果実と野菜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 15:33 UTC 版)
主食になることが多い穀物のほかに、キャベツ・テーブルビート・タマネギ・ニンニク・ニンジンなど野菜は素材としてよく使われた。農民や労働者は毎日のように野菜を食べたが、野菜は食肉ほど高級品ではなかった。中世後期になると贅沢品を購入する資力があるものを対象にした料理本が現れたが、野菜を主材料とするレシピは少なかった。ポタージュのような日常の野菜料理が料理本に欠けているのは、それらが王侯貴族の食卓に登らなかったのではなく、記録に値しない取るに足らない料理と考えられたためだと解釈されている。中世にはいろいろな品種のニンジンが入手でき、なかには風味のよい赤紫色のものや、より低級とされた黄緑色のものもあった。ヒヨコマメ・ソラマメ・エンドウマメなど各種マメ類も普及しており、下層階級のタンパク質の供給源として貴重だった。上流階級に仕える医師たちがエンドウマメ以外の豆の摂取を勧めなかったのは、マメ類には鼓腸を起こしやすい傾向があるのに加え農民の祖末な食物と考えられたことがその理由であろう。農民の多くがザワークラウトを一日に三度も四度も食べていたという16世紀ドイツの記録から、一般大衆にとって野菜がいかに重要であったのかをみてとることができる。 果実は人気があり、新鮮なものやドライフルーツ、砂糖漬け・ジャムに加工して食用に供されたほか、いろいろな肉料理の材料としてもよく使われた。砂糖・蜂蜜が高価だったことから、袖の下や甘い汁を要求する際の料理には各種の果実を入れるのが普通だった。ヨーロッパ南部の代表的な果実にはレモン・シトロン・ダイダイ(甘味の強いオレンジが持ち込まれるのは数百年後である)・ザクロ・カリン・ブドウがあった。北部ではリンゴ・セイヨウナシ・プラム・イチゴがよく出回っていた。イチジクとナツメヤシはヨーロッパ全土で食べられていたが、北部では高価な輸入品という位置づけだった。 近代以後のヨーロッパ料理でよく使われているジャガイモ・インゲンマメ・カカオ・バニラ・トマト・トウガラシ・トウモロコシなどはヨーロッパ人がアメリカ大陸からこれらを持ち帰った(コロンブス交換)15世紀後半までは手に入らず、しかもその後新しい食材として社会の多数者に受け入れられるまでにはさらに長い時間がかかった。
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