離陸からエンジン異常発生まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 06:45 UTC 版)
「ユナイテッド航空232便不時着事故」の記事における「離陸からエンジン異常発生まで」の解説
中部夏時間14時9分、当該機はステープルトン国際空港を離陸した。副操縦士の操縦により、予定の巡航高度3万7,000フィート(約1万1,300メートル)まで平常通り上昇した。オートパイロットが作動され、指示対気速度270ノット(約時速500キロ)に飛行速度を維持するモードが使用された。飛行計画ではマッハ数0.83で巡航することになっていた。 離陸から約1時間7分後の15時16分10秒、大きな爆発音が発生し続いて機体が激しく振動し始めた。乗員はエンジン計器を点検し、尾部にある第2エンジンに異常が発生したと特定した。ただちにオートパイロットが解除され、機長の指示でエンジン停止時のチェックリストが開始された。リストの最初の項目はエンジン停止であったが、第2エンジンのスロットルが動かなくなっていた。次の項目は燃料の供給停止だったが、燃料レバーも動かなくなっていた。ここで航空機関士が防火バルブを閉じるよう提案し、ようやく第2エンジンを停止できた。異常発生からここまで約14秒だった。 さらにチェックリストを続ける中で、航空機関士は機体の3系統あるすべての油圧系統の圧力計と油量計がいずれもゼロを指していることに気づいた。副操縦士は、機体が右旋回で降下しており制御不能であると報告した。機長が操縦を交代して機体が操縦操作に反応しないことを確認した。機長は左翼にある第1エンジンの推力を減らし、機体は左右の水平を取り戻し始めた。機長は、風力駆動の発電機を展開した。この発電機から予備の油圧ポンプに給電される仕組みだったが、ポンプのスイッチを入れても油圧は回復しなかった。この時点で3系統ある油圧系統がすべて機能しなくなっていた。事故後の調査で明らかになることだが、第2エンジンの破損により3系統あるすべての油圧配管が切断されたためであった。 15時20分、乗員はミネアポリスの航空路交通管制センター(Air Route Traffic Control Center)に無線連絡し、緊急援助ともっとも近い飛行場への進路誘導を要請した。このとき管制センターは、デモイン国際空港へ向かうことを提案した。デモインはアイオワ州の州都で、デンバーとシカゴを結ぶ線上にあたる。15時22分、管制官は乗員にUAL232便がスーシティの方角へ飛行していると知らせた。そして、管制官はスーシティに向かうか尋ね、乗員はそうすると回答した。UAL232便がスーシティのスー・ゲートウェイ空港に針路をとるよう、航空交通管制のレーダー誘導が始まった。 この間の15時21分、乗員は、ユナイテッド航空の運航管理部門にACARS(航空機と地上を結ぶ文字データを中心とした無線データ通信システム)でメッセージを送信した。そして無線交信を要請し、2分後に交信に成功した。15時25分、乗員は運航管理部門との交信において同航空の整備施設にただちにつないでほしいと要請し、同時に救難信号の「メーデー」を発信した。
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