温泉と医療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 04:55 UTC 版)
湯を使う風呂が一般的でなく、衛生に関する知識や医療が不十分であった時代には、温泉は怪我や病気に驚くべき効能がある、ありがたい聖地であった。各温泉の起源伝説には、鹿や鶴や鷺(サギ)などの動物が傷を癒した伝説や、施浴などを通して入浴を奨励する仏教の影響で弘法大師等高名な僧侶が発見した伝説が多い。このような場所は寺や神社が所有していたり、近隣共同体の共有財産であったりした。 明治時代になると温泉の科学的研究も次第に盛んになった。昭和以降は温泉医学及び分析化学の進歩によって温泉の持つ医療効果が実証され、温泉の利用者も広範囲に渡った。 1931年(昭和6年)、九州大学が豊富な温泉資源に恵まれた別府温泉に温泉治療学研究所を設置したのをはじめ、温泉療法の研究が国立6大学に広がり盛んになった。1935年(昭和10年)には日本温泉気候学会が設立され、温泉気候およびその医学的応用に関する学術的研究が進む。日本温泉気候学会から改称された日本温泉気候物理医学会は、温泉療法医・温泉療法専門医の認定を行っている。三朝温泉ではラジウムの効能に目を付けて1939年(昭和14年)に温泉療養所が設けられるなど、温泉と近代医学を結びつける温泉療法の研究が行われてきた。また太平洋戦争後は原子爆弾被爆者別府温泉療養研究所が開設され、被爆者援護においても温泉療法の研究が行われた。 いわき湯本温泉近くにある競走馬リハビリテーションセンターの馬の温泉のように、競走馬の湯治として活用されている温泉施設もある。 日本の環境省は、温泉法第18条などで、温泉の効用に当たる「適応症」と、逆に温泉に入ることで病状が悪化する可能性のある「禁忌症」を定めている。かつて妊娠中の女性が温泉に入ると、流産や早産を招くという意見があったが、科学的根拠は無く、妊婦が温泉に入っても健康上の問題はないとされる。
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