病因微生物(ウイルスや細菌)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 02:54 UTC 版)
「悪性腫瘍」の記事における「病因微生物(ウイルスや細菌)」の解説
一部の悪性腫瘍(がん)については、ウイルスや細菌による感染が、その発生の重要な原因であることが判明している。現在、因果関係が疑われているものまで含めると以下の通り。 子宮頸部扁平上皮癌 - ヒトパピローマウイルス16型、18型(HPV-16, 18) バーキットリンパ腫、咽頭癌、胃癌 - EBウイルス(EBV) 成人T細胞白血病 - ヒトTリンパ球好性ウイルス 肝細胞癌 - B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV) カポジ肉腫 - ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8) 胃癌および胃MALTリンパ腫 - ヘリコバクター・ピロリ これらの病原微生物によってがんが発生する機構は様々である。ヒトパピローマウイルスやEBウイルス、ヒトTリンパ球好性ウイルスの場合、ウイルスの持つウイルスがん遺伝子の働きによって細胞の増殖が亢進したり、p53遺伝子やRB遺伝子の機能が抑制されることで細胞ががん化に向かったりする。肝炎ウイルスやヘリコバクター・ピロリでは、これらの微生物感染によって肝炎や胃炎の炎症が頻発した結果、がんの発生リスクが増大すると考えられている。またレトロウイルスの遺伝子が正常な宿主細胞の遺伝子に組み込まれる過程で、宿主の持つがん抑制遺伝子が欠損することがあることも知られている。ただしこれらの病原微生物による感染も多段階発癌の1ステップであり、それ単独のみでは癌が発生するには至らないと考えられている。 2005年にスウェーデンのマルメ大学で行われた研究では、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した人間との、予防手段を用いないオーラルセックスは口腔癌のリスクを高める、と示唆した。この研究によると、癌患者の36%がHPVに感染していたのに対し、健康な対照群では1%しか感染していなかった。 『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌で発表された最近の別の研究は、オーラルセックスと咽喉癌には相関関係があることを示唆している。HPVは頸部癌の大半に関係しているので、この相関関係はHPVの感染によるものと考えられている。この研究は、生涯に1-5人のパートナーとオーラルセックスを行った者は全く行わなかった者に比べおよそ2倍、6人以上のパートナーと行った者は3.5倍の咽喉癌のリスクがあると結論付けている。
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