発音と正書法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 17:21 UTC 版)
オーストロネシア系言語にあってタヒチ語のみが14の音素、すなわち9個の子音と5つの母音を用いる。長母音を数えるならばこの数は19になる。そのため、ロマンス諸語と比べるとアルファベットは簡潔であり、必要なのは14の文字だけとなる。以下がタヒチ語のアルファベットである。 文字名前文字名前a ’ā o ’ō e ’ē p pī f fā r rō h hē t tī i ’ī u ’ū m mō v vī n nū ’ ’eta ’eta(エタ)はポリネシア諸語に特徴的な文字である。これは声門破裂音を表しており、子音である。この文字はハワイ語の「オキナ (ʻokina)」とは異なり、アポストロフィ (’) であるが、タイプライターにこの字がない場合は引用符 (') で代用することもできる。これはフランス領ポリネシアでタヒチ語の正書法と文法の規範化を受け持つ公的機関、タヒチ・アカデミーが採用している方法だが、タヒチ文献学界で一致して受け入れられているわけではなく、ラーポト式のように別な正書法を用いる教員やメディアもしばしば見られる。 創始者のトゥロ・ア・ラーポトにちなんで名付けられたラーポト式正書法では、声門破裂音を伴う母音を重アクセント記号を用いて à, è, ì, ò, ù と表す。長母音はラーポト式、タヒチ・アカデミーとも長音記号で表すが、長母音が声門破裂音を伴う場合は曲アクセント記号を用い â, ê, î, ô, û とする。ただしこの方式は、タヒチ・アカデミーの正書法の導入が進み最も広く受け入れられているため、劣勢になっている。さらに、タヒチ・アカデミーの正書法はタヒチ語と同系であるトンガ語やサモア語、ハワイ語で採用された正書法に倣ったものであり、このことがタヒチ語の他の正書法に対する論戦に強みを与えている。 いずれにしても、タヒチ語は語頭でエタを多用するのが特徴であり、音を文字で表すことや大文字の扱い、アルファベットでの順序などが問題となる。 タヒチ語の音声体系は以下の通り。 子音 両唇音唇歯音歯茎音咽頭音無声 有声 無声 有声 無声 有声 無声 有声 破裂音[p] [t] [ʔ] 鼻音 [m] [n] 弾き音 [ɾ] 摩擦音 [f] [v] [h] 母音 前舌中舌後舌狭母音[i] [u] 半狭母音[e] [o] 広母音[a] 見ての通り、ポリネシア以外ではたいていの言語で見られる [b], [d], [g], [k], [l], [s] などの音がない。その一方で二つの咽頭音の存在が際立っている。無声の声門破裂音 [ʔ](古い時代の [k] と [ŋ] の弱化に由来)と、無声の声門摩擦音 [h] である。他の音がポリネシア諸語のバリエーション内に収まっているとしても、子音の体系が単純であるだけに、この二つはポリネシア諸語でも独特のもので独自の特徴となっている。 母音体系に関してはスペイン語と同様に5つの基本母音を持っているが、その各々に長母音があり、したがって [aː], [eː], [iː], [oː] , [uː] の5つが加えられる。タヒチ語の正書法ではこの長母音は長音記号 (¯) で表される。声門破裂音 (’) と長母音(ā など)の組合せでも正書法に特別な工夫はなく、’āpī「新しい」のように文字を続けて書くだけである。長母音や声門破裂音で語の意味が全く変わることがあるので注意が必要である。ava「珊瑚礁の中の通り道」と ’ava(酒の名前)、piti「2」と pītī(木の名前)など。 タヒチ語にありうる音節は、 母音 母音+母音 子音+母音 という構成のものである。 表記上の例外として、タヒチ語では限定詞の ïa で母音の分離記号 (¨) を使う。 文字と音の対応は以下のようになる。 文字音文字音a [a] o [o] ā [aː] ō [oː] e [e] p [p] ē [eː] r [ɾ] f [f] t [t] h [h] u [u] i [i] ū [uː] ī [iː] v [v] m [m] ’ [ʔ]例: [aʔa] n [n]
※この「発音と正書法」の解説は、「タヒチ語」の解説の一部です。
「発音と正書法」を含む「タヒチ語」の記事については、「タヒチ語」の概要を参照ください。
発音と正書法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/30 09:49 UTC 版)
セム語派、クシ語派、オモ語派のようなエチオピアの他の多くの言語と同様、オロモ語には放出音がある。これは無声破裂音や破擦音に喉頭音化と呼気の破裂がともなったものである。オロモ語にはもうひとつ、そり舌入破音というやや珍しい音がある。これはオロモ語の正書法では dh と書かれ、d を発音する際に舌を後方に若干巻き戻して空気を引き入れ、次の母音の前に声門破裂音を発するものである。 オロモ語には南クシ語派によく見られる5つの短母音と5つの長母音があり、正書法では長母音をそれぞれの母音の文字を2つ続けて表記する。母音の長短は、hara「湖」、haaraa「新しい」のように意味の区別において有意義である。オロモ語では子音の二重化も有意である。つまり、badaa「悪い」、baddaa「高地」のように子音の長さが語義の区別に用いられる。 クベー式アルファベットでは、ひとつの「文字」はひとつの記号またはふたつの記号 (ch, dh, ny, ph, sh) からなる。二重化はふたつの記号が文字の場合には必ずしも表記されないが、qopphaa'uu「準備ができている」のように最初の記号をふたつ重ねて表す者もいる。下の表では、各音素は角括弧で括られた国際音声字母で表されており、オロモ語の文字とは異なっている。[p v z] の音は近年採り入れられた借用語のみに用いられるために括弧に入れられている。この正書法が採用されてから多少の変更があったので注意が必要。x ([tʼ]) は当初 th と書かれていた。[tʃʼ] と [tʃ] を表すのに人によって c と ch が混同された。初期には c は [tʃ]、ch は [tʃʼ] に用いられ、c は語中のどこにあるかで音が違っていた。この記事では c は常に [tʃʼ] を、ch は常に [tʃ] を表す。 子音両唇音/唇歯音歯茎音/反舌音硬口蓋歯茎音/硬口蓋音軟口蓋音声門音破裂音と破擦音 無声音 (p) t ch [tʃ] k ' [ʔ] 有声音 b d j [dʒ] g 放出音 ph [pʼ] x [tʼ] c [tʃʼ] q [kʼ] 入破音 dh [ɗ] 摩擦音 無声音 f s sh [ʃ] h 有声音 (v) (z) 鼻音 m n ny [ɲ] 接近音 w l y [j] R音 r 母音前寄り中寄り後寄り狭 i [ɪ], ii [iː] u [ʊ], uu [uː] 中 e [ɛ], ee [eː] o [ɔ], oo [oː] 広 a [ʌ] aa [ɑː]
※この「発音と正書法」の解説は、「オロモ語」の解説の一部です。
「発音と正書法」を含む「オロモ語」の記事については、「オロモ語」の概要を参照ください。
- 発音と正書法のページへのリンク