製造と打上げ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/04 06:12 UTC 版)
1996年、日本の人工衛星みどりに乗せられたNASCATが打ち上げられた。この衛星は、世界中の海洋上を吹く風を数年に渡って記録するように設計された。しかし、1997年に予期せぬ故障が起こり、NASCATの運用は早期に終了した。このミッションに続いて、NASAは代替となるような新しい人工衛星の製造を開始した。2つの衛星のデータの間のギャップを限られたものにするために、できるだけ早く製造し、打ち上げられるように計画された。ちょうど12ヶ月後、QuikSCAT衛星が完成し、打上げ準備が整った。これは、1950年代以降、NASAで最も速く進行したミッションとなった。 QuikSCATプロジェクトには、打ち上げやミッションの運用も含め、当初9300万ドルの予算が付けられた。1998年11月から続いた一連のタイタンロケットの打上げ失敗によってQuikSCATの打上げは遅れ、さらに500万ドルの費用が必要となった。 衛星には、SeaWinds scatterometerという新しい機器が設置された。特殊なマイクロ波レーダーであるSeaWinds scatterometerは、海面近くの風の速度と方向の両方を測定できた。2つのレーダーと回転アンテナを備え、1日で世界中の海の90%のデータを記録することができた。毎日おおよそ40万の風測定データを記録しており、それぞれが1800kmの幅の地域を含む。ジェット推進研究所とNSCATチームは共同で、ボール・エアロスペース&テクノロジーズから部品の提供を受け、ゴダード宇宙センターで製造した。 記録的な製造の速さを称えられ、プロジェクトで働く技術者はAmerican Electronics Achievement Awardを受賞した。通常、契約先の選択と開発の開始に1年程度かかるところ、今回はわずか1ヶ月で行われた。 新しく製造された衛星は、タイタンIIロケットにより、ヴァンデンバーグ空軍基地から1999年6月19日19時15分(PDT)に打ち上げられた。約2分30秒後、バハ・カリフォルニア半島上空で第1エンジンが停止して第2エンジンが点火した。1分後、ロケット先端のノーズ・コーンが2つのパーツに分かれた。16秒後、ロケットは衛星を太陽から守るために向きを変えた。次の約48分間、2つの機体は南極大陸上空を飛び、マダガスカル上空に入り、ここでロケットは予定高度の800kmに達した。 打上げから59分後、衛星はロケットから切り離され、地球の円軌道に入った。その直後に太陽電池アレイが展開し、8時32分(PDT)に衛星とノルウェイの追跡基地の間の接続が確立された。次の2週間は、エンジンに点火され、位置や軌道の調整が行われた。打上げから18日後、散乱計が起動し、12人から構成されるチームは、QuikSCATの機能に関する詳細なデータを受けた。軌道投入から1ヶ月後、チームはチェックを終え、QuikSCATは地球の周回を始めた。NASAは2年間の運用を予定していた。 NASAとNOAAは次世代のQuikScatを検討したが、後継機がすぐには準備できないため、地上に残っていたハードウエア(QuikScatとADEOS-2「みどり」用に開発していたもの)を利用して国際宇宙ステーション(ISS)で観測する事が提案された。この装置は、2014年にISSに運ばれてISS-RapidScatとして2年間観測を行う予定。
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