森本薫とは? わかりやすく解説

もりもと‐かおる〔‐かをる〕【森本薫】

読み方:もりもとかおる

[1912〜1946劇作家大阪生まれ豊かな構成力と機知に富んだ対話による新鮮な作風知られた。作「華々しき一族」「女の一生」「富島松五郎伝」。


森本薫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/12 06:54 UTC 版)

森本薫
誕生 (1912-06-04) 1912年6月4日
大阪府西成郡中津町
死没 (1946-10-06) 1946年10月6日(34歳没)
京都府
墓地 京都市上京区 成願寺
職業 劇作家、脚色家
国籍 日本
最終学歴 京都帝国大学
活動期間 1932年-1946年
ジャンル 新劇ラジオドラマ、映画シナリオ
代表作 『華々しき一族』、『女の一生』
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森本 薫(もりもと かおる、1912年明治45年)6月4日[1] - 1946年昭和21年)10月6日)は、日本の劇作家演出家翻訳家。代表作として『女の一生』や『華々しき一族』などがある。

経歴

1912年(明治45年)、大阪府西成郡中津町下三番(現・大阪市北区)に生まれる[2]中津第二尋常小学校旧制北野中学校を経て第三高等学校文科へと進んだ[1][2]。三高在学中は、ノエル・カワードサマセット・モームなどのヨーロッパ近代戯曲を読みふけて過ごし、1932年(昭和7年)には処女作となる一幕ものの戯曲『ダムにて』を発表している[3]。三高卒業後、京都帝国大学文学部英文科に進んだ森本は、入学から時を経ずして胸部疾患のために療養生活を余儀なくされた[1][4]。大学在学中は京都にあった劇団エラン・ヴィタールに参加し、作家や演出家として、当時はまた、俳優としても活動したという[要出典]

森本が田宮虎彦らと創刊した同人誌「部屋」に執筆した『一家風』が、1934年(昭和9年)に小山祐士田中千禾夫の目に入り、雑誌「新思潮」に発表した『わが家』は岩田豊雄の演出により築地座で初演され、森本は劇作家としての地歩を固めた[1][5][6][7]。また、同年執筆の『みごとな女』は岩田の感心を呼びおこし[3]、のちに文学座第1回公演で「試演」と称して上演され、新劇界に新たな鼓動を生んだ[1][2]1935年(昭和10年)には岸田國士の薫陶を受け、『かどで』、『華々しき一族』を また、翌年には『かくて新年は』(雑誌「劇作」掲載)、『衣裳』(雑誌「文藝」掲載)などの機知に富んだ心理描写にすぐれた作品を続けて発表し脚光を浴びた[3][5][8]

1937年(昭和12年)、京都帝大を卒業し、翌1938年(昭和13年)には女優の吉川和歌子と結婚して上京した[3][4][5]。この頃には新劇用の『退屈な時間』のほか、ラジオドラマの台本や映画シナリオなども手がけ、放送劇においても『薔薇』や『生れた土地』などの佳作を生んでいる[6]

1940年(昭和15年)に岩田に推され、文学座に参加する[2]。日本の有事色と言論・表現の統制がますます厳しくなったことや後述の森本自身の健康問題のせいもあり短期間に終わったものの1940年代の文学座の中興に貢献したといえる多くの仕事を残した。文学座ではソーントン・ワイルダー『わが町』の翻訳(1941年初演、長岡輝子演出)、岩下俊作原作『富島松五郎伝』(脚色1942年初演)、『勤皇届出』(脚色1943年初演)、『怒涛』(作、1944年初演)、『女の一生』(作、1945年4月初演)等で新境地を開いた[1][2][6][8]

私生活では妻帯していたが文学座の同僚であった杉村との不倫関係が生じ、森本の逝去まで関係が続いた とされる[要出典]

将来を有望視されたが、戦時中に大学時代より発症していた肺結核が再発・進行し、終戦を挟み闘病も病気に勝てず1946年(昭和21年)10月6日に京都で早世した。享年34であった[5][8]。墓所は京都市上京区の成願寺にある[2]。生誕地に近い大阪市北区中津2丁目の中津公園内には、『女の一生』の一節が刻まれた森本薫文学碑が建立されている[2]2008年(平成20年)に森本の長男から、森本愛用の遺品や自筆原稿、書簡などの資料が大阪大学へ寄贈された[9]

『女の一生』

『女の一生』は森本の絶筆となった作品で、恋人でもあった女優の杉村春子のために書いたものとされる[2][10]。初演(久保田万太郎演出)は空襲の間隙を縫うように渋谷東横映画劇場で上演された[2][3][10]。戦後の1946年(昭和21年)に初演台本のプロローグとエピローグを病床の森本が戦後版へ改訂(文明社版)し、森本が没した翌月に再演された[1][3][11]。初演からその後の台本改訂について井上理恵「森本薫『女の一生』論」(『近代演劇の扉をあける』所収・社会評論社)の詳細な研究がある。主役の布引けい役を演じた杉村は戦後初の日本芸術院賞を受賞した[2]。この作品は、杉村主演で947回の上演回数を誇り[10]、杉村死去後は平淑恵(初演版)、荘田由紀山本郁子らを主演に擁し上演、文学座史上最多公演数を誇る文学座を代表するヒット作品となり[1] 、森本の名を残すものともなった。文学座以外の上演としては戌井市郎の演出や補綴により劇団新派波乃久里子主演で2009年と2011年に[10][12]、ドナルカ・パッカーンが内田里美主演で2019年に(初演版)[13]松竹大竹しのぶ主演で2020年、2022年に上演している[14]。また、旧ソ連、中国でも翻訳上演されている[10]。 1962年には大映で映画化されている(増村保造監督、京マチ子主演)。

