軍事的効果と防衛手段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 02:22 UTC 版)
「高高度核爆発」の記事における「軍事的効果と防衛手段」の解説
十分に高高度での爆発であれば、熱線や衝撃波、放射線の地上への影響は最小限度であり、直接の死者は発生しないと考えられ、理屈上は非致死性兵器となるが、交通機関、産業機械、医療機器等のコンピュータが突然機能しなくなった場合の死亡事故や社会的な混乱と、銀行・証券・その他企業での情報機器からの情報喪失は場合によっては従来型の地上への核攻撃以上に悲惨な事態と経済的破滅状態を引き起こすと考えられる。高高度核爆発は電子機器類が主なターゲットであり、被害は精密電子情報機器が普及している先進国の方がより甚大となる。 社会が高度情報化した先進国はこの種の攻撃への防衛がより強く求められるが、現在実戦配備中の弾道ミサイル防衛(BMD)では対流圏外から落下中のミサイルの撃墜が主な手段であり、上昇中や成層圏・宇宙空間での撃墜は開発途上であるので、高高度で爆発する核ミサイルへの対処は現状ではかなり難しいと考えられる。 アメリカ合衆国国防省では「EMP Hardening」という用語でEMPに対する抗甚性技術を表現し、EMPに対して情報通信システムを強化するよう求めている。EMPのエネルギーを一重のシールドで防ぐことは出来ないので、多層の防護を施す必要がある。 こういった新たな形での核攻撃に対しては、日頃から情報・通信機器の電磁的なシールドの強化(光ケーブル化、電子機器や配線をアルミホイルのような金属箔で包む等)やバックアップ体制強化によってしか被害を最小化できない。 EMP攻撃に対する低コストで完全な防護策は存在しないが、仮想敵国がEMP攻撃能力を持つアメリカ、ロシア連邦、中華人民共和国、大韓民国、台湾はある程度の対策を進めている。日本は遅れており、防衛省の電子装備研究所が2017年秋から防護技術の動向調査を始める段階である。 電磁パルスによって、政府の意思決定や命令伝達、反撃・迎撃用ミサイルなどの電子機器が無力化された場合はどうするか?という問題は、間隙を突かれ突破されたフランスの防衛線「マジノ線」の名をとって電子のマジノ線と呼ばれることもある。ただし核保有国の多くは、核ミサイルの一部を潜水艦に搭載して、仮想敵国が所在特定や攻撃をしにくい外洋で行動させている。このためEMPで先制攻撃を行っても、核兵器による報復を完全に封殺することは難しい。
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