋たちから恐れられている。また火落ちにより混入した乳酸菌によって醸造後に腐敗することを防止するための手法が経験的に編み出され行われている。これは、「火入れ」と呼ばれる低温殺菌法で、醸造した酒を65℃の温度で23秒間加熱すればこれらの菌を不活化できる。火入れは江戸時代頃から行われていた。 ワインにおいても同様に保存中に乳酸菌発酵によって異臭や酸味を生じることがあり、その原因を究明しようとしたルイ・パスツールの研究によって、食物が腐敗するメカニズムが解明され、またパスチャライゼーションと呼ばれる低温殺菌法の発明につながった。 L. lactisは、ナイシンとよばれる抗菌ペプチド(バクテリオシン)を生産する。ナイシンは、黄色ブドウ球菌やリステリア菌などの食品腐敗菌に対して高い抗菌活性を持つため、その抗菌作用を期待して食品添加物として世界中で広く用いられている。
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