稲沢電車図書館
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稲沢電車図書館は、1972年(昭和47年)3月19日に日本住宅公団稲沢団地に開館した電車図書館である。稲沢団地の建て替えにともない、2003年(平成15年)3月に撤去されて現存しない。 これに先駆けて、1960年代に東京都多摩地域の公団住宅団地に開館した電車図書館として、日野市の「日野市立多摩平児童図書館」(廃止)、東村山市の「くめがわ電車図書館」(現存)があった。 1966年(昭和41年)8月、東京都日野市の日本住宅公団多摩平団地(現・都市再生機構多摩平の森)に日野市立多摩平児童図書館が開設され、日野市長であった有山崧の発案により、都電の1000形車両を使用した電車図書館が誕生した。その後1971年(昭和46年)、車両の老朽化により電車図書館は廃止され、同年4月に新館が開設した。なお2004年(平成16年)3月、日野市立多摩平図書館の新築にともない、多摩平児童図書館は閉館している。 またその翌年の1967年(昭和42年)、東京都東村山市の日本住宅公団久米川団地(現・都市再生機構グリーンタウン美住)に、西武鉄道の旧101系車両に児童書約5,000冊を積んだ「くめがわ電車図書館」が開設された。公立図書館ではなく市民有志による地域文庫(私立図書館)として運営されており、車両のメンテナンスはボランティアが行っている。 1958年(昭和33年)、日本住宅公団(現・都市再生機構)稲沢団地が開設された。その当時、団地から図書館までの距離は遠く、さらに図書館の児童書蔵書数は少なかった。1970年(昭和45年)1月30日には、稲沢団地で「子ども文庫の会」が結成され、同年7月には母親たちの手によって集会所に自治会児童図書館が開設された。 1972年(昭和47年)には、稲沢市や日本住宅公団からの支援を受けて、名古屋市電1400形の廃止車両1両を9万円で購入。同年3月19日、「わかくさ号」と名付けられた車内に「稲沢電車図書館」が開館した。毎週土曜・日曜の各2時間を開館時間とし、それぞれ40人から80人程度が本を借りに来るほどの盛況だった。1974年(昭和49年)12月には、廃車のバスを「わかくさ号」の隣に並べ、こちらは読み聞かせやイベント、運営会議などに使用された。 1975年(昭和50年)には、稲沢団地に近い国府宮駅東口に稲沢市立図書館が開館した。このことに加え、団地開設から20年以上が経過して子どもが成長したり、初期の住民の転居が相次いだことなどから、1982年度(昭和57年度)の稲沢電車図書館は全休状態だった。この頃には名古屋市でみどり子ども図書館を運営していた佐藤宗夫が講演を行っており、児童図書館の価値を再認識した団地住民が、再びイベント・読書会・会報発行などを行うようになった。 1986年(昭和61年)頃からは、夏休み期間の週2日間だけの開館となっていたが、1996年(平成8年)頃には新たにバスを購入して図書館とし、毎週土曜日の開館日には毎回30人以上が訪れる賑わいを見せた。 その後、電車図書館は車両の購入から20年以上が経過して傷みが目立ち、本はすべてバスに移して約2,000冊を収容していた。1998年(平成10年)頃からは電車内への立ち入りが禁止されていたが、2003年(平成15年)には日本住宅公団(当時)が稲沢団地の建て替えを決定し、同年3月には電車図書館が撤去された。
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