環境素材

生分解性プラスチックも注目されています。植物を原料に作られ、バイオマスプラスチックとも呼ばれます。もし地中に放置したとしても、自然界で水と二酸化炭素に分解されます。通常のプラスチックは石油が原料で、自然界では分解されません。生分解性プラスチックなら石油の使用量を減らせ、放置された時の環境負荷も少ないです。
炭素繊維、生分解性プラスチックとも化学繊維メーカーが開発、生産に取り組んでいます。炭素繊維は東レ、帝人グループの東邦テナックス、三菱レイヨン、生分解性プラスチックは東レ、帝人、ユニチカが生産しています。
炭素繊維は鉄よりも10倍強く(同じ重量での強度)、重さは鉄の4分の1です。しかも、さびません。炭素繊維というだけあって、材料のほとんどは炭素(カーボン)です。炭素でできた硬い物質ではダイヤモンドも有名です。炭素繊維をさわってみると「ツルツルした糸」で、硬い鉄の代わりに使われるとは思えません。実際には、プラスチックやセラミックスなどほかの素材に混ぜて使われています。炭素繊維を混ぜることで素材は硬く、強くなります。繊維を混ぜて素材の強度を高める方法は「繊維強化プラスチック」と呼ばれ、船や浴槽、電車などいろいろな場面で採用されています。炭素繊維もこの方法を応用します。
いまのところ炭素繊維は釣りざおやテニスラケットに多く使われています。航空機や自動車向けにはこれから増えていきます。航空機では米ボーイングの最精鋭機「787」の機体の半分に炭素繊維が使われる予定です。従来の機体に比べ20%も軽くなるそうです。欧州エアバスの大型旅客機「A380」も20%は炭素繊維です。787の本格量産が始まる2013年には、炭素繊維の生産量もグンと増えると言われています。自動車ではトヨタ自動車や富士重工業、ドイツのダイムラー・クライスラー、BMWが炭素繊維の採用を決めています。炭素繊維協会によると車体の17%に炭素繊維を使うと、30%軽くなるそうです。
エコカーでも炭素繊維は威力を発揮します。車体が軽くなれば電気自動車の電池の使用量も抑えられ、一回の充電でより長く走行できるからです。帝人は炭素繊維で作った電気自動車を試作しました。車体は普通の電気自動車の半分になったそうです。
生分解性プラスチックもさまざまな分野で使われています。ユニチカによると、同社の生分解性プラスチックはコピー機、ベルトコンベアー、ペットボトル、化粧品容器、食品包装材、買い物バッグ、マグカップなどで使われています。
また、生分解性プラスチックも他の素材と混ぜて使う方法が主流です。生分解性プラスチックは熱に弱い欠点があるからです。そこで帝人は熱に強いポリ乳酸を開発しました。通常のポリ乳酸は170度Cの熱で溶けていましたが、帝人のポリ乳酸は210度C以上でも溶けません。
炭素繊維、生分解性プラスチックとも課題は価格です。まだまだ高価です。炭素繊維は混ぜて作った材料を切断したり、穴をあけたりする加工方法も改良する必要があります。いずれにしろ、まだ新しい素材です。これから欠点も改善され、もっと採用される分野が増えるはずです。
(掲載日:2010/12/26)
- 環境素材のページへのリンク