鉄道の踏面ブレーキ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/02 19:37 UTC 版)
鉄道の踏面ブレーキにおいては、ブレーキが掛かると車輪の踏面に制輪子が押し当てられる。これにより制動力を得るだけではなく、車輪の踏面をこすって綺麗に整える効果もある。 踏面ブレーキ用の制輪子は当初は木で作られていたが、現代では普通鋳鉄制輪子、合成制輪子、焼結合金制輪子などが用いられている。 普通鋳鉄制輪子は鋳鉄で作られており、安価でブレーキ効果に優れ、天候によるブレーキ効果の変化が少ないこともあって、広く用いられている。欠点としては、磨耗量が多く他の制輪子に比べて頻繁に交換が必要で、また制輪子そのものの重量が重い。また速度によってブレーキ効果が大きく変動し、高速域では効きにくく、低速になるに従って急激にブレーキ効果が高くなるため、高速鉄道では扱いにくい。磨耗量を減らすためにマンガンやクロムを添加した合金鋳鉄制輪子もある。これは高速域での摩擦特性が改善されており、高速鉄道や降雪地域などにおいて広く採用されている。 合成制輪子は、合成樹脂に金属粉末や黒鉛を混合して加熱整形したものである。普通鋳鉄制輪子の3分の1ほどと軽量で磨耗量が少なく、速度による摩擦係数の変化が少なく高速域にも対応する。一方、投入初期には摩擦面が鏡面化する、車輪とレールの間の粘着が低下する、あるいは雨天時にブレーキ力が落ちる傾向がある、などとされたが、ブレーキライニングメーカーの努力により研磨材配合比率の最適化で解決されている。混合する添加物の配合比率や粉末形状を改良した、増粘着合成制輪子や耐雪形合成制輪子などが開発されている。ライニング生産は自動車用が圧倒的であり鉄道用からは撤退したメーカーも多いが、自動車用組成のラインアップが豊富であるため、その中から選択すれば十分事足りる。 焼結合金制輪子は鉄粉、銅、黒鉛、金属酸化物などの混合物を加圧整形して焼結したものである。主に鉄系を基材とするものが在来線の高速車両などで用いられている。新幹線のディスクブレーキのブレーキパッドにも銅系を基材とするものが用いられている。金属成分主体のライニングはヨーロッパ製に多く見られ、日本製は樹脂系が多い。
※この「鉄道の踏面ブレーキ」の解説は、「制輪子」の解説の一部です。
「鉄道の踏面ブレーキ」を含む「制輪子」の記事については、「制輪子」の概要を参照ください。
- 鉄道の踏面ブレーキのページへのリンク