でんき‐すいしん【電気推進】
電気推進
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/25 08:42 UTC 版)


電気推進(でんきすいしん、英語:electrically powered spacecraft propulsion)は、宇宙空間で用いられるロケットエンジンシステムの一種。現在一般的な化学ロケットと違い、電気エネルギーを用いて推力を得る。 電気推進の推力は、化学推進に比べて著しく小さいが、比推力が非常に高いのが特徴[1]。
電気推進は、電圧を上げれば上げるほど、吹き出す物質の速度を上げることが可能であり、エネルギーを投入すればするだけ、力が出せる。排熱の問題はあるが、理論的には、10倍の電力を入れれば、10倍の力が出せるし、1万倍の電力を入れれば、1万倍の力が出せる。
歴史は古く、1906年にロバート・ゴダードが実現性を検討したノートが残っている[2]。また、コンスタンチン・ツィオルコフスキーにより、1911年に概念が発表された[3]。
電気推進の種類
電気推進は、推進剤の加速に用いられる力の種類により分類される[4]。
静電加速型
系が加速する方向に静的な電場を作り、クーロン力によって推進剤を加速するタイプ。イオンの加速を空間電位に頼っているため、宇宙機が帯電しないよう中和器を装備する必要がある。
電熱加速型
電気エネルギーで推進剤を加熱し、ノズルなどを用いて熱エネルギーを運動エネルギーに変換して推力を得るタイプ。ノズルは固体材料を用いたもののほか、磁場などを制御してノズルの役割を担わせるものもある。
電磁加速型
ローレンツ力を用いているもののほか、電場と系の加速の方向が互いに異なるタイプの推進系は電磁加速型と呼ばれる。プラズマの性質を利用して加速するため、中和器が必要ない。
複合型
- VASIMR - DCアークジェットよりもはるかに高いプラズマ温度を達成することが可能である。電熱加速のシステムとも、電磁加速のシステムであるともいえる。
出典
- ^ “Electric versus Chemical Propulsion”. Electric Spacecraft Propulsion. ESA. 2007年2月17日閲覧。
- ^ Choueiri, Edgar Y. (2004). “A Critical History of Electric Propulsion: The First 50 Years (1906–1956)”. Journal of Propulsion and Power 20 (2): 193–203 .
- ^ A Critical History of Electric Propulsion:The First Fifty Years(1906-1956) - AIAA-2004-3334 (PDF)
- ^ “電気推進ロケットエンジン技術の現状と展望” (pdf). プラズマ・核融合学会 (2017年9月7日). 2020年12月11日閲覧。
関連項目
電気推進
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「コロンビア級原子力潜水艦」の記事における「電気推進」の解説
電気推進とは、モーターを用いてスクリューを回転させるか、ウォータージェット・ポンプを駆動することで船を推進させる推進システムである。これは、「全電動艦」を実現する統合電源方式コンセプトの一部である。電気推進の採用により、放射雑音だけでなく艦のライフサイクルコストも低減される。 ターボ・エレクトリック方式は20世紀前半のアメリカ海軍の主力艦(戦艦や航空母艦)に採用されていた。その後、原子力潜水艦 USS タリビー (SSN-597)とUSS グレナード・P・リプスコム (SSN-685) の2隻に採用されたが、信頼性や出力不足、整備の負担が大きいなどの問題があった。2013年現在、原子力ターボ・エレクトリック方式を採用しているのはフランス海軍のル・トリオンファン級原子力潜水艦のみとなっている。 概念的には、電気推進は推進システムの一部に過ぎない。つまり、原子炉や蒸気タービンを置き換えるものではなく、従来の原子力潜水艦に搭載されていた減速機を置き換えるものである。しかし、1998年の時点で既にアメリカ国防科学委員会は減速機も蒸気タービンも不要となる、より高度な電磁推進の採用を想定している。 2014年には、ノースロップ・グラマンがタービン発電機の主契約者に選ばれた。タービン発電機は蒸気タービンの機械エネルギーを電力に変換する。発生した電力は艦内に供給されるとともにモーターを駆動して艦を推進させるのに利用される。 さまざまなモーターが軍艦・民間船を問わず広く利用・開発されている。アメリカ海軍が潜水艦搭載用に検討しているものには、ジェネラル・ダイナミクスとニューポート・ニューズ造船所が開発を進める永久磁石同期モーターと、アメリカン・スーパーコンダクター(英語版)とジェネラル・アトミクスが開発を進める高温超電導同期モーターがある。 最近では、アメリカ海軍はラジアル・ギャップ型の永久磁石同期モーター(ズムウォルト級ミサイル駆逐艦では先進誘導電動機を採用した)に注力しているようである。永久磁石モータはバージニア級後期生産型だけでなく将来型潜水艦への適用可能性を確認するためLSV-II(Large Scale Vehicle II, バージニア級の1/4スケールモデルで、新技術のテストプラットフォームとして使用されている)において試験が行われている。シーメンスが開発した永久磁石モーターは、212A型潜水艦に採用されている。 イギリス海軍の次期潜水艦(ヴァンガード級後継艦)に関するレポートでは、耐圧船殻の外に取り付けたモーターによるシャフトレスドライブ(Submarine Shaftless Drive, SSD)を採用するとされている。SSDはアメリカ海軍も検討したが、コロンビア級で採用するかどうかは不明である。現在の原子力潜水艦では蒸気タービンは減速機とスクリューまたはポンプジェット推進装置の回転軸に接続されており、推進軸は耐圧船殻を貫通させる必要がある。これに対して、SSDでは蒸気タービンで発電機を駆動して得た電力をモーターあるいはポンプジェット推進装置に供給するだけであるため、耐圧船殻を貫通する推進軸が不要となる(ポンプジェット推進を用いない構成のSSDも存在する)。
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