金融ビッグバンとその後
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/10 07:36 UTC 版)
バブル崩壊によって、銀行が受けた損失は横並びであったため、政府は従来の金融行政(護送船団方式)の見直しを迫られた。日本政府は1990年代後半の「金融ビッグバン」で様々な規制緩和を実施した。日本版「金融ビッグバン」によって起こった金融に関する変化は、「貯蓄(間接金融)から投資(直接金融)へ」という流れであった。間接金融優位を直接金融優位へと移行させる政策として、金融自由化と護送船団方式の解体が行われた。 経済学者の飯田泰之は「現在(2010年)の先進国では、国民の貯蓄率を高めることで資本を増やすモデルは通用しない。現在では、貸出先・投資先の国際化が進んでおり、仮に国内で貯蓄が増えても、その貯蓄が国内投資に向かうとは限らない」と指摘している。 岩田規久男は「日本は戦後から1980年代まで、銀行型間接金融中心の企業金融が大きな問題を抱えずに済んだのは、経済全体が右肩上がりで、全体が貸し倒れリスクが小さかったからである。これからの企業金融は銀行がリスクの大半を負担するのではなく、個人投資家・機関投資家が広く薄くリスクを負担する構造に変化すべきである」と指摘している。 経済学者の竹中平蔵は「高度経済成長期は、企業がいかにお金を安定的に回すかが重要であった。企業が設備投資すればGDPが伸び、家計も潤うという循環があったからである。そのため、間接金融にも大きな意味があった。間接金融は今日でも重要ではあるがその一方で、個人の金融資産の利回りを上げる必要が出てきたため、金融における資産運用(直接金融)が、より重要になってきている」と指摘している。 大和総研は「多くの新興企業は土地などの担保がないため、外部からの資金調達が必要となるが、日本は間接金融が優位であるため開業資金の調達が難しい」と指摘している。 森永卓郎は「日本が欧米のに比べて間接金融の比重が高いのは事実であるが、それは日本は中小企業が多いからである。中小零細企業は、間接金融に頼らざるをえない」と指摘している。森永は「間接金融を守る以外、日本の中小企業を守る方法はない。間接金融から直接金融に転換させろという議論は、ベンチャー以外の中小企業は潰せと言っているに等しい」と指摘している。 経済学者の松原隆一郎は「金融自由化と金融機関同士の競争の中でも、現金・預金などの安全資産の保有は続いている」と指摘している。 エコノミストの河野龍太郎は「資金調達構造は、日本が間接金融中心なのに対し、アメリカは直接金融中心だとされている。多くの人は、こうした経済システムの違いに注目するが、一方を高く評価しているときには他方を低く評価する。しかし、時期によって好不調はあるが、日米ともに他国と比べれば経済はうまく機能している。一国経済の経済システムは、各国の経済事情によるため他国と異なるのは普通である。法律・税制など様々な制度に大きく依存している。経済システムは長期的に見るべきであり、不況期に『システムの問題』と安易にいうべきではない」と指摘している。
※この「金融ビッグバンとその後」の解説は、「間接金融」の解説の一部です。
「金融ビッグバンとその後」を含む「間接金融」の記事については、「間接金融」の概要を参照ください。
- 金融ビッグバンとその後のページへのリンク