たきぐち‐にゅうどう〔‐ニフダウ〕【滝口入道】
たきぐちにゅうどう 【滝口入道】
滝口入道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/05 10:00 UTC 版)
『滝口入道』(たきぐちにゅうどう)は、高山樗牛の、『読売新聞』1894年4月16日-5月30日に連載された小説。樗牛にとって処女作であり代表作であり、また唯一の小説である。
発表までの経緯
- 1893年、樗牛23歳のときに東京帝国大学文科大学哲学科に入学。その年の11月、「読売新聞」が1等賞100円、2等賞に金時計1個を賞品とした歴史小説を募集した。このときの審査員は尾崎紅葉、依田学海、高田半峯、坪内逍遥らだった。また、入選作品は読売新聞本誌で連載することが決められていた。
- 応募規則では、応募者は匿名で、入選した際に氏名と住所を通知することになっていた。また掲載時も本人の希望があれば名をふせることができた。
- 樗牛は、『平家物語』にある斎藤時頼(滝口入道)と横笛の悲恋を題材に小説を書き、応募規則にならい匿名で応募した。
- 1894年4月に結果発表された。応募作品は小説16編、脚本6編だったが、1等賞に該当する作品がなく、樗牛が匿名で応募した『滝口入道』が2等賞に当選し、33回にわたって連載されることになった。
あらすじ
時は平家全盛の時代。時の権力者平清盛は、わが世の春を謳歌していた。ある日清盛は、西八条殿で花見の宴を催した。ここに平重盛(清盛の息子)の部下で滝口武者の斎藤時頼もこれに参加していた。このとき宴の余興として、建礼門院(重盛の妹)に仕えていた横笛が舞を披露した。それを見た時頼は横笛の美しさ、舞の見事さに一目惚れしてしまった。
その夜から横笛のことが忘れられない時頼は、恋しい自分の気持ちを横笛に伝えるべく、文を送ることにした。数多の男たちから求愛される横笛であったが、無骨ながら愛情溢れる時頼の文に心奪われ、愛を受け入れることに。しかし、時頼の父はこの身分違いの恋愛を許さなかった。傷ついた時頼は、横笛には伝えずに出家することを決意した。嵯峨の往生院に入り滝口入道と名乗り、横笛への未練を断ち切るために仏道修行に入った。
これを知った横笛は、時頼を探しにあちこちの寺を尋ね歩く。ある日の夕暮れ、嵯峨の地で、時頼の念誦の声を耳にする。時頼に会いたい一心の横笛だが、時頼は「会うは修行の妨げなり」と涙しながら帰した。滝口入道は、横笛にこれからも尋ねてこられては修行の妨げとなると、女人禁制の高野山静浄院へ居を移す。それを知った横笛は、悲しみのあまり病に伏せ亡くなった。横笛の死を聞いた滝口入道は、ますます仏道修行に励み、その後高野聖となった。
作品の舞台
映画
1923年、マキノ映画により映画化された。タイトルは『瀧口入道 夢の恋塚』。監督は後藤秋声。
キャスト
関連項目
外部リンク
滝口入道
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内大臣・平重盛に仕えた滝口武者・斎藤茂頼の子に斎藤時頼という武士がいた。身の丈は6尺(180cm)近くあり、母を早くに亡くし、成人した後に父と同じく重盛に仕えた。 時は平家全盛の時代。時の権力者平清盛(重盛の父)は、わが世の春を謳歌していた。ある日清盛は、西八条殿で花見の宴を催し、斎藤時頼もこれに参加していた。このとき宴の余興として、建礼門院(重盛の妹)に仕えていた横笛が舞を披露した。それを見た時頼は横笛の美しさ、舞の見事さに一目惚れしてしまった。 その夜から横笛を忘れられない時頼は、恋しい自分の気持ちを横笛に伝えるべく、文を送ることにした。数多の男らから求愛される横笛であったが、無骨ながら愛情溢れる時頼の文に心奪われ、愛を受け入れることに。しかし、時頼の父はこの身分違いの恋愛を許さなかった。傷ついた時頼は、横笛には伝えずに出家することを決意した。嵯峨の往生院(現在の滝口寺)に入り滝口入道と名乗り、横笛への未練を断ち切るために仏道修行に入った。 これを知った横笛は、時頼を探しにあちこちの寺を尋ね歩く。ある日の夕暮れ、嵯峨の地で、時頼の念誦の声を耳にする。時頼に会いたい一心の横笛だが、時頼は「会うは修行の妨げなり」と涙しながら帰したといわれる。横笛は都へ帰る途中、自分の気持ちを伝えたく、近くの石に「山深み 思い入りぬる柴の戸の まことの道に我を導け」と指を斬り、その血で書き記したという。 滝口入道は、横笛にこれからも尋ねてこられては修行の妨げとなると、女人禁制の高野山静浄院へ居を移す。それを知った横笛は、悲しみのあまり大堰川に身を沈めたとも、奈良・法華寺へ出家したとも伝えられる。横笛の死を聞いた滝口入道は、ますます仏道修行に励み、その後高野聖となった。大円院の8代住職を務め、元暦元年(1184年)には、紀州の勝浦で平維盛(重盛の子)の入水に立ち会っている。
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