温暖化への影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 14:58 UTC 版)
「スベンスマルク効果」の記事における「温暖化への影響」の解説
スベンスマルクらの提唱する機構が、実際に気候に影響しているという確証は見つかっていない。また複数の科学的報告は、宇宙線が実際の雲量や近年の地球温暖化に大きく影響を与えているとの説を否定している。 スベンスマルクらの説は気候変動に関する政府間パネル (IPCC) においても評価対象となったが、2001年の第三次評価報告書(ワーキンググループ1、第6章)および2007年の第4次評価報告書(ワーキンググループ1、第2章)でその影響は不明確であると指摘され、採用されていない。この評価報告書は、世界130か国からの2千人以上の専門家の科学的・技術的・社会経済的な知見を集約し、かつ参加195か国の政府代表から成るパネルによって認められた報告書である。また現在観測されている温暖化は、確率90%以上で人為的な要因が主因であると評価されている。 2008年4月、ヨーン・エギル・クリスチャンセン (Jon Egill Kristjansson) らは雲量の観測結果に宇宙線との関連性が見られないとの調査結果を発表し、「これが重要だという証拠は何もない」と指摘している。2009年、カロゴビッチ (Calogovic) らはフォーブッシュ減少(英語版)と呼ばれる宇宙線の変化現象に対する雲量の応答を調べた結果「どのような緯度・高度においても、対応する雲量の変化は見られない」と報告している。2009年、ピアス (Pierce) らは宇宙線による影響量は観測されている温暖化を引き起こすには2桁足りないと指摘している。 オタワ大学 (カナダ)のヤン・バイツアーが、5億年以上前から生息しているブラキオポッドの化石中の酸素16と酸素18の存在比を分析(海洋酸素同位体ステージ参照)したところ、1億4千万年周期で平均気温が最大3.5℃低下する寒冷化が起きている事が判明した。 2011年、複数の検証結果に基づいたレビューにより、実際の雲量への宇宙線の影響は確認できず、地球規模での気候への影響はあっても無視できる程度であると評価されている。またスローン (Sloan) らは2011年、実際の気候との関係は何も確認できないと指摘した上で、仮に関係があったとしても1900年以降に観測されている気温上昇の8%未満の影響しかないと見積もっている。 2019年、神戸大学内海域環境教育研究センターの兵頭政幸らの研究グループが、銀河宇宙線が増加した78万年前の地磁気逆転の途中に、雲の日傘効果で冬の季節風が強まった証拠を世界で初めて発見した。これは、銀河宇宙線が地球の気候変動に影響する証明するものとだとしている。証拠を探すため中国黄土高原の中央部の2ヶ所のレス層の砂塵の粒度と堆積速度の変化を調べた結果、2ヶ所両方から地磁気逆転途中に“冬の季節風の強化”が起きた痕跡を発見した。この風の強化期間は、地磁気逆転に伴い地磁気強度が1/4以下に減少し、銀河宇宙線が50%以上増加した期間と一致する。また、大阪湾1700mから採取した堆積物コアに含まれる花粉の化石から当時の気温と夏の雨量を再現、その結果、78 万年前に地球磁場が逆転した時期に、約5000年間にわたって、約2~3℃気温が低下し寒冷化していたことが分かった。地球磁場が逆転した同時期に、寒冷化の痕跡と冬の季節風の強化の痕跡が見つかったことで、これら気候変化の原因がスベンスマルク効果により増加した下層雲による雲の日傘効果であることがほぼ確実となった。銀河宇宙線が増えれば下層雲が増える、逆に銀河宇宙線が減れば下層雲も減るので逆日傘効果で温暖化が起こる可能性がある。したがって、現在の地球温暖化や中世の温暖期などを理解する上でも銀河宇宙線がもたらす雲の日傘効果は重要であるとした。
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