疑わしい議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/02 20:15 UTC 版)
「日本における国際的な子の連れ去り」の記事における「疑わしい議論」の解説
国際離婚を多く扱かってきた大貫健介弁護士は、日本人が条約に署名することに強硬に反対しており、「日本人女性が日本に帰国したケースの90%以上は家庭内暴力や児童虐待などの問題を抱えていたと述べたが、一方で「家庭内暴力は証明するのは難しい」と認めている。 ハーグ条約加盟を支持する大谷幹子弁護士は、ハーグ条約第13条が発動された場合には、子どもを帰還させる事は拒否できる事に言及している。同志社大学のコリン・ジョーンズ教授は、連れ去りを行う母親は虐待をする可能性が極めて高いが、条約締結後には子どもたちの帰還を阻むために、日本の家庭裁判所は母親に有利な態度を示すだろうと言及している。 家庭内暴力もまた、加盟国間で懸念事項となっている。ハーグ条約特別委員会は、拉致されている子どもの3分の2は主たる監護者(通常は母親)によって移動の自由を奪われ事実上の監禁状態におかれており、この条約の起草者が予見し得なかった問題が起こっていると報告している。メリル・H・ウェイナーは、フォードハムローレビューの中で、主たる監護者である母親から子どもを拉致した非親権者の外国人男性のケースが、国際的な子どもの拉致として、1970年代後半と1980年代初めに米国で広くメディアに注目されていた点を指摘している。この典型的なステレオタイプが米国議会を動かし、国際的な子の拉致は常に子どもにとって有害であるとの推定を米国世論にもたらした。ハーグ条約は、家庭内暴力からの防衛についてはあまり言及していない。あくまで子どもたちのもとの住居への帰還を促進することに焦点が当てられているため、家庭内暴力の犠牲者が、ハーグ条約の申請を退けうるのは、裁判官の同情を得た場合であり、これについてハーグ条約委員会のオーストラリア代表は以下のように述べている。 「条約によって、子どもや一次保護者が虐待的な親の居る国に戻ってくる事が喚起され、条約自体が本来抑止しようとしていた目的から遠ざかっていることが懸念されている。最近の統計では、連れ去りの被害にあった親にも女性が多く、虐待や家庭内暴力の状況を逃れている女性も少なくない。また、子どもの拉致事件とDVの存在との相関に関する懸念が高まっており、条約には重大なリスクへの議論と十分な配慮を必要としている。」 子どもが返された場合、連れ去りを行った者は、安全上の懸念から子どもと一緒に元の家には戻らないか、または戻れない場合がある。重大な問題の1つは、連れ去り以前に居住していた国に帰国した際、拉致行為への弁護やDVへの保護措置を得るために必要となる弁護士を雇う経済力がないことである。条約署名に関するもう一つの懸念は、親による拉致が犯罪とされている国に連れ去りを実行した親と子どもを同時に帰国させれば、その親は逮捕されるため、親子を同行させることができない事である。そのため実際には「両親を引き離す」事になる可能性がある。同志社大学のコリン・ジョーンズ教授は、「法律がどうあれ、日本人である子どもたちと日本人の母親を引き離して泣かせる事が行政の目的に適うとは考え難い」と述べている。
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