線路におけるカント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/17 18:31 UTC 版)
「カント (路線)」の記事における「線路におけるカント」の解説
速度の異なる列車の走る路線では、通過する列車の平均速度を算定して、それに見合うカントを設定している。そのため、この平均速度を上回る高速の列車に対してはカント不足、この平均速度を下回る低速の列車に対してはカント超過となる。古くからある路線では昔の低速の列車にあわせてカントが設定されており、列車の通過速度向上に伴ってカント不足となることがあるため、カント量を引き上げて路線の最高速度を上昇させる工事が行われることがある。 カントには、設定カント量とカント不足量があり、設定カント量とは、曲線を通過する列車の平均速度で設定されたカント量であり、その上限である最大カント量は、車両が曲線を低速で通過する際、曲線の外側からの強風による転覆防止と車体の傾斜で乗客が不快感及び不安感を覚えない乗り心地の面から限界があり、JRの場合、新幹線(標準軌)では東海道新幹線は200 mmで、それ以外は180 mm(実際はそれ以下の方が多い)、在来線(狭軌)では105 mm、標準軌私鉄では150 mmとされており、西欧の標準軌の場合は150 - 160 mmとしている。カント不足量とは、曲線での最高速度に対応したカント量と曲線での平均速度で設定された設定カント量の差であり、設定カント量の平均速度以上を超過すると、カント不足による超過遠心加速度が働いて、安全性や乗り心地に影響を与えるため、上限があり、曲線での遠心力と重力の合力の作用点を、軌道中心から軌道間(線路の間の長さ)の1/8以内(安全比率4)とした場合では、在来線の狭軌で100 mm、標準軌で150 mmとなり、新幹線で90 mmとしている。 乗り心地による左右加速度の限界は0.08 G(2.8 km/h/sec)が目安としているため、これを元に、カント不足量を算定した場合では、車両の枕ばねなどのたわみを考慮した余裕を見込む必要があるため、現行規程では、狭軌在来線での一般車両で60 mm、一般の特急形車両で70 mm、振り子式特急形車両で110 mm、新幹線で90 mmとしており、安全性の制約により、低めの数値となっている。 その他にも、カントによって車両が傾くため、風による車両の転覆の危険が高まる。カント不足の場合では内側の風、カント超過の場合には外側の風により安全比率が低下するが、後者の方が危険になる場合が多い。また、カント超過の場合の外側の風による車両を転覆させようとする力は、超過遠心力と重力分力の差の項、振動慣性力の項、風圧力の項の合成力になる。また、転覆に対する危険の限界値は、停止時では安全比率で1.5、通過時には安全比率で1.2となる。 カントつきの曲線では、直線区間と比べ車両から線路にかかる力が大きくなるため、より多くの枕木やバラストが必要になる。 また、何らかの理由でカント量の高い区間に列車が停止した場合に、つり革などを掴めていない立ち席客が倒れたりするトラブルも時々ある。
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