無鉛化の進展が少ない分野
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 02:55 UTC 版)
釣りのオモリは、一部のメーカーにて鉛の代わりに鉄やタングステンを使用した製品が発売され始めた。ただし、鉄やタングステンは鉛に比べ融点が高く、なおかつ硬質であるため加工が難しく結果的に高価になりやすく(特にタングステンは素材自体が高価)、また板オモリ、カミツブシオモリなど鉛の柔らかい特性を活かしたタイプのものが様々な釣りで活用されているため、現状では完全な無鉛化が出来ていない。 散弾銃の銃弾は環境保護団体からの指摘があり、水鳥用には使用しない(アメリカ)、鉛装弾の使用を禁止した猟区を設ける(日本)、クレー射撃は全面的に軟鉄装弾に切り換える(北欧諸国)など、鉛弾を規制する国も出てきたが、全面的な切り替えの動きは無い。現在非鉛装弾として銅、軟鉄(ソフトスチール)、タングステンなどが登場しているが、銃弾の場合には弾そのものの材質の比重で飛距離や威力が変化してしまう事や、材質の硬度によって銃身命数や跳弾の危険度の高さも左右される事から、比重が非常に重い為に飛距離・威力ともに優れ、なおかつ特有の軟らかさゆえに銃身への攻撃性や跳弾の危険度も低い利点のある鉛の完全な切り替えは容易な事ではない。特に比較的柔らかい銅製被覆で弾体を覆うことが物理的に難しく、弾一つ一つの粒も小さい狩猟用散弾の場合には、全ての必要要件を満たす非鉛弾を作り出すことは極めて困難な課題でもある。近年では従来の非鉛装弾の欠点を抜本的に解決するため、鉛に比重・硬度が近似しているビスマス散弾が登場しているが、価格面でまだ鉛を置き換えるような存在にはなっていない。 登山用品のランタンやポータブルストーブの中には、灯油などの液体燃料を用いるものがあり、こうした機器の継ぎ手には現在でも鉛製Oリングが用いられている。鉛は容易に変形して強い気密性を発揮し、継ぎ手の部材を傷めにくいこと、こうした機器は液体燃料を自己の炎の熱で連続的に気化させる構造を採る関係上、継ぎ手には高い圧力と同時に非常な高熱が掛かる前提となる為、水道管や液化ガスを用いる機器などのような材質の置き換えはあまり進んでいない。 専門家用(プロ用)の絵具は発色や不透明性、耐光性、堅牢性、物体性、物質感、乾燥の特性、着色力、描画感といった、数多くの極めて重要な性能を優先して鉛やカドミウムの化合物の顔料を使っている。中国には環境問題への意識の低い企業もあり、欧米や日本では既に無鉛化している分野でも鉛化合物が使われることがある。例として幼児用の玩具の塗料から有鉛顔料が検出されたことが報道されている(中国製品の安全性問題を参照)。同様に、絵具業界は、塗料業界全般としては既に無鉛化が進んでいるにもかかわらず、クロムイエローのみならず、鉛白も残っている。鉛以外に、水銀、カドミウム、コバルト、六価クロムを含む顔料もかなり残っていて、環境問題に対する意識が高いと言える状況には無い。
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