地下生物圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:33 UTC 版)
陸上で地下8m以深、海底で海底下10cm以深などの地下に存在する生物圏を地下生物圏という。地下深部には海底下約800 mまでは1 cm3あたり100万細胞以上の微生物が存在するが、地下で微生物が持続的に生存するためには水やエネルギー基質の供給が重要と考えられている。八戸沖の掘削では海底下約1.2 km以深で1cm3あたり100細胞以下に減少し、海底下2.5 km近辺では生命は存在しないと考えられた。深くなるにつれて微生物が減少するのは、圧密によって間隙が減少し、水や栄養源の供給が失われるためとされる。このような地下生物圏には、堆積した有機物を栄養源とする従属栄養の原核生物や、還元型無機物である硫化水素、水素、アンモニア、二価鉄を酸化することで有機物を同化するための化学エネルギーを獲得する化学合成無機独立栄養の原核生物が生息している。 海底では、1970年代から1980年代にかけて深海底の熱水噴出孔や冷水湧出帯について研究が進められ、多くの微生物叢が発見された。海底から噴出する水には、摂氏4度から20度の温水(湧水)と、摂氏300度を超える熱水に大きく分かれており、いずれの水中にも微生物叢が存在し、熱水には好気性と嫌気性の微生物がともに生息していた。1990年代には、北海の海底やアラスカの永久凍土の地下3キロメートルなどの石油採掘孔で微生物叢が発見され、地球内部に一般的に生息していることが確認された。コロンビア川の玄武岩台地の地下900メートルにいた微生物叢は、玄武岩と地下水が反応した水素からエネルギーを得ており、発見者たちはこうした深地下の微生物をSLiME(subsurface lithoautotrophic miceobial ecosystem: 表層岩石従属栄養微生物生態系)と名付けた。深地下の微生物は多くが嫌気性で好熱性であり、酸素が多く気圧の低い地上では生存できない。 SLiMEをはじめとする地下の無機栄養生物の発見は、宇宙探査計画に影響を与えた。火星の地下には玄武岩、水、二酸化炭素ガスがあると推測されているため、アメリカ航空宇宙局(NASA)は火星に生命が存在する可能性のモデルとして無機栄養生物を参考にしている。
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