証券口座乗っ取り事件
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証券口座乗っ取り事件 | |
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標的 | 証券会社13社(2025年5月16日現在)の証券口座及び投資家 |
日付 | 遅くとも2025年1月以降[1] |
攻撃手段 | 不正アクセス |
攻撃側人数 | 不明 |
損害 | 売却金額 約1,612億円、買付金額 約1,437億円(2025年4月現在)[1] |
証券口座乗っ取り事件(しょうけんこうざのっとりじけん)とは、2025年に発覚した、日本の証券会社の顧客の口座が不正アクセスされ、その口座で不正な株式取引が行われた事件である。
概要
何者かが実在する証券会社を装ったフィッシングサイト等で窃取したとみられるログインIDやパスワードによる、インターネット上での不正アクセスを行い、不正アクセスした口座を勝手に操作して口座内の株式等を売却し、その売却代金で相場操縦とみられる目的で他の株式を買い付けた不正取引および事件である。
金融庁が各証券会社から受けた報告によると、2025年1月から4月までに、不正アクセス件数6.380件、不正取引件数3,505件、不正取引による売却金額約1612億円、買付金額約1437億円といった被害が確認されている[1]。なお、不正取引の複数の被害者がマスコミの取材に対してフィッシングの被害について否定的な見解を示す証言をしており、SNSではマルウェア感染などの別の可能性を指摘する声が上がり[2]、コンピュータウイルスによる個人情報の抜き取りが行われたとの見方をする専門家もいる[3]。
日本国外の犯罪組織の関与を指摘する意見も存在し、犯罪ジャーナリストの多田文明は海外の犯罪グループが、国内の犯罪グループと手を組んでやったのではないかとの見方を示している[4]、週刊文春は、警察当局は海外もからんだ組織犯罪との見方を強めていると報じ、中国系の犯罪グループが関与している可能性を指摘した[5]。証券会社の偽サイトを分析すると、プログラムの一部に運送会社の偽サイトに使われていたことを示す文字列が確認され、過去の偽サイトを転用していた可能性が指摘されている。プログラムには中国語の表示も確認された[6]。SNSの分析によると、中国語を話す人物による攻撃が増えていて、東南アジアに潜伏して活動しているとの見方がある[6]。
香港やマレーシアでも同様の手口と見られる不正アクセスと相場操縦事件が起きており、香港では2024年10月から11月にかけてハッキングされた証券口座を通して大量の買い付けが行われたことが確認されている[7]。
2025年3月、楽天証券の一部利用者が保有していた株式を勝手に売却され、中国株を買われる不正取引が多発したことがきっかけで発覚した[2]。3月21日、楽天証券はフィッシング詐欺によると見られる被害が相次いでいると公表[8]、利用者に向けた注意喚起と中国株11銘柄の買い注文を停止した[2]。3月25日、楽天証券は買い注文を停止した中国株を582銘柄に拡大した[9]。
3月26日以降、楽天証券とSBI証券が中国株の買付注文を停止したタイミングで、日本の株価が100円から200円程度の小型株の株価が不自然な乱高下を繰り返すようになったと東洋経済オンラインが報道している[10]。犯罪グループは大量に買い付けて相場をつり上げ、高値で売りつけたと見られている。また、不自然な値動きをした銘柄は100を超えると見られている[11]。
不正取引が確認された証券会社
2025年4月30日現在、SMBC日興証券、SBI証券、大和証券、野村證券、松井証券、マネックス証券、三菱UFJ eスマート証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、楽天証券の9社[12]だったが、みずほ証券でも5月13日にも不正なログインによる取引が確認され、不正アクセスが確認された証券会社は10社となった[13]。5月16日までに、岩井コスモ証券、岡三証券、GMOクリック証券でも不正ログインによる取引が確認されている[14]。
証券会社の対応
- 2025年5月2日、日本証券業協会は被害が確認された9社を含む大手証券会社10社が被害の状況に応じて補償に応じる方針を決めたと明らかにした[15]。
- 2025年5月8日、SBI証券は自社で扱う全ての中国株の新規買い注文を停止した[16]。
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政府機関の対応
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著名人の被害
5月1日、個人投資家のテスタが自身の楽天証券の口座が口座乗っ取りの被害にあったことをX(旧 Twitter)に投稿した[18]。その関連報道により個人投資家の防犯意識の向上や、証券会社のセキュリティ対策見直しの機運が強まった[19]。
