毒および薬理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 03:54 UTC 版)
毒性はさほど強くない(しかし近縁種には猛毒キノコがある)。ベニテングタケの主な毒成分はイボテン酸、ムッシモール、ムスカリンなど。食べてから20-30分で瞳孔は開いて眩しくなり、弱い酒酔い状態となるが、それ以上の向精神作用、例えば虹を見るような幻覚を起こしたといった例はない。食べすぎると腹痛、嘔吐、下痢を起こす。どちらかというと、うま味成分でもあるイボテン酸の味に魅せられ、他のキノコは要らないといったキノコ採りも増えている。少しかじる程度であれば、のぼせて腹痛がするくらいの症状であるが、焼いただけの400グラム程度であれば、瞳孔が拡大して自転車も運転できないようになり、嘔吐や下痢の症状が発生する。より重い中毒であれば、混乱、幻覚といったせん妄症状や昏睡がおきる。症状は2日以上続く場合もあるが、たいていは12 - 24時間程度でおさまる。 ベニテングタケの中毒症状による死亡例は非常にまれで、北米では2件報告されているのみである。ヨーロッパでのベニテングの致死量は、生の状態で5キログラムと推定されているが、この量は食べられる量ではない。とはいえ、8月に収穫したものは効力が強く、9月に収穫したものは吐き気のような体への影響が強いなどとも記され、環境や個体差の影響も大きい。 本種は、マジックマッシュルームとは異なり、遊びや気晴らしに摂取されることは少ない。成分も国際連合の薬物規制条約の対象ではないが、一部の国では規制がある場合がある。テングタケの属キノコの法的位置づけ(英語版)も参照。 規制されていないことから興味を持つ者も多く、その体験談は様々に寄せられている。30分か1時間すると独特の吐き気やムカつきと眠気を感じ、もう少し経った後に酩酊感がくるとされる。後述するキノコの研究者のワッソンは、1965年と1966年にベニテングタケを日本で試したが、その毒性の効果に失望したと記している。吐き気を感じ、そのうち何人かは吐き、眠くなって眠り、そして一度だけうまくいったときには、今関六也が高揚し、アルコールによる多弁ともまた異なった感じで喋り続けた、とある。テレンス・マッケナによれば、コロラド州で採取した生のベニテングダケでは、よだれが垂れ、腹痛になっただけであり、カルフォルニア州北部で、採取した乾燥ベニテングタケ5グラムを摂取したが、吐き気を感じ、よだれが垂れ、目がかすみ、目を閉じると見えるものがあったが、たいして面白いものでもなかったとある。 殺ハエ作用を持つことから、洋の東西を問わずハエ取りに用いられてきたフランスではハエ殺し (une amanite tue-mouche) と呼ばれ、キノコ片を用いたし、日本でも東北や長野でアカハエトリとも呼ばれ信州では米とこねて板に張り付けてハエを捕獲した。 江戸時代の1830年から1844年にかけて96巻が刊行された『本草図譜』の58巻には、「こうたけ」と記されたベニテングダタケの絵が描かれ、食べると嘔吐すると書かれている。
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