熊本空港アクセス鉄道構想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 07:48 UTC 版)
「豊肥本線」の記事における「熊本空港アクセス鉄道構想」の解説
肥後大津駅にほど近い位置に立地する熊本空港(阿蘇くまもと空港)について、豊肥本線から分岐して空港までの路線(空港連絡鉄道)を敷設する構想がある。 元々は2004年に検討が始まったが、総事業費が286億円と試算され、採算が見込めないとの予測がなされたこともあり、一旦は構想を凍結した上で、熊本県と空港振興・環境整備支援機構が運行費を拠出する無料シャトルタクシー(空港ライナー)を肥後大津駅との間で運行することとなった。その後、熊本空港の利用者増やリムジンバスの定時性の問題からアクセス鉄道構想を再検討、「豊肥本線からの分岐」「モノレールの新設」「熊本市電の延伸」の3案が比較検討され、2018年12月5日に行われた熊本県議会一般質問において、熊本県知事の蒲島郁夫が「豊肥本線三里木駅から熊本空港に至る路線の新設」を検討することを明らかにした。具体的には、三里木駅から熊本県民総合運動公園付近を経由して熊本空港に至る約10kmのルートが想定されており、県が中心となって設ける第三セクターが鉄道施設を整備する。JR九州社長の青柳俊彦も、2019年1月25日の定例記者会見で、熊本県と協議を進めていることを認めており、その場合は豊肥本線の複線化も検討する必要があるとの認識を示している。 2019年度に鉄道・運輸機構に委託した詳細調査では、「三里木から緩やかにカーブし国道57号線沿いの市街地を高架で超える約9.3㎞のA1ルート」「A1と同ルートで市街地を地下線で越えるA2ルート」「三里木から急カーブし市街地を地下線で越える約9.0kmのBルート」「空港周辺施設を迂回し地下線を用いる約10.7kmのCルート」が提示され、概算事業費は最低のA1ルートで437億円、最高のCルートで561億円とされた。需要予測は、熊本国際空港株式会社の2051年度空港利用者622万人の想定目標値を前提に、2029年の開業時に空港利用者3500人・一般利用者4000人の計7500人とされた。事業採算性は、現行の国の補助制度(補助率18%)を前提とした場合、単年度黒字化までに32年、累積黒字は40年以内の黒字化困難とされた。一方、国と県それぞれ3分の1を補助する独自スキームを前提とした場合、単年・累積とも黒字化に2年と算出された。なお、2018年調査で1.5と算出されていた費用便益比は算出に至らず、新型コロナウイルスによる航空需要の激減もあり2020年6月12日には蒲島郁夫県知事が事業再検討を表明。継続調査を実施することとし、事業費縮減を目的とした構造工法見直しや費用便益分析の調査、交通システム比較の再調査を実施した。併せて、有識者、交通事業者、経済界などの代表で構成する空港アクセス検討委員会が設置された。 2021年6月に公表された継続調査結果では、最短ルート(2019年度調査のBルート)を基本にトンネル等の構造工法を見直すなどし、概算事業費は税抜きで435〜450億円とされた。需要予測は5000人とされた。国と県それぞれ3分の1を補助する独自スキームを前提とした場合、開業33年目で累積黒字転換可能と算出された。2019年度調査で算出に至らなかった費用便益分析については、30年で1.04と算出され、国の予算化の目安である「1」を上回った。 2021年11月、半導体受託製造(ファウンドリ)の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県内への進出決定を受け、空港アクセス鉄道についても、三里木ルート案に加え、より効率的・効果的なルートについて検討することを知事が表明。続く12月、空港周辺地域の人や物の流れの変化を踏まえ、同地域の可能性を最大化するため、TSMC進出予定地に最も近い原水駅で分岐する「原水ルート」や豊肥本線の電化区間の終点である肥後大津駅から分岐する「肥後大津ルート」についても調査を実施することを表明した。
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