適用条件の難しさなどの問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 06:38 UTC 版)
「危険運転致死傷罪」の記事における「適用条件の難しさなどの問題」の解説
危険運転致死傷罪の構成要件は、運転行為の中でも特に危険性の高いものに限定されているため、居眠り運転や単なる速度超過(20~30km/hオーバーで走る)などでは適用対象にならなかったり、または適用如何が裁判で争われることがある。 車を運転する大多数の国民が、誰もが犯しかねない僅かなミスで本罪のような重大な処罰の対象となりかねないのは適当でないことから、本罪の構成要件は限定されている。例えば、過労運転や持病を有する状態の運転は、ケースによって強い非難には値しなかったり、様々な要因の複合作用があることなどから、危険運転の要件から外されている。無免許運転なども、実質的に危険なのは「運転技能を有していないこと」であり、「無免許であること自体」が危険なのではないことから、本罪の要件とはなっていなかった(独立法施行により対象となった)。 しかしながら、無免許運転や速度超過を行う悪質な運転者が本罪の適用を受けないなどの事例もあり、特に被害者感情との軋轢を生む例が少なくなかった。立法当時から、無免許運転等が本罪の構成要件に当たらないことについては、一部の交通事故遺族から批判の声があった。また、条文そのものが曖昧であることや、死亡事故などで立証が困難との理由で本罪の適用が見送られるケースも多く、本罪の適用が約2割にとどまっていることが、一部マスコミの報道で明らかになっている。 また、2011年4月に栃木県鹿沼市で児童6人が死亡したクレーン車事故では、運転者がてんかんの持病を隠して運転免許証を取得したにもかかわらず(運転免許に関する欠格条項問題も参照)、同法の適用条件外で適用が見送られた。これを受け、遺族らが持病隠しによる免許取得につき、危険運転罪の適用による厳罰化を求めて、約17万人の署名を法務大臣に提出した。法務大臣小川敏夫は、法改正を行うとこれまで過失犯で処理していたものが故意犯に近い量刑になるということもあり、いますぐ法改正を行うとは言えないと述べている。 さらに2012年4月に、京都府亀岡市で無免許運転の自動車が集団登校の列に突っ込み、生徒と保護者が死傷した事故でも、無免許運転・少年法の理由で適用が見送られており、今後の課題になっている。また、2015年6月に大阪・ミナミで飲酒運転によって3人を死傷させた運転者に対しても、「事故原因は飲酒運転ではなく、アクセルとブレーキの踏み間違えによるもの」との理由付けで、危険運転致死傷罪の適用が見送られているが、事故被害者の遺族からは、この判決への批判が強い。
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