二次的なフィッシング行為
不正取引の被害者や、不正アクセス対策をしようとする人を標的とした二次的なフィッシング行為も確認されている。不正アクセス対策として口座ロックをしようとする人を標的とした、真偽不明の電話番号を紹介するSNSの情報や、証券会社からのフィッシング詐欺の注意喚起メールを装った、フィッシング詐欺のメールが確認されている[20]。
また、日本証券業協会が被害者への補償に応じる方針を発表した翌日に、補償手続きの案内を装ったメールが送られた事例が確認されている[21][4]。
脚注
出典
- ^ a b c インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引による被害が急増しています 金融庁
- ^ a b c “楽天証券、“不正取引”多発 「当社からの漏洩ではない」としつつも緊急対応に追われる事態に”. ITmedia news. (2025年3月24日) 2025年5月3日閲覧。
- ^ "対策に多要素認証 詐欺メール"日本を標的"8割以上…証券口座"乗っ取り"急増". テレ朝 news. 23 April 2025. 2025年5月6日閲覧。
- ^ a b “「証券口座乗っ取りの被害補償します」 便乗詐欺メールが急増 専門家「慌てるな」”. テレ朝News. (2025年5月7日) 2025年5月9日閲覧。
- ^ “「中国系の犯罪グループが…」相次ぐ“証券口座乗っ取り、総額は950億円? 証券各社が繰り出した「責任逃れ」に不満が噴出”. 文春オンライン (2025年5月13日). 2025年5月13日閲覧。
- ^ a b “相次ぐ証券口座乗っ取り 被害者のパソコン デジタルフォレンジック解析で分かったこと パスワードは限界?”. NHK NEWS WEB (2025年5月20日). 2025年5月23日閲覧。
- ^ 小林啓倫 (2025年5月16日). “被害額は売却・買付で計3000億円以上、NISAブームに冷や水を浴びせた証券口座乗っ取り事件はなぜ起きたのか?”. JBPress. 2025年5月18日閲覧。
- ^ "楽天証券でフィッシング詐欺?被害相次ぐ 株式「勝手に売買」訴えも". 毎日新聞. 21 March 2025. 2025年5月6日閲覧。
- ^ “楽天証券、“不正取引”対策で買い注文を停止した中国株が11銘柄→582銘柄に 理由は?”. ITmedia news. (2025年3月26日) 2025年5月4日閲覧。
- ^ “〈株価操縦?〉ネット証券が中国株の買い注文を停止した途端に日本の小型株で「不自然な値動き」”. 東洋経済オンライン . (2025年4月2日) 2025年5月3日閲覧。
- ^ "証券口座、相次ぐ乗っ取り 犯罪グループ、相場操縦に利用か―警戒呼び掛け、監視委が注視". 17 April 2025. 時事通信より2025年5月3日閲覧。
- ^ “証券口座乗っ取り、三菱UFJモルガンも確認 大手で9社目”. 日本経済新聞. (2025年4月30日) 2025年5月3日閲覧。
- ^ "証券口座乗っ取り、みずほ証券でも被害 大手10社すべてで判明". 日本経済新聞. 13 May 2025. 2025年5月14日閲覧。
- ^ “口座乗っ取り被害、中堅証券に拡大 岡三証券や岩井コスモ証券”. 日本経済新聞 (2025年5月16日). 2025年5月23日閲覧。
- ^ “証券口座乗っ取り 大手10社 被害状況に応じ顧客に補償する方針”. NHK NEWS WEB (2025年5月2日). 2025年5月3日閲覧。
- ^ “SBI証券、全ての中国株で買い注文停止 口座乗っ取り対策”. NHK NEWS WEB (2025年5月7日). 2025年5月8日閲覧。
- ^ “証券口座乗っ取り、加藤金融相「補償対応を指示」 証券会社に”. 日本経済新聞. (2025年4月22日) 2025年5月5日閲覧。
- ^ "著名個人投資家のテスタさん、証券口座乗っ取り被害に遭う". 日本経済新聞. 1 May 2025. 2025年5月6日閲覧。
- ^ 投資家テスタさん、口座乗っ取り「個人・証券会社とも防犯意識向上を」2025年5月7日 日本経済新聞
- ^ “「これは引っかかる」証券口座乗っ取りを警戒する人を狙い撃ち…“フィッシング詐欺対策フィッシング詐欺”が流行中”. 集英社オンライン. (2025年5月2日) 2025年5月6日閲覧。
- ^ 多田, 文明 (3 May 2025). "さっそくきました 証券口座の乗っ取りに便乗する「資産補償手続きのご案内」メール 手続きに進んでみると" (Yahoo!ニュース). 2025年5月6日閲覧。
関連項目
外部リンク
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