環境と微生物叢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:33 UTC 版)
2018年に発表された研究によると、地球上にはおよそ550ギガトン (Gt) の炭素が生体物質(バイオマス)として存在し、70Gtのバイオマスを占める細菌は450 Gtを占める植物に次いでいる。真菌、古細菌、原生生物もそれぞれ12 Gt、7 Gt、4 Gtのバイオマスを占めるが、ヒトを含めた動物のそれは2 Gtに過ぎない。細菌や古細菌のバイオマスはおよそ9割が海底や陸上の地下8 m以深に定義される地下生物圏に存在する 。また、海洋のバイオマスは約70%が微生物によって占められる。その多くが細菌と原生生物で、細菌の細胞数は海洋全体で1029を超えるとされる。また、数で言えばウイルスはさらに多く、その粒子数は海洋全体で1030を超える。 環境の微生物叢を地球規模で調査することを目的として設立されたプロジェクトとしてEarth Microbiome Project (EMP) が知られる。このプロジェクトは「地球の微生物叢を丸ごと調査する」ことを目的にしており、ヒトの体、土壌、海水、空気などありとあらゆる試料を含む200,000個の試料を調査することで、地球全体の微生物叢を網羅的に明らかにすることを試みている。実際に、2010年8月に始まったこのプロジェクトは、2014年までに30,000の試料を解析してきた。同プロジェクトは世界各国の様々なグループが行った微生物叢解析の研究結果を統合することで実施される。しかし、以前の微生物叢研究は実験手技からデータ解析の手法に至るまで、各々の研究グループが独自の方法を開発していたため、比較することが困難であった。そのため、同プロジェクトは微生物叢解析実験の標準化を進めており、DNA抽出などの実験室で用いられる手技から、得られた塩基配列データのデータ解析に用いるソフトウェアまで、様々な段階における標準化を試みている。QIIME(チャイムと発音する)と呼ばれるデータ解析環境はその代表例である。
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