病因:マラリア原虫の組織内のステージと繁殖
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「マラリアの歴史」の記事における「病因:マラリア原虫の組織内のステージと繁殖」の解説
マラリアの再発は1897年 William S. Thayer によって初めて記載され、流行地域を離れて21ヶ月後に再発した医師の経験が詳述された。彼はマラリアの組織内のステージの存在について提唱した。再発はパトリック・マンソン(英語版)によって裏付けられた。彼は感染したハマダラカに彼の長男を吸血させた。息子のマンソンはキニーネによる見かけ上の治癒の9ヶ月後の再発について記載した。 また、1900年に Amico Bignami と Giuseppe Bastianelli は、血液に生殖母体のみを持つ個体を感染させることはできないことを発見した。慢性的な血液感染のステージが存在する可能性がロナルド・ロスと David Thompson によって1910年に提唱された。 内部器官の細胞内で無性生殖する鳥マラリア原虫の存在は、1908年 Henrique de Beaurepaire Aragão によって初めて実証された。 1926年に Émile Marchoux は再発のメカニズムについて3つの可能性を提唱した。(i) マクロガメトサイト (雌の生殖母体) の単為生殖、(ii) シゾントが血液中に少数残存し、免疫によって増殖が阻害されているが、後に免疫が消失する、(iii) 血液中のスポロシストの再活性化、という3つである。James は1931年、キニーネの活性消失に基づいて、スポロゾイトが内部器官へ運ばれそこで血管内皮細胞に進入し成長のサイクルを経ると提唱した。Huff と Bloom は1935年、鳥マラリアの血球細胞外に出るステージ (赤外期) の存在を実証した。1945年 Fairley らは、P. vivax を保有する患者の血液を接種してもマラリアを発症しない可能性があるとを報告した(その患者が後にマラリアを発症する可能性にも関わらず)。スポロゾイトは、血流から1時間以内に消失し、8日後に再び出現した。このことは組織内に持続する形態の存在を示唆していた。1946年に Shute は同様の現象を、血液ではなくカを用いて報告し、x-body または resting form と呼ばれる形態の存在を提唱した。その翌年 Sapero は、マラリアの再発と未発見の組織内ステージとの関連について提唱した。Garnham は1947年、Hepatocystis (Plasmodium) kochi の赤血球外シゾゴニーについて記載した。その翌年 Shortt と Garnham によってサルでの P. cynomolgi の肝臓でのステージが記載された。同年に、同意した志願者への P. vivax のスポロゾイトの大容量投与と3ヶ月後の肝生検が行われ、組織内のステージの存在が Shrott らによって実証された。実験的に感染させたチンパンジーでの Plasmodium ovale の組織内形態については1954年に、そして P. malariae については1960年に、それぞれ記載された。 P. vivax と P. ovale の感染に特徴的な再発の原因となっていると思われる、肝臓内に潜伏もしくは休眠した状態の寄生虫 (ヒプノゾイト、hypnozoite) は1980年代に初めて観察された。「ヒプノゾイト」という用語は Miles B. Markus の学生時代の造語である。1976年、彼は「イソスポーラのスポロゾイトがこのように振る舞うのだとしたら、関連のあるマラリア原虫のような胞子虫のスポロゾイトは同じように組織内で生存する能力を持っているのかもしれない」と思索した。1982年、Krotoski らは P. vivax に感染したチンパンジーの肝細胞内にヒプノゾイトを同定したと報告した。
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