納付・処理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/23 09:32 UTC 版)
反則金を仮納付しなかった反則者は、通告を受けた後、反則金を納付(本納付)するか、納付せず期限まで放置するかを再び選択することになる。 違反内容や反則金の額について争うつもりがなく、前述の反則金の仮納付をした場合、もしくは仮納付をせず、反則行為の通告を受け、その日を含めて11日以内に、反則金の本納付をした場合には、その反則行為につき刑事手続・少年保護手続を受けることがない(公訴を提起されず、又は家庭裁判所の審判に付されない)。反則行為をしてから、反則行為の通告の後の反則金の納付の期限が過ぎるまでの期間も同様である。ただし、次の適用除外の場合を除く。 反則金とは、交通反則通告制度に基づき課される行政上の制裁金のこと。道路交通法に違反したもののうち、反則行為に該当すると判断された者が、刑事手続を免れる代わりに金銭を国庫に納付する制度である。 日本国憲法第32条に定められた「裁判を受ける権利」の観点から、摘発を受けた国民が当該摘発事実について裁判手続の中で争う方法を確保しなければならないため、告知に従い反則金を納付をするかどうかについては、反則者自身が選択できる。納付を行えば刑事手続には移行しない。任意に納付をせず、期限まで放置すれば、自動的に刑事手続に移行して違反内容や罰金額について裁判で争うことができる。 混同されやすいが、裁判の結果「有罪」と判決で言い渡される科料・罰金とは、その法的性質を異にしている。しかし、通告に応じない場合は刑事手続きに移行するという点では、行政上の秩序罰と刑事罰の中間に位置しているとも言える、極めて特殊な制度である。 「交通反則者納金」には、年度初めに予算が立てられ、「内閣府、総務省及び財務省所管 交通安全対策特別交付金勘定」によると、平成23年度の「予定額」は737億円(73,705,163千円)である。「交通安全対策特別交付金等に関する政令」第四条(交付金の額)によると、この特別交付金の「都道府県基準額」「指定都市基準額」「市町村基準額」の算定式はそれぞれ分子に「当該都道府県における交通事故の発生件数」「当該指定都市における交通事故の発生件数」「当該市町村における交通事故の発生件数」が入っており、事故が発生件数が増えるほど交付金額が増額され、事故が減るほどに交付金額が減額される算定式になっている。 「内閣府、総務省及び財務省所管 交通安全対策特別交付金勘定」の財源(=歳入)は「交通反則者納金」であり、支出項目は「交通安全対策特別交付金」である以上、その両者がほぼ同額になるよう調整されることは、予算編成上不可避である。 通告はあくまで行政庁の行為であることから、これに対して行政訴訟(抗告訴訟)を提起して、処分取消を求め、納付した反則金を取り戻すことができるかが問題となる。この点について、判例(最高裁判所第一小法廷昭和57年7月15日判決)は次のように、否定的に述べている。 「道路交通法は、通告を受けた者が、その自由意思により、通告に係る反則金を納付し、これによる事案の終結の途を選んだときは、もはや当該通告の理由となった反則行為の不成立等を主張して通告自体の適否を争い、これに対する抗告訴訟によってその効果の覆滅を図ることはこれを許さず、右のような主張をしようとするのであれば、反則金を納付せず後に公訴が提起されたときにこれによって開始された刑事手続の中でこれを争い、これについて裁判所の審判を求める途を選ぶべきであるとしているものと解するのが相当である」 反則金の納付は、告知書に記載された期日までに、金融機関(日本銀行およびその歳入代理店(歳入副代理店を含む)である市中銀行や郵便局(現在ではゆうちょ銀行の代理店の資格である)など)を通じて行う。 納付された反則金は、銀行や郵便局を通じて国に納められた後、各都道府県や市町村に交通安全対策特別交付金として交付され、信号機、道路標識、横断歩道橋などの交通安全施設の設置費用として使用される。
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