漁業と河川環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/10 08:50 UTC 版)
「只見特定地域総合開発計画」の記事における「漁業と河川環境」の解説
漁業資源については、階段式にダムが建設されたことにより、アユやサケなどの回遊魚が、日本海から只見川上流まで遡上することが出来なくなった。 特に只見川には、奥只見・大鳥・田子倉・本名・宮下といった高さ50メートルを超えるダムもあり、魚道の設置にも限界がある。その反面で陸封魚となったイワナなどが巨大に成長し、それが新たな漁業資源を生み出している。特に奥只見湖と大鳥貯水池、田子倉湖では60センチメートルを超えるイワナが多数棲息しており、独自の河川生態系を生み出した。 この奥只見湖に惚れ込んだのが、小説家で釣り好きとしても知られた開高健であり、当時密漁が問題となっていたイワナの保護に乗り出そうと、1975年(昭和50年)に「奥只見の魚を育てる会」を結成させた。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}この会を通じて、奥只見湖の一部が永年禁漁区に指定されたほか、現在ではブラックバスの密放流に対抗するため、漁業権を管理する魚沼漁業協同組合と共に新潟県に働きかけ、「外来魚リリース禁止」条例を制定させるまでに至った。その後も、バス推進派である日本釣具振興会企画のバス釣り大会を拒否するなど、生態系保護のために活動を続けている。[要出典] また只見川・阿賀野川については大井川や信濃川などのように水力発電による河川流水の途絶、すなわち「川枯れ」問題は起こっていない。河川本来の水量が豊富なこと、只見川・阿賀野川の発電方式が「川枯れ」を起こした河川における方式と異なることが理由として考えられる。 「川枯れ」を起こした河川の場合、その河川に建設されている水力発電所の発電方法はダム水路式発電所と呼ばれるものである。この場合、ダムから取水された水は直ちに河川には放流されず、山中を通るトンネルなどで別な地点に建設された発電所に送られ、放流される。このため、ダムと発電所の間はほとんど流水のない状態になる。こうなると漁業をはじめ河川生態系全般に深刻な影響を与えるばかりか、流砂サイクルの途絶により海岸侵食にも影響し、大井川では地元と電力会社の摩擦にまで発展した。 しかし、只見特定地域総合開発計画で建設された発電所のうち、奥只見・沼沢沼・宮下・揚川以外は、ダムから取水された水がダム本体に付設される発電所で発電されて、直接河川に放流されるダム式発電所の方式を採っているため、水量は少なくなっても「川枯れ」にはならない。ダム水路式を採用した奥只見ダムは以前はダム直下が「川枯れ」となっていたが、1997年(平成9年)の河川法改正によって河川環境の維持が治水・利水に並ぶ法の目的に挙げられたことで、奥只見ダムより大鳥ダムまでの河川流量を一定に維持するための放流設備を増設し、この区間の流水が復活した。なお、こうした放流を専門的には河川維持放流と呼ぶが、これを利用した小水力発電も日本各地で行われており、奥只見ダムでもこの放流を利用して、奥只見発電所とは別に2,700キロワットの発電を行っている。
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