白色顔料および黒色顔料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 16:00 UTC 版)
分光反射率が一様で特定の範囲が際立っていないために、色相が鮮明でない、明度に特徴が現れる顔料は、大きく5種類に分類できる。(1) 著しく高い反射率を示し、屈折率が高い白色顔料、(2) 高い反射率を示し、屈折率が高くない体質顔料、(3) 低い反射率を示し、屈折率が高く粒子径が大きい黒色酸化物顔料、(4) 著しく低い反射率を示し、屈折率が低く粒子径が小さい黒色炭素顔料、(5) 低い反射率を示し、屈折率が低く粒子径が小さい、炭素を含む複数の元素で構成される黒色有機顔料の5種類である。(1)から (3) は、中空顔料を除くと、全て無機化合物である。 (1) 白色顔料 現在専ら使用されるのはチタン白・Pigment White 6である。極めて生産量の多い顔料であり、白色顔料の中で最も高い白色度と屈折率を示す。物性的に安定で油絵具のバインダーとも問題を起こし難い。 この他の候補として亜鉛華・Pigment White 4、鉛白・Pigment White 1がある。しかし、Pigment White 4は油絵具として使用した場合、乾性油と反応し亜鉛石鹸を生じることから亀裂や剥離、剥落を誘発する。そして、Pigment White 1は油絵具として使用した場合、乾性油と反応し鉛石鹸を生じることから、塗膜の老化を促進し、塗膜の透明化と強い黄変および変色という現象を誘発する。 (2) 体質顔料 炭酸カルシウムやアルミナホワイトが使用される。前者は屈折率が高いから透明性が低く、後者は屈折率が低いから透明性が高い。 (3) 黒色酸化物顔料 代表的な物として近年日本の絵具メーカーでも製品化が進んでいる複合酸化物顔料である、銅クロムブラック・Pigment Black 28が挙げられる。これ以外に絵具メーカーが製品化している物としては、鉄の酸化物顔料である、Pigment Black 11がある。Pigment Black 11は、チント時に褐色がかり鉄化合物に特徴的な色合いを帯びるので、注意を要する。厚みが少ないとき透明感が強くなってしまう炭素顔料と異なり、不透明性が高いので性質は異なる。 (4) 黒色炭素顔料 黒色の炭素同素体である不定形炭素が主である 。実際には炭素の単体ではなく、周辺部に酸素と水素が化合しており、これ以外に硫黄、灰分(鉄、アルミニウム、硅素など)を含む。カーボンブラック・Pigment Black 7が最も黒色度が高く、印刷やタイヤなどに良く使用される。 習作用油絵具などのセットにはボーンブラック・Pigment Black 9が良く採用されているが、木炭よりも大きな吸着性があり、日本などの湿度の高い地域では、成分の約90%を占める燐酸カルシウムが、黴の温床になるので適さない。発色成分の炭素は全体の10%程度しか含まれていない。肉骨粉に由来する問題のある製品であったことから、ようやく生産中止になった。 (5) 黒色有機顔料 緑から紫といった色相の黒色有機顔料がある。アニリンブラック・Pigment Black 1、ペリレンブラック・Pigment Black 31などがある。アニリンブラックは、アクリジンの中央の6員環の水素と結合している炭素原子を窒素原子で置換したものと説明可能な構造が特徴的な、高い黒色度の顔料である。ペリレンブラックは、ペリレン顔料であり、高い耐久性を有する。
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