診断アプローチ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 14:48 UTC 版)
急性腹痛では次のような順序で行うと誤診が少なくなる。まずは外傷性かどうかを調べる。病歴をもとに考え、腹部エコーで臓器損傷を確認する。次に産科的疾患、婦人科的疾患、外科的疾患、内科的疾患と考えていく。どうしても診断がつかなければLQQTSFAを全て埋めるような問診をして、精神的疾患まで考えていく。診断をつける際は緊急手術が必要かどうかを常に考える。たいていの場合、腹痛の緊急性は、心肺血管系の緊急疾患でない場合、原因によらず、腹膜炎になっているかどうかで決まる。緊急性を感じたら、術前に必要な検査を行い、静脈確保も手術に耐えられるようなものにしなければならない。具体的には、胸部X線写真ではPA像で撮影、腹部X線写真は立位、臥位の二方向撮影、凝固機能、クロスマッチテスト、針は18Gにするといったことを行わなければならない。原則として背部痛を伴う場合は後腹膜臓器の疾患を考える。ブスコパンで反応すれば内科系疾患であり、反応しなければ外科系疾患であるという経験則も使える。救急では診断がつき、バイタルサインが安定化するまでは鎮痛薬を使用しないという原則がある。ブスコパンは鎮痙薬であるので使っても診断は行うことができる。またたとえ診断がついてもモルヒネは膵、胆管系の疾患を増悪させるので禁忌である。 慢性腹痛では、機能性の疾患(過敏性腸症候群、便秘、機能性胃腸症など)が多いが、見逃してはならないのは腸閉塞と悪性腫瘍である。 重要な問診事項は以下のようなものである。 腹痛の位置 痛い場所ははっきりしているか。はっきりしているならその場所。あるいは、腹部全体がなんとなく痛いのか。 放散痛はあるか 例えば胆道系の疾患では右の肩甲骨に放散痛を感じるし、膵臓の疾患では背部に、虚血性心疾患では肩に放散痛を感じるという具合である。 腹痛はいつごろ始まったか 急激に発生した腹痛は潰瘍の穿孔や動脈瘤の破裂、子宮外妊娠の破裂などに関連する。また、食後に起こるのか、空腹時に起こるのかということも重要な情報である。 腹痛の性質は 痛みは持続するのか、または軽くなったりひどくなったりを繰り返すのか。就寝中に痛みで目がさめることがあるか。 腹痛以外の症状 下痢、嘔吐、便秘、下血、発熱などの症状は見られないか。 特に、腹痛と同時、または後に嘔吐が見られる場合は緊急性が高い可能性がある。 女性の場合は月経周期 既往歴 腹部手術の既往があると腸管の癒着を起こしている可能性がある。
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