行政法の法源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 03:35 UTC 版)
行政法の法源。法源は複数存在し、以下のような法が挙げられる。 成文法 行政法は成文法主義を採っている。これは国民の予測可能性を保証し、法律やその委任に基づく法に従うことで国民主権・国会中心主義の要請にこたえるためである。また、行政運営が複雑で専門的であることも成文法が必要とされる理由である。憲法 憲法典で行政について定める部分は行政法源となり、行政はそれに違反することができない。 法律 国民の権利義務に関わる国の一切の法規は、「国の唯一の立法機関」である国会(日本国憲法41条)が定めた法律によって定めなければならない。このことを「法律が法規創造力を独占する」という。 命令 国会制定法(法律)に対して、行政権が定立する法。政令・内閣府令・省令・規則など。法律の規定に要請がある場合のみ、行政機関は命令を制定できる。行政法の法源となりうる命令には、法律執行に必要な細則を定める執行命令、法律の個別具体的な委任に基づいて法律の内容を補完する委任命令がある。 条約 日本国憲法は国際法規を「誠実に順守すること」を要求しており(98条2項)、公布されると国内法に転換し、国内行政に関して自立執行性のある具体的な定めがあれば行政法源となる。批准された条約は形式上法律に対して優位に立つ。 条例 地方公共団体の議会が自主的に制定する法規たる定め。憲法94条が根拠になっている。規則 地方公共団体の長(首長)が制定する法規。首長の権限に属する範囲内の事務において制定できる。条例の細則を定めたものも多い。 不文法 成文法の空白部分を埋め、解釈を補完する役割を果たす。慣習法 法的確信を得て法的ルールと信じられるようになった慣習。行政法においては成立する余地が少ない。認められる場合も法的確信(正義感)が根拠となる必要があり、違法な慣習は慣習法とはなりえない「地方的民衆的慣習法」 民衆の間に確立・定着した慣習法。水利権など。行政はこうした慣習を尊重する必要がある。 「行政先例法」 行政で行われている先例が人々の間で法と信じられているもの。官報による法律の公布など(2014年現在、官報によって法律が公布されるという実定法上の根拠はないが、慣習法によって承認され、判例もこれを認めている。)。 判例法 同一内容の判決が繰り返され、法として承認されたもの。 条理 法の一般原則。名分上の根拠があるとは限らないが、一般に正義にかなう普遍的原理と認められている諸原則。平等則・比例原則・禁反言の原則・信義則・手続き的正義の原則など。行政はこれらの原則を守る必要がある。 なお、訓令・通達は形式上、行政組織内部での規範(行政規則)に過ぎず、行政法の法源とはなりえない。しかし、実務の上では必要性が高く大きな影響力を持っているため、現代行政を「法律による行政」ならぬ「通達による行政」と揶揄することもある。
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