主な作品

  • 『一家風』一幕(1934年)
  • 『わが家』一幕(1934年)
  • 『みごとな女』一幕(1934年)
  • 『かどで』一幕(1935年)
  • 『華々しき一族』三幕(1935年)
  • 『かくて新年は』三幕(1936年)
  • 『衣装』一幕(1936年)
  • 『退屈な時間』三幕(1937年)
  • 『陳夫人』(1941年)田中澄江との共同脚色、原作・庄司総一。文学座公演。
  • 『富島松五郎伝』五幕(1942年)脚色。原作・岩下俊作。文学座公演。
  • 『勤皇届出』五幕(1943年)脚色。原作・丹羽文雄。文学座公演。
  • 『怒濤』五幕(1944年)文学座公演。(北里柴三郎を描く)
  • 『扇』一幕(1944年)新生新派公演。
  • 『女の一生』五幕(1945年)文学座公演。

著作

  • 『わが家 森本薫戯曲集』墨水社 1941
  • 『生れた土地』書物展望社 1942
  • 『怒濤』小山書店 1944
  • 『女の一生』文明社 1946
  • 『森本薫戯曲集』全3巻 世界文学社、
第1 華々しき一族 1947
第2 女の一生 1948
第3 薔薇 1948
  • 『森本薫ラジオ・ドラマ選集』宝文館 1951
  • 『森本薫全集』第1巻 世界文学社 1952
華々しき一族,かくて新年は,わが家,みごとな女,かどで,一家風,赦せない行為.
  • 『森本薫全集』第2巻 世界文学社 1952
退屈な時間,衣裳,怒濤,女の一生,新稿女の一生-文学座上演脚本.
  • 『森本薫全集』第3巻 世界文學社 1953
脚色 富島松五郎傳,ラジオ・ドラマ 薔薇,記念,生れた土地, シナリオ 花ちりぬ,むかしの歌,無題(未發表).
  • 『女の一生』角川文庫 1954
  • 『森本薫戯曲全集』飯沢匡等編 牧羊社 1968
  • 『現代日本文学大系 83 (森本薫,木下順二,田中千禾夫,飯沢匡集)』筑摩書房 1970
  • 『女の一生』戌井市郎補訂・演出 ぬ利彦出版 名作舞台シリーズ 1989

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h 【道】森本 薫”. 文学座. 2016年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月28日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j 1 森本 薫文学碑”. 大阪市 (2013年4月1日). 2016年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月27日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 作家/森本 薫”. 華々しき一族/かどで. 文学座. 2016年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月28日閲覧。
  4. ^ a b 第505回関西文学散歩”. 関西文学散歩 カルチャーウォーキング. 大阪文学振興会 (2015年12月7日). 2016年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月28日閲覧。
  5. ^ a b c d “森本 薫 モリモト カオル”, 20世紀日本人名事典, 日外アソシエーツ, (2004), https://archive.is/xU6xF 
  6. ^ a b c 大島勉 (1995), “森本薫 もりもとかおる”, 日本大百科全書, 小学館, https://archive.is/LoKPf#selection-1349.0-1351.3 
  7. ^ “もりもとかおる【森本薫】”, 世界大百科事典 (2 ed.), 日立ソリューションズ・クリエイト, https://archive.is/LoKPf#50% 
  8. ^ a b c “森本薫 もりもとかおる”, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典, Britannica Japan, (2014), https://archive.is/LoKPf 
  9. ^ “「女の一生」劇作家・森本薫の遺品・資料、阪大に寄贈”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞). (2008年12月28日). オリジナルの2016年2月27日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/mPQTG 2016年2月28日閲覧。 
  10. ^ a b c d e “誰が選んでくれたのでもない…戯曲「女の一生」”. YOMIURI ONLINE (読売新聞). (2014年9月29日). オリジナルの2016年2月27日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/LWpHn#50% 2016年2月28日閲覧。 
  11. ^ 森本薫 (PDF)”. 新国立劇場. 2015年9月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月28日閲覧。
  12. ^ 内田洋一 (2011年10月14日). “新派「女の一生」受けついだ和事の伝統、財産となった名作”. NIKKEI STYLE. 2020年11月9日閲覧。
  13. ^ 第5回公演「女の一生」 森本薫の初稿版完全上演
  14. ^ 女の一生”. 松竹 (2020年10月31日). 2020年11月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月9日閲覧。

参考文献

  • 『森本薫戯曲全集』牧羊社、1968年。
  • 井上理恵著『近代演劇の扉をあける』社会評論社、1999年。
  • 日本近代演劇史研究会編『20世紀の戯曲』全3巻 社会評論社、1995~2005年。
  • 演劇雑誌『シアターアーツ』(国際演劇評論家協会日本センター編集「女の一生」特集)1996年6月号。(初演台本収録)
  • 『文学座五十年史』文学座編1987年。

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