規制基準と分離・回収技術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/27 01:22 UTC 版)
「三重水素」の記事における「規制基準と分離・回収技術」の解説
日本においては、発電用原子力施設で発生する液体状の放射性廃棄物については、時間経過による放射能の減衰、大量の水による希釈といった方法で、排水中の放射性物質の濃度を規制基準を超えないように低減させた上で排出することとなっている。トリチウム水については、周辺監視区域外の水中の濃度が60 Bq/cm3( = 6×104 Bq/L)を超えてはならないと定められている。高度情報科学技術研究機構(もと原子力データセンター)によると、トリチウムには海産生物による濃縮効果がないと考えられている。そのため、他の核種の100倍を越える量が海洋に放出されている。 2001年には、英国ブリストル海峡での二枚貝やカレイの体内に、高濃度のトリチウムがあるとの論文が発表されている 。原発より放出されるトリチウム水以外の放射化学プラント から廃棄されるトリチウムで標識された有機化合物等の濾過が不十分であるため、トリチウムが加算され、生物濃縮が不当に評価されうること等、トリチウムおよび濃縮率の測定問題等が指摘されている。英国食品基準庁の指針に従い、1997年より10年間、毎年調査をし続けた結果では海水が5〜50 Bq/Lであったのに対し、ヒラメは4,000〜50,000 Bq/kg、二枚貝イガイは2,000〜40,000 Bq/kgの濃縮が認められ、濃縮率の平均値はそれぞれ3,000倍と2,300倍であった。一方で、トリチウム水で育てた海藻を二枚貝イガイへ与えた実験では、投与量に比例してトリチウムが蓄積し続けることが確認されている。 液体状の低レベル放射性廃棄物の海洋放出の安全性については、主に再処理施設に関してだが、次の答申 動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査について(答申) 再処理施設等から生ずる放射性廃液の海域放出に係る障害防止に関する考え方について(答申) がある。 一般的な原子力発電所では年間約1.0〜2.0×1012 Bq(1〜2兆ベクレル)ほどトリチウム水を海洋に放出している(表参照)。 実用発電用原子炉施設からの年度別トリチウム水放出量(単位:Bq)施設名2007年2008年2009年2010年東京電力(株)福島第一原子力発電所1.4×1012 1.6×1012 2.0×1012 - 東京電力(株)福島第二原子力発電所7.3×1011 5.0×1011 9.8×1011 1.6×1012 [要出典] しかし2011年3月11日の福島第一原発事故後に福島県浜通り地方を中心に周辺地域の水産業が深刻な風評被害を受け続けていた為、地下水などに混入した各種の放射性核種を処理したトリチウム水の太平洋への海洋放出などによる削減は、世論の批判・反対が強いため行われておらず、原発敷地内に保管している。 これに関連し、汚染水からトリチウム水を分離する技術を研究されている。近畿大学工学部(広島県東広島市)は、水を微細な穴を持つアルミニウム製フィルターに通すことでトリチウム水を分離する装置を東洋アルミニウムなどと共同開発したと2018年6月に発表した。 2022年度に東京電力福島第一原発の処理水(トリチウム水)を海洋放出する方針を決定した。これは上記の原発敷地内のタンクが増加したためである。また、世界保健機関(WHP) の飲料水水質ガイドラインにおける約7分の1の濃度である約1500Bq/Lである。
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