生物圏の範囲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/23 10:03 UTC 版)
生物の水平の分布については、極地から赤道地域まで生命の存在が認められている。動植物の分布だけについて考えるならば、地球上には「生息に不適な地域」も存在するが、極限環境微生物の発見により、生物圏は従来から考えられていた領域よりもはるかに大きいものということが理解されるようになってきた。ちなみに、「極限」という言葉は我々がよく知る動植物の側から見た見解であり、極限環境に適応した微生物にとっては極限とは限らず、動植物が生息する環境の方が彼らにとって極限になりうることに注意。 地球上の生物圏の実際の厚さは、計測が困難である。動植物の分布については、マダラハゲワシは高度12,000メートルで飛んでいたものが飛行機のジェットエンジンに吸い込まれたという記録があり、エベレスト(ヒマラヤ山脈)をも越えて移動していくことが知られているインドガンも飛行高度が9,000メートルに達する。深海魚ついては、水深 8,372mのプエルトリコ海溝で発見された例がある。生物圏は数種の生物群系に分けられ、各地に類似した植物相と動物相が分布する。地上では、生物群系は主に緯度によって切り分けられる。北極圏または南極圏の範囲にある陸地の生物群系では動植物があまりおらず、赤道付近には生物数が多い生物群系が存在する。 微生物の分布を考えると、さらに生物圏の範囲が広がる。培養可能な微生物としては、高度41kmでの発見例がある。この高度の紫外線・温度・大気成分を考慮すると、その微生物がその高度で繁殖する可能性は低いが、生きた状態で運ばれてきたことは否定できない。また、深海でも極限環境微生物が発見されており、高温・高圧の条件に適応している。また、地中においては、スウェーデンの深度 5km以下の地殻にある 65-75°Cの岩の間から、培養可能な好熱性微生物が発見されている。地殻においては、深度が深くなるに連れて、温度の上昇が急になることが知られている。その増加の割合は、岩のタイプほか様々な要因に左右される。2008年時点で知られているもっとも高温に耐える古細菌 Methanopyrus kandleri strain 116は 122°Cで生育が可能なため、地下の微生物の分布は深さより温度に左右される可能性もある。地下に存在する生物圏は深部地下生物圏(deep biosphere)と呼ばれ、生命の限界を探るための重要な研究対象となっている。
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