重金属の体内への利用と公害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/17 06:56 UTC 版)
「重金属」の記事における「重金属の体内への利用と公害」の解説
自然界にも重金属は低濃度ながら存在し、いくつかは必須元素のうちのミネラルとして認知されている。これ以外にもセレンは一部のタンパク質に含まれており、バリウムの硫酸塩は体に吸収されず排出されるため造影剤として利用されている。また微量なビスマスや金が薬品として使われることがある。 古来から顔料として使用されていたものの中には鉛白や丹など重金属を含む物が多く、薬として服用もされていた。 しかしいずれも過剰な摂取は生体機能を安定に保てなくなり中毒性を示す。特に、酸やアルカリと反応しやすい重金属は毒性が強い傾向がある。強毒性を示す炭素と結合する水銀(有機水銀)やカドミウムなどがよく知られるが、錫や鉛の有機化合物、テルルなどにも毒性がある。放射能を持つ(≒放射性物質である)ウランは酸に反応してイオン化し環境に流出してしまう。 20世紀に入ってからは鉱工業が隆盛し、土壌、大気、利水などへ大量に放出された。これにより重金属を食物や吸気から必須量以上に大量に体内に蓄積しまうことが原因で、生体機能に重度の障害を引き起こす公害病が多発するようになった。これらはいわゆる鉱毒と言われるが、鉱石に含まれる硫黄、ヒ素、リン、クロムなどが精錬の過程でガスや廃液として放出され、これが直接の原因であることもある。 毒である認識がないまま工業的に大量生産され公害となった例は多い。第二次世界大戦後には殺虫剤として有機水銀化合物が大量に製造・使用されていた。顔料の鉛白は化粧品として流行した。逆に毒であるという誤解を生んだ例もある。緑色の顔料として19世紀に開発された花緑青は銅を含むが同時に有毒な亜ヒ酸を含み、これが大量に出回って多くの死者が出た。このことが、後に発生した足尾鉱毒事件などもきっかけとして、銅に発生する緑青は猛毒という根強い誤解を生んでいる。 重金属鉱山では、比重が大きい重金属は鉱滓ダムなどで沈殿させることで環境流出をかなり低下させることができる。しかし、採掘が不採算となったり、戦後に発生した公害訴訟による多額の債務弁済で廃坑・閉山・倒産となると、鉱滓の多くは客土などの簡易的な処理をしたままになり、これが長期間の風雨や地震で再び露出し、残存していた重金属が流れ出すなど、問題になっている。ほとんどの鉱山は山深い山村にあるため、金属メーカの管理を離れた後ではその管理処分が、廃坑のある地域を属する地方自治体の行財政を圧迫する。 なお、人体には体内に過剰に取り込んでしまった重金属を毛髪に蓄積して排出するシステムを備えていることが確認されている。
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