聖トーマス病院医学部
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「ジューン・アルメイダ」の記事における「聖トーマス病院医学部」の解説
詳細は「聖トーマス病院医学部(英語版)」を参照 1964年、アルメイダはオンタリオがん研究所ならびに聖トーマス病院での抗体の電子顕微鏡研究の成果によって博士号(Sc.D.)を取得する:209。 聖トーマス病院で微生物学部長(chair of microbiology)に任命されたばかりのトニー・ウォーターソンは1964年、トロント訪問中にアルメイダと会い、自分の研究チームに加わるように勧誘した:96。この研究チームが置かれたロンドンの聖トーマス病院医学部(英語版)は、イギリスの最も歴史があり最も権威ある医学部の1つである。聖トーマス病院に引き抜かれたアルメイダはB型肝炎ウイルスと風邪のウイルスに取り組んだ。 ウォーターソンとアルメイダは1966年に、風邪研究の責任者であったデーヴィッド・タイレル医学博士と共同研究の機会を得る。タイレルは新しい組織培養システム開発に取り組んでおり、研究室内で培養したヒトの呼吸器組織の細胞からライノウイルスを検出しようと試みて、「B814」と名付けた特定の呼吸器疾患ウイルスに注目していた。すでにスウェーデン出身のバッティル・ホーン(スウェーデン語版)教授がタイレル研究室の培養試料からほとんどの呼吸器疾患ウイルスの抽出に成功しながら、B814だけは特定できずにいた。タイレルらの組織培養方式は人間の被験者に頼らずともウイルス研究ができることを意味し、B814ウイルスを検出する信頼性のある手法が求められた:94。 タイレルはマイケル・フィールダー(Michael Fielder)との共著『Cold Wars』において、アルメイダに初めて会った時、電子顕微鏡の適用範囲の限界を押し広げようとしているように見受けたと述べている:96。タイレルによると、従来は電子顕微鏡を用いてウイルスを検出するにはウイルスを濃縮(concentrated)および精製(purified)する必要があるという理解であった。ところがアルメイダ自身の「新しい、改良した技術で」培養組織から「ウイルス粒子を見つける」と言われた時、タイレルは疑いを持ったという。 タイレル研究室からロンドンに届いた試料には、B814ウイルスとともにインフルエンザやヘルペスなど一般的なウイルスに感染したものも含まれていた。アルメイダはこれらの試料を自ら設定した顕微鏡グリッド(microscope grids)で調べると、「全ての既知のウイルスを認識し、そして写真でそれらの構造を鮮やかに明示した。さらに重要なことに、B814試料からもウイルス粒子を見つけて:96」いる。アルメイダはタイレルへの報告で、B814試料はかつて自身が研究した病理「ニワトリ伝染性気管支炎(disease called infectious bronchitis of chickens)」や別の「ネズミウイルス性肝炎(mouse hepatitis liver inflammation[訳語疑問点])」の粒子を連想させると語った。アルメイダはかつてそれらを論文にまとめて専門誌に数度、投稿したものの、添付した電子顕微鏡写真を当時の査読者に「既存のウイルス画像の改竄」と見なされ、却下された経緯がある。タイレルへ宛てた中でアルメイダは「これら3種のウイルスはすべて全くの新種」という認識を述べた:96。 タイレルによれば、アルメイダがそれまで認識されていなかった複数のウイルスを特定した時、ワシントンの事務所で開いた会合の席上、このウイルスグループの学名を検討したという。周縁部をhalo (円光)に囲まれたようなウイルスの外観から、それをラテン語訳し〈冠〉ウイルスすなわち「コロナウイルス」という名前が誕生している:96 。 1966年、アルメイダとタイレルは「これらの粒子は全長800–1200Åの多形態であり、周縁部に長さ200Åの明確なフリンジがある。この形態を持つ唯一の既知のウイルスは鳥の伝染性気管支炎ウイルスの粒子であり、これらとの区別はできない」と発表する。